ドラマティック・バレエの傑作『マノン』見どころや楽しみ方とは
4 第3章 ドラマティック・バレエの楽しみ
ドラマティック・バレエは、ロマンティック・バレエやクラシック・バレエのような古典作品と違い、感情表現や演技力がとくに重要とされます。
4.1 高難度のテクニックを駆使した感情表現
ドラマティック・バレエの特徴として、古典作品に多く登場するバレエの表現手法「マイム」が少ないことが挙げられます。
たとえば『白鳥の湖』では、オデットの身の上話はマイムで表現されます。王子がオディールに結婚を誓う場面でも同様です。
一方『マノン』を始めとするドラマティック・バレエでは、身体の動きや目線、表情で感情を表現します。
『マノン』第1幕第1場でマノンとデ・グリューが出会うシーンでは、ほかの登場人物が踊る後ろで、見つめ合ったり、互いに相手を視線で追ったりする2人が描かれています。これを見れば観客は「一目見ただけで恋に落ちたのだな」とすぐにわかるでしょう。
また、古典作品では、男性ダンサーは女性ダンサーのサポート役になりがちですが、ドラマティック・バレエでは、しばしば男性ダンサーも女性ダンサーと対等に踊ります。
『マノン』第2幕で、デ・グリューがマノンに再会したあとに踊るソロでは、マノンへの断ち切れない想いと、自分にはどうにもできないもどかしさが表現されています。
4.2 踊ることで演じる
ドラマティック・バレエは、まさに「演劇のバレエ」です。
もちろん、踊りとしての見せ場もありますが、ディベルティスマンがある古典作品に比べると、踊りのみで魅せるという場面は少ないでしょう。
そのため、ダンサーには、バレエの技術や身体能力だけでなく、役者としての表現力も求められます。 また、表現の前段階として、役柄をつかむ力も必要です。
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