• HOME
  • おすすめバレエ
  • プレビュー:映画『JOIKA 美と狂気のバレリーナ』4月25日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ他 全国公開 

プレビュー:映画『JOIKA 美と狂気のバレリーナ』4月25日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ他 全国公開

バレリーナを目指す少女が陥った闇


キャッチコピーに「『ブラック・スワン』に次ぐ、美と戦慄のサイコ・バレエ開幕!」とあるように、この映画もバレリーナを目指す少女が精神的に追い詰められていくさまを描いています。

実際にあった話というのも衝撃的です。アメリカ人のジョイ・ウーマックがボリショイ・バレエ団のプリマになることを夢見て、15歳でボリショイ・バレエ・アカデミーに留学します。アカデミーでの日々は毎日が競争でした。とにかく上手くなりたい、少しでも先生の目に留まりたい、それはロシア人の生徒たちも同じこと。新参者で努力家、そしてけっこう上手に踊れるジョイは陰湿ないじめにあいます。それは昭和の少女漫画に出てくる、呆れるようなことの連続ですが、いじめっ子もいじめられっ子も結局は同じ。ボリショイ・バレエ団に入団したい、という同じ目的を持つライバル同士ですから雰囲気は悪く、先生も常に厳しく生徒に接しています。バレエ留学にはよくあることですが、親元を離れ、寂しさとも戦いながらレッスンを受け続ける……一流のバレリーナになるためにはタフにならざるを得ない現実を改めて見せつけられます。


ジョイはかなり追い詰められていきますが、理不尽さに負けずなんとかボリショイ・バレエ団に入団します。彼女はボリショイ・バレエ団とソリスト契約を結んだ初のアメリカ人女性なのだそう。

団員になったもののコールドの日々が続き、ソロを踊らせてもらえません。それは実力だけではどうにもならない部分もあり、ジョイは焦ります。彼女のとった行動、そして行き着く果ては残酷なものでした。

ロシアにおいて、バレエで成功することの難しさ


ジョイがボリショイ・バレエ団に入団したのは2012年のこと。現在オーストラリア・バレエ団の芸術監督を務めているアメリカ人のデヴィッド・ホールバーグがアメリカン・バレエ・シアターのプリンシパルであった時にボリショイ・バレエ団にプリンシパルとして入団したのは2011年でした。当時の芸術監督セルゲイ・フィーリンに招かれてのことです。パリ・オペラ座バレエ団、英国ロイヤル・バレエ団と世界のトップ・カンパニーにゲスト出演し世界的スターだったホールバーグ、ボリショイ・バレエ団設立以来初のアメリカ人プリンシパル誕生、という彼の入団のニュースは華々しく世界を駆け巡りました。その一方で、1年前に入団したジョイの境遇は入団前も入団後も厳しく、あまりにも明暗があります。とはいえホールバーグですらロシア・スタイルを身につけるために大変な努力をしたと言われていますので、ロシアにおいてバレエで成功するのは外国人にとっては並大抵のことではないのでしょう。

オシポワが本人役で出演


この映画では役者にはバレエを熟知していることが求められるわけですが、良いキャストが揃っています。主役のジョイカは、スピルバーグ監督の『ウエスト・サイド・ストーリー』に出演し、舞台でも活躍している若手、タリア・ライダーで熱演しています。教師ヴォルコアは『女は二度決断する』『イングロリアス・バスターズ』に出演しているダイアン・クルーガーが演じています。彼女はかつて英国ロイヤル・バレエ・スクールにてバレリーナを目指し研鑽を積んでいたそうで、所作が美しいです。そして『ホワイト・クロウ』で主役のルドルフ・ヌレエフを演じたオレグ・イヴェンコがジョイカのパートナーとして登場します。

また、バレエファンに嬉しいプレゼントとして、ナタリア・オシポワが本人役で出演しています。劇場で『瀕死の白鳥』を踊っているシーンもあります(舞台が遠く、小さくしか見られないのが残念)。

プリマ・バレリーナになりたくて精進しているうちに心を病んでいってしまうジョイカ。フィクションではありますが辛くシビアな場面が多く、これもバレエの世界の一面であることを改めて知らされます。

画像:© Joika NZ Limited / Madants Sp. z o.o. 2023 ALL RIGHTS RESERVED


映画『JOIKA 美と狂気のバレリーナ』4月25日(金)よりTOHOシネマズシャンテ他 全国公開 

チケット料金:一般前売り1,600円

詳しくは:joika-movie.jp

エディター・ライター 出版社勤務を経てフリーランスのエディター、ライターとして活動中。 クラシック音楽、バレエ、ダンスを得意ジャンルとする。

関連記事

  1. この記事へのコメントはありません。