プレビュー:新国立劇場オペラ『夢遊病の女』〈新制作〉10月3日(木)~10月14日(月・祝) 新国立劇場オペラパレス
新シーズン開幕は
ベルカント・オペラの傑作で
待望の新制作
歌唱の美しさを楽しむ
テアトロ・レアル公演より© Javier del Real | Teatro Real
新国立劇場オペラ2024/2025シーズンは、『夢遊病の女』でスタートします。スペインのテアトル・レアル(マドリード)とバルセロナ・リセウ大劇場、イタリアのパレルモ・マッシモ劇場との共同制作で新制作です。2022年12月にマドリードで初演され、待望の日本初演を迎えます。
ベルカント・オペラを代表する作曲家、ヴィンチェンツォ・ベッリーニの作品、初演時から好評を博しました。ベッリーニはこの作品の後に『ノルマ』『清教徒』を作曲します。
タイトルからは何かオカルト的、あるいはサスペンス的な内容かと想像しますが、登場人物の相関関係はシンプルで、全体にエレガントでロマンティック。素朴な暮らしをしている山村での出来事を描いています。
歌唱の美しさを楽しむオペラなので、ひたすら叙情的で美しいメロディを歌い上げる歌手の超絶技巧を楽しみましょう。
登場人物の個性を理解したい
テアトロ・レアル公演より© Javier del Real | Teatro Real
19世紀初め頃のスイスの山中が舞台です。孤児の村娘、アミーナ(夢遊病を患っている)は地主のエルヴィーノと結婚が決まっています。結婚証書にサインしてエルヴィーノは指輪をアミーナに贈ります。そこにたまたま死んだ領主の息子、ロドルフォが村に来ていてリーザ(エルヴィーノのことが好き)が経営する宿に宿泊します。その晩、夢遊病状態のアミーナがロドルフォの部屋のベッドに入って眠ってしまいます。このことがエルヴィーノの知るところとなり、エルヴィーノはアミーナを疑い結婚をやめると言い出し、指輪を取り上げてしまいます。さらに、エルヴィーノはリーザと結婚することにしてしまいます。
村人たちはアミーナを救おうとロドルフォに相談しにいきます。ロドルフォはアミーナの夢遊病のせいだと説明し彼女の身の潔白を証明します。ところがみなすぐに信じようとはしません。エルヴィーノとリーザが教会へ行く途中、夢遊病状態のアミーナが屋根の上を歩いているのを見て、ようやく真実に気づきます。そして元通り、エルヴィーノが指輪をアミーナにはめて正気に戻り、村人から祝福されます。
閉鎖的な土地、時代背景を鑑みた演出
テアトロ・レアル公演より© Javier del Real | Teatro Real
演出のバルバラ・リュックは、スペインのみならず、英ロイヤル・オペラ、モネ劇場、他にもオーストラリアやアルゼンチンの劇場のプロダクションの演出も手がける気鋭の演出家。今作では、男性優位で閉鎖的な時代、土地柄を意識しているようです。例えば結婚する二人は大きな冠をつけています。身軽に動けない状態です。動きを制限される重さは、結婚によって花嫁が自由を奪われるという象徴的な意味合いがあるとのこと。他にも第2幕でエルヴィーノがアミーナを疑い激昂して彼女から指輪を奪うところの表現も感情にまかせて言葉で、暴力でアミーナを一方的に責めます。誰一人としてアミーナのことを理解しない状況にあるさまをリュックはどのように描くのでしょうか。ぜひ実際に見て確かめたいです。
イタリア・オペラに精通している指揮者ベニーニ再び
大スター、シラグーザも
上段左より:指揮マウリツィオ・ベニーニ、演出バルバラ・リュック、クラウディア・ムスキオ、アントニーノ・シラグーザ
下段左より:妻屋秀和、谷口睦美、伊藤晴、近藤圭
アミーナ役はクラウディオ・ムスキオが演じます。2021/22シーズンからシュトゥットガルト州立劇場の専属歌手となり、今年の7月に『夢遊病の女』アミーナを歌い大成功を収めたばかりです。新国立劇場初登場です。
エウヴィーノ役は大スター、テノールのアントニーノ・シラグーザが務めます。新国立劇場には2013年『愛の妙薬』以来11年ぶりとなります。
そして指揮はマウリツィオ・ベニーニです。2023年に四半世紀ぶりに新国立劇場に戻ってきてくれて『リゴレット』、24年『トスカ』といずれも素晴らしいパフォーマンスを披露してくれました。ベルカント・オペラもお手のもののベニーニ、期待が高まります。
そして素朴な村人たちを透明で美しい歌唱で盛り上げてくれる新国立劇場の合唱にも注目です。
新国立劇場オペラ『夢遊病の女』〈新制作〉10月3日(木)~10月14日(月・祝)
会場: 新国立劇場オペラパレス
公演
10月3日(木) 13:00
10月6日(日) 14:00
10月9日(水) 14:00
10月12日(土) 14:00(託児あり)
10月14日(月・祝) 13:00
チケット料金:29,700円~1,650円
詳しくは:新国立劇場
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