プレビュー :映画『ネネ -エトワールに憧れて-』11月8日(金)公開

たくさんの差別に立ち向かう12歳のキュートなバレリーナ
フランスからバレエをテーマにした映画がやってきます。
今年の3月に開催されたフランス映画祭に出品された本作は、フランス映画界の新星、ラムジ・ベン・スリマンが脚本と監督を手掛け、注目されました。

パリ・オペラ座バレエ学校とは
12歳の少女、ネネの挑戦


パリ・オペラ座のエトワールに憧れる12歳の少女ネネの奮闘ぶりが描かれます。

ネネは超難関であるパリ・オペラ座バレエ学校の試験に合格し、入学します。

パリ・オペラ座バレエ学校とは、パリ・オペラ座バレエ団の付属の学校で、世界の四大バレエ・カンパニー(他の3つはボリショイ・バレエ、マリインスキー・バレエ、英ロイヤル・バレエ)の付属の学校のことです。美しいエレガンスでは世界随一のパリ・オペラ座バレエ団の団員は、ほぼ全員が付属のバレエ学校の卒業生です。つまり、パリ・オペラ座バレエ団のメンバーになるためには付属のバレエ学校で学ばなければならないということになります。このバレエ学校の入学はとても大変。入学できたとしても毎年試験があり、合格しないと留年ではなく退学となってしまうのです。

そんな世界のトップクラスのバレエ学校にネネは見事入学します。

ネネが直面する差別による多くの障害


ネネは、パリ郊外の団地に住む労働者階級の娘。そして肌の色は黒いです。髪の毛をシニョンにするために他の子よりもものすごく時間と手間がかかります。

入学試験の段階で、ネネの豊かな才能を認める先生と、入学させるべきではないと考える先生とで対立します。これはずっと続きます。

古典バレエの作品には、白人しか登場しません。今でこそ南米出身、アジア出身のダンサーたちが世界中のバレエ・カンパニーに所属し、さまざまな役を踊っていますが、いまだにバレエは白人のもの、という考えの人がいるようです。

また、ネネは団地住まいです。入学試験の面接で受験生が住所を言っている場面があるのですが、他の子たちは高級住宅地の区をサラッと言っています。

さらに、ネネは才能に溢れているため、そして物おじしない性格ゆえ、同級生から避けられています。

不幸なことにかつてパリ・オペラ座バレエ団のエトワールだったマリアンヌ校長は保守的で伝統を守ることを強調し、ネネに冷たく接します。しかし後半、マリアンヌ校長の秘密が明らかになり物語は急展開していきます。

社会の縮図


ネネが100%悪いわけではないのに、状況はどんどん彼女にとって厳しくなっていきます。両親は至極真っ当、真面目な人たちで懸命に彼女を応援しています。お金のかかる学校に入学させ、週末帰省する際に車で送り迎えするお父さんは、彼女の夢を叶えてやりたいと特別レッスンも受けさせるなどとても献身的で心を打たれます。

イギリスの映画『リトル・ダンサー』(2000年)で主人公のエリオットは、性差別、階級差別、そして父から理解を得られないことに苦しみました。ネネは、人種差別、階級差別、さらに彼女の才能を羨ましがることの裏返しとして同級生からのいじめ、に直面します。

地元の団地の広場で踊っている分には誰からも何もされることはないけれど、彼女は自分がいては場違いな学校をやめようとはしません。

見どころはやはりダンスシーン


12歳の少女たちが白いチュチュを身につけ練習しているシーンがたくさん出てきますが、とても美しく、練習している場所もきれいでいつまでも見ていたくなります。

生徒たちがパリ・オペラ座バレエ団の公演を見学している舞台では、レオノール・ボラックが本人役で『ライモンダ』のソロを踊っています。

ネネのバレエ以外のダンスシーンも自由で解放的で生き生きとしており、目を奪われます。

画像:© 2023 GAUMONT – FRANCE 2 CINÉMA – GAUMONT ANIMATION


公演情報
11月8日(金)TOHOシネマズ シャンテ他 全国公開
詳しくは:ネネ-エトワールに憧れて-

エディター・ライター 出版社勤務を経てフリーランスのエディター、ライターとして活動中。 クラシック音楽、バレエ、ダンスを得意ジャンルとする。

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