小川洋子『ホテル・アイリス』×ショパン『ピアノ協奏曲第1番』~小説を彩るクラシック#24
『ホテル・アイリス』
「静謐」「繊細」「柔らか」
小川洋子が描く小説世界はそんな風に形容されることが多いと思います。
しかし1996年に発表された『ホテル・アイリス』は、そんな小川洋子のイメージとかけ離れた異色な作品で、老人と少女のSM愛が描かれる衝撃作でした。
2022年2月に実写映画も公開されています。
ストーリー
舞台はある海沿いのリゾート地。主人公のマリは母親が経営するホテル・アイリスで働いていました。
ある晩、ホテルの一室でトラブルが起こります。見るからにコールガール風の女性が「この変態野郎」と怒鳴りながら部屋を飛び出したのです。
宿泊客たちも突然起こった騒ぎに「なんだ、なんだ」と部屋から出てきました。
どうやら宿泊した初老の男性が行った行為により、女性は耐えられず飛び出したというのです。経営者の母が諍いをおさめると、好奇の目で眺めていた宿泊客たちもそれぞれの部屋に戻っていきました。
小ぎれいな身なりをした老紳士は、「黙れ、売女」と、コールガール風の女性に言い放つのですが、マリはその言葉の響きに「チェロかホルンが鳴ったよう」な錯覚に陥ります。
この命令の響きにマリは「何か」を感じ、男に引き寄せられていきます。
この記事へのコメントはありません。