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プレビュー:東京バレエ団『ザ・カブキ』10月12日(土)~14日(月・祝)東京文化会館

東京バレエ団の代表作
歌舞伎の忠臣蔵がバレエに

モーリス・ベジャールが試みた歌舞伎のバレエ化

モーリス・ラヴェルの『ボレロ』を使った『ボレロ』の振付家として広く一般に知られるモーリス・ベジャールが、歌舞伎の『仮名手本忠臣蔵』を原本としてバレエ作品を東京バレエ団のために作りました。初演は1986年です。音楽は黛敏郎です。

奇天烈さのない芸術性の高い傑作

プロローグは現代。青年たちが踊っているところ、一人が日本刀を見つけそこに『仮名手本忠臣蔵』の義太夫が聞こえてきます。一気に舞台は忠臣蔵の世界へ。刀を見つけた青年は、由良之助となり主君の仇討ちを果たします。

この作品は海外、パリ・オペラ座、ウィーン国立歌劇場、ミラノ・スカラ座等、最高峰のオペラハウスで上演され続けています。海外での評価が非常に高く、単に東京バレエ団の代表作というだけでなく、バレエ団の名前を世界に知らしめることになった作品です。そして、海外での評価は、「主君への忠誠」は世界共通なのだということを逆に日本人の私たちに意識させることにもなりました。

ベジャールは日本に大変造詣が深く、表面的になぞるだけでない深い精神性、哲学、美学にまで踏み込んだ解釈で、忠臣蔵をバレエで描いています。歌舞伎では全十一段に及ぶ長い物語ですが、2時間強にまとめ物語はテンポよく進みます。音楽は黛敏郎、彼の作品である『涅槃交響曲』も一部使用されており、ベジャールの意図をよく汲み取り、時空を超えて普遍の人間の心情を表しています。

西洋人が日本のテイストを取り込んだ際に日本人が感じる、残念に思うようなところは全くありません。内股やすり足で歩くなどのテクニックが盛り込まれ、黒子も登場します。

由良之助役に宮川新大が初挑戦
カンパニーの伝統を踊り継ぐ

今回3キャストが組まれています。主役の由良之助役には柄本弾と秋元康臣、そしてプリンシパルの宮川新大が初めて挑みます。塩治半官の妻である顔世御前役には上野水香のほか、金子仁美と榊優美枝がデビューします。

将軍足利尊氏の弟である直義、塩治半官の家来の勘平、顔世御前の腰元で勘平の恋人おかる等々、個性的なキャラクターが多数登場します。

見どころはもちろん、主君の仇討ちを果たした四十七士が切腹するシーン。バレエではあまり見られないのですが、ベジャール作品では頻繁に出てくる力強い男性群舞が迫力です。

繰り返し上演されるものの、演じるダンサーは変わります。その時々の『ザ・カブキ』をどうぞお見逃しなく。


東京バレエ団『ザ・カブキ』
公演
10月12日(土) 14:00
10月13日(日) 14:00
10月14日(月・祝) 13:00

会場: 東京文化会館
チケット料金:3,000円~14,500円
詳しくは:NBS 
                             撮影:Kiyonori Hasegawa

エディター・ライター 出版社勤務を経てフリーランスのエディター、ライターとして活動中。 クラシック音楽、バレエ、ダンスを得意ジャンルとする。

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