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プレビュー:濱田芳通&アントネッロ歌劇『オルフェオ』2月22日(土)、23日(日・祝) 神奈川県立音楽堂

神奈川県立音楽堂開館70周年記念

演出:中村敬一 ©Keiichi Kimura          指揮:濱田芳通

モンテヴェルディの代表的オペラ
オペラ史上重要な作品

オルフェオ:坂下忠弘          エウリディーチェ:岡﨑陽香 ©Ayane Shindo

神奈川県立音楽堂は「音楽堂室内オペラ・プロジェクト」を展開しており、特にバロック・オペラの上演では毎回高い評価を得ています。今回は第7弾で、濱田芳通&アントネッロの演奏によりモンテヴェルディ作曲の『オルフェオ』を上演します。

モンテヴェルディ(1567〜1643)はルネサンス末期からバロック初期にかけて活躍したイタリアの作曲家です。彼は音楽史上初の偉大なオペラ作曲家として有名ですが、彼の現存するオペラ作品は『オルフェオ』『ウリッセの帰還』『ポッペアの戴冠』の3作品しかありません。最初期に作曲された『オルフェオ』は宮廷楽長になったマントヴァの宮廷にて1607年に上演されました。彼にとって初めての自作のオペラ作品の上演でした。

『オルフェオ』は、それまで演劇の感情表現に付随する音楽を伴った音楽劇といった形態から、現在のオペラにつながる要素を備えており、現代に上演しても耐えうる音楽性を有しているということでオペラ史上、非常に重要な作品とされています。

作曲当時、まだ「オペラ」という言葉はなく、モンテヴェルディは音楽による寓話」(favola in musica)と名付けたことからタイトルの『オルフェオ』の前に「オペラ」ではなく「音楽寓話劇」と付けられていることがあります。

バロック・オペラ上演で
定評のある神奈川県立音楽堂

ムジカ/プロゼルピナ:中山美紀 © Martin Chiang     メッサジューラ:彌勒忠史

神奈川県立音楽堂は1954年に開館した音楽専用のホールで収容人数は1000人ほど。音響が抜群にすばらしい木のホールとして親しまれています。このホールとバロック・オペラとの相性が大変良くて、これまでにパイジエッロ『美しい水車小屋の娘 または恋のたけくらべ』(2005年)、ヴィヴァルディ『バヤゼット』(2006年)、モンテヴェルディ『オルフェオ』(2008年)、パーセル『アーサー王』(2010年)、ヴィヴァルディ『メッセニアの神託』(2015年)、ヘンデル『シッラ』(2022年)、ヘンデル『ジュリオ・チェーザレ』(2023年)と非常にクオリティの高い上演を重ねています。特にファビオ・ビオンディとエウローパ・ガランテによる『バヤゼット』、『メッセニアの神託』『シッラ』はバロック・オペラ鑑賞のおもしろさを日本の観客に気づかせてくれたのでした。

今回演奏する濱田芳通とアントネッロは日本における古楽演奏の第一人者。神奈川県立音楽堂でも2008年『オルフェオ』を上演しています。今回と同じ作品ですが、今回は新制作で、演出は中村敬一が手がけています。

あらすじは有名なギリシャ神話
「オルフェオとエウリディーチェ」

スペランツァ:中嶋俊晴 ©Martin Chiang             プルトーネ:松井永太郎

プロローグ付きの全5幕構成です。

オルフェオは竪琴の名手。彼が竪琴を奏でると争いは止み、鳥や獣たちが彼の周りに集まってきたほどでした。オルフェオはニンフ(妖精)のエウリディーチェと結婚しますが、エウリディーチェは結婚式の直後に毒蛇に噛まれて命を落とします。彼女の命を返してもらうためにオルフェオは黄泉の国へ行きます。エウリディーチェを返してもらえるものの、「オルフェオはエウリディーチェの前を歩き、現世に着くまで決して後ろを振り返って姿を見てはならない」という条件がつけられます。オルフェオは後ろを振り返ってしまい、エウリディーチェは再び黄泉の国へ戻ってしまいます。嘆くオルフェオのところに、彼の父親である太陽神アポロが現れて二人が天に昇っていきます。

このお話はさまざまに音楽のモチーフとなっています。グルックもオペラにしていますし、(『オルフェオとエウリディーチェ』(1762年))オッフェンバックは徹底的にパロディ化したオペレッタを作っています(『天国と地獄』(1858年))。

よく知られたストーリーを生き生きと演じる
魅力的なソリストたち

ニンファ:今野沙知恵 ©FUKAYA Yoshinobu/auraY2            牧人:中嶋克彦

出演するソリストの顔ぶれが素晴らしいです。ビオンディの上演の際には演出で携わっていた彌勒忠史(メッサジェーラ役)をはじめ、オルフェオには坂下忠弘、エウリディーチェには岡﨑陽香、そして12月の県立音楽堂での『メサイア』公演にも出演していたカウンターテナーの中嶋俊晴がスペランツァで出演します。

管弦楽と声楽の絶妙なアンサンブル、バロック・オペラならではの躍動感、スリリングな即興性などなど聞きどころ満載のこのプロダクションによる『オルフェオ』は非常に楽しみです。

なおこのプロダクションは、兵庫県立芸術文化センターとの共同制作で、神奈川県立音楽堂の公演の1週間前、兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールで上演されます。ご注目ください。


濱田芳通&アントネッロ歌劇『オルフェオ』
神奈川公演
開演
2025年2月22日(土) 14:00
     23日(日・祝) 14:00

会場:神奈川県立音楽堂

チケット料金 :10,000円、U24(24歳以下)5,000円、高校生以下 無料、車椅子席10,000円(付添1名無料)

詳しくは:「オルフェオ」特設サイト


兵庫県公演
2025年2月15日(土) 14:00
     16日(日) 14:00

会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール

チケット料金:12,000~5,000円

詳しくは:「オルフェオ」特設サイト

エディター・ライター 出版社勤務を経てフリーランスのエディター、ライターとして活動中。 クラシック音楽、バレエ、ダンスを得意ジャンルとする。

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