プレビュー:東京バレエ団『M』9月20日(土)〜23日(火・祝)東京文化会館

三島由紀夫生誕100年の今年
ぜひこの作品を体験してほしい

ベジャールが三島由紀夫をバレエに

20世紀を代表する天才振付家、モーリス・ベジャールには傑作がたくさんありますが、なかでも東京バレエ団のために振り付けた歌舞伎の仮名手本忠臣蔵をバレエにした『ザ・カブキ』と三島由紀夫を題材にした『M』は東京バレエ団にしか表現できない素晴らしい作品で、東京バレエ団の大切な宝物といえます。

今年は三島由紀夫生誕100年にあたるメモリアル・イヤーです。各所で関連行事やイベントが行われていますが、このバレエ作品の上演も三島由紀夫を回顧し、新たな発見ができる貴重な機会となることでしょう。

なによりもベジャールの三島作品への深い理解、そこから三島由紀夫という人物像に迫る鋭い考察、さらにそれらを極上のバレエ作品へと昇華させるアーティスト、ベジャールの才能に感嘆します。

この作品を経験するたびに彼の洞察力に圧倒されるのです。

作品タイトルの「M」はMishimaの頭文字であり、海(Mer)、変容(Métamorphose)、死(Mort)、神秘(Mystère)、神話(Mythologie)といった三島の人生を表しています。さらに『M』には『潮騒』や『金閣寺』、『鏡子の家』『鹿鳴館』、『午後の曳航』のモチーフがあちこちに散りばめられています。

新時代の魅力的なキャスト

ミシマ少年が自らの人生をたどるかのような旅で構成されているこの作品、彼には4人の分身がいます。イチ、ニ、サン、シ、と名付けられ、最重要なのはシ、これは「死」を表しています。さらに聖セバスチャンも登場します。

直近では5年前、2020年に三島由紀夫没後50周年記念として上演されました。その時のキャストはとても新鮮で、今回もその時とほとんど変わらずに上演されます。

イチは柄本弾、ニは宮川新大、そしてシは池本祥真です。聖セバスチャンは樋口祐輝と大塚卓、女は上野水香と伝田陽美が演じます。サンは前回の秋元康臣に変わり生方隆之介が登場します。前回のキャストでのパフォーマンスが素晴らしかったので今回もとても期待できます。

この作品は頻繁に上演される作品ではありません。三島由紀夫ファンでこの作品を経験していない方はぜひ体験していただきたいです。また黛敏郎、ドビュッシー、ワーグナーといった音楽を使用するベジャールの音楽センスも大変良いので音楽ファンにもおすすめです。

photo by Kiyonori Hasegawa


東京バレエ団 『M』
開演:
9月20日(土)14:00
9月21日(日)14:00
9月23日(火・祝)13:00

会場: 東京文化会館

チケット料金:15,000〜3,000円

詳しくは:NBS

エディター・ライター 出版社勤務を経てフリーランスのエディター、ライターとして活動中。 クラシック音楽、バレエ、ダンスを得意ジャンルとする。

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