ウイーンフィルを爆破!?日本では自衛隊音楽隊専売!?爆発するクラシック~クラシック珍曲・迷曲 意外な楽器編①
唐突ですが、イギリスのロックバンドQueenの「Bicycle Race」を聴いたことはありますか?
Queen『Bicycle Race』(1978年)。ヘンテコな歌詞、セクシーなPVなどが特徴的なQueenの人気曲。
1:45くらいから自転車のベルが楽器として奏でられ、日常の音なのに幻想的な雰囲気を醸し出すパートがあります。そこからギターソロに入っていく移り変わりは見事の一言!
私が子供のころに流行った「ミニモニ。テレフォン!リンリンリン」は、電話の歌であることを強調するように番号のプッシュ音や通話できないときのツーツー音を音楽に使っていました。
ミニモニ。『ミニモニ。テレフォン!リンリンリン 』(2002年)。歌にも電話に関する擬音が多用されている。
楽器以外の音が音楽の中で使われると、印象的である上に、曲の描きたい情景やメッセージがはっきりする面白い効果を持っています。
近年ではコンピューターによるサンプリングでもっと自由に様々な日常の音・自然の音を使えるようになっていますが、その効果はクラシック音楽でも古くからいろいろな形で使われています。一目見ただけでも特徴的で印象的で、面白い曲ばかりです。
そんな少し変わった特徴的な曲を紹介していきます。今回のテーマは「爆発音」。どうぞ、クラシックの面白音楽を体験していってください。
ウィーンフィル・ニューイヤーコンサートを爆破!?
ヨハン・シュトラウス二世の「爆発ポルカ」
『美しく青きドナウ』やオペレッタ『こうもり』で知られるヨハン・シュトラウス二世。彼が活躍した当時、ダイナマイトの前身になる火薬ニトロセルロースが発見されて科学界を騒がせ、「爆発的」が流行語になったことがありました。
その流行に乗って作られたのがこの曲。
バスドラムの音を爆発に見立てた演奏の最後にひと際大きな爆発があるのですが、そこで本当に火薬を使うときがあります。
ウィーンフィルのニューイヤーコンサートでは打楽器パートの演奏者がヘルメットをかぶり、発破のスイッチを用意して締めの大爆発を演出しました。
爆発ポルカ|Explosions-Polka … 作品43/1847年/作曲:ヨハン・シュトラウス二世
轟く銃声!砲撃!ベートーヴェン『戦争交響曲/ウェリントンの勝利』&チャイコフスキー『序曲1812年』
どちらも戦争で祖国がナポレオン率いるフランス軍に勝ったことを記念した曲で、ライフルや大砲の音が音楽に使われています。
一般の楽団が演奏するときはバスドラムなどで代用するのですが、日本では自衛隊音楽隊の演奏でのみ、なんと本物の銃や大砲を使った演奏をナマで聴く機会があります!
ただ、『序曲1812年』は当時のロシア帝国が勝利したことを祝う曲なので、今のご時世ではあらぬ意味を感じてしまうかもという状況。演奏が憚られてしまい、ロシアのウクライナ侵攻が発生した直後は、ちょうどこの曲を演奏予定だったいくつかのコンサートが演目を変更するなどしました(※)。
一刻も早く平和が戻るといいですね。
(※)中部フィルハーモニー交響楽団は2022年3月のコンサートで、元々予定していた『序曲1812年』からシベリウス『フィンランディア』に曲目を変更しました。この曲は作曲当時ロシア帝国の支配下にあったフィンランドの民衆の愛国心を高め、ロシアに演奏を禁止をされても掻い潜って演奏され、1918年の独立を勝ち取る機運を高めた曲です。それを踏まえると、楽団からのメッセージ性を感じます。
戦争交響曲(ウェリントンの勝利)|Wellington’s Victory … 作品91/1813年/作曲:ルードヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
序曲『1812年』| 1812 Overture … 作品49/1880年/作曲:ピョートル・チャイコフスキー
銃声や爆発音は現代の音楽でもしばしば使われます。音そのものだけでなく、「バーン」などの擬音を歌うことも含めるとさらに多くあります。
シェール『バン・バン』。Bang Bangには幼馴染との西部劇ごっこの思い出と、恋人が先立った悲しみが込められている。
スティービー・ワンダー、レディ・ガガ、デヴィッド・ゲッタなど有名アーティストのカバーも多い名曲。
ナンシー・シナトラによるカバーは映画『キル・ビル』で使われ、こちらも有名。
相川七瀬『夢見る少女じゃいられない』。フラストレーションの解放を「町中にBang Bang Bang Bang」と歌う。
200年単位で使われてきた音楽中の銃声や爆発音。そこにはどんな意味が込められているでしょうか。
アルフレッド・ノーベルの発明したダイナマイトは、鉱山採掘などの土木作業を簡単にしましたが、一方で兵器転用により戦争の激化を招いてしまいました。
彼自身はこの強力な爆弾をお互いが使えば、共に大被害を被ることになるので、戦争を思いとどまる抑止力になると期待していました。しかしその役割は果たせませんでした。
爆発は勝利の誉れか、科学発展の福音か、あるいは悲劇を呼ぶ暴力か。
爆発や銃声が使われた音楽の意味を、それぞれに考えてみたいですね。
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