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プレビュー:12月15日(金)公開  映画英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2023/24『ラインの黄金』

『ニーベルングの指環』新制作プロジェクトがスタートシーズン・スタートにふさわしい序夜『ラインの黄金』

トルーキン『指輪物語 (ロード・オブ・ザ・リング)』に影響を与えたワーグナーの傑作 

2023年12月15日(金)よりTOHOシネマズ日本橋、他全国公開

英国ロイヤル・オペラ・ハウスの音楽監督であるアントニオ・パッパーノは、音楽監督としては今シーズンが最後となります。指揮者としてこれからも登場しますが、彼が最後に仕掛けたのがワーグナーの『ニーベルングの指環』の新制作。序夜『ラインの黄金』、第1夜『ワルキューレ』、第2夜『ジークフリート』、第3夜『神々の黄昏』、全4作を毎年1作ずつ上演するというプロジェクトです。序夜『ラインの黄金』を2023/24シーズンのオープニングに披露することになりました。

『ニーベルングの指環』は映画も大ヒットしたトルーキン『指輪物語 (ロード・オブ・ザ・リング)』に影響を与えたことでも知られ、4作品の上演には約15時間も要するワーグナーの大作です。

ワーグナーは北欧神話などをもとに物語を編み出しました。ヴォータンが支配する天上の神々の世界、地上の人間、ニーベルング族が住む地下のニーベルハイムで、世界を支配できる指環をめぐり繰り広げられる愛と権力欲の壮大な物語です。

パッパーノがタッグを組んだ演出家は、現在最も人気のあるバリー・コスキー。彼の演劇性の高い演出、作品の再解釈はとても力強く大胆で話題となっています。

欲望むき出しの登場人物たちの駆け引きがおもしろい

幕が上がると、舞台には枯れ果てて残骸のようになった大きなトネリコがドンと置かれています。そこに大地・知恵の女神エルダ(俳優)がゆっくりと舞台を横切ります。大地の資源をもとにした富(黄金)を人間のエゴが貪欲に求めた結果、地球の死が近づいていることを提示しているのだそう。彼女は全編ほぼ全裸で舞台に立ち、舞台上のやり取りを静かに見つめています。

登場人物はみな感情をストレートに吐き出し言いたい放題。演技力抜群で、歌っていることを一瞬忘れてしまいます。

演技力の高さが光る歌手たち

序盤のラインの乙女たちのズケズケとした肉感的な3人、彼女らに拒絶され愛を断念して権力欲を選び黄金を選ぶこびと族のアルベリヒ(クリストファー・パーヴェス)の強欲で狡猾なさまはさすがです。またギャングのボスのような神々の長ヴォータン(クリストファー・モルトマン)の仕事ができるようでできない雰囲気や、身分は低いものの口の達者な火の神ローゲ(ショーン・パニッカー)、結婚の女神フリッカ(マリーナ・プルデンスカヤ)、豊穣の女神フライア(キアンドラ・ハワース)、どうみても堅気でない巨人兄弟(インスン・シム、ソロマン・ハワード)らもキャラクターがしっかり立っていて、『ニーベルングの指環』の初心者にもとてもわかりやすくおもしろくドラマが展開していきます。

この『ラインの黄金』はプレミア後、プレスと観客の両方から絶賛されたというのもよくわかります。

『ニーベルングの指環』初チャレンジに最適

今回の演出はファンタジックなイメージはほとんどなく、神様たちも神様風のいでたちではなく人間臭くてそれぞれの個性が全面に出ており、とてもわかりやすいです。

『ニーベルングの指環』に興味があり、劇場で鑑賞してみたいけれど上演時間が長いなどの理由で二の足をふんでいる方は多いと思います。

おもしろい演出、勢いのあるエネルギッシュな演奏、達者な歌手たち、世界観をとても上手く表現している舞台美術……さまざまな要素が揃った素晴らしい舞台です。ぜひ映画館で体験してください。

画像|©2023 ROH


2023年12/15(金)~12/21(木) TOHOシネマズ 日本橋 ほか1週間限定公開
英国ロイヤル/オペラ・ハウス シネマシーズン2023/24

『ラインの黄金』 

開演:劇場による

チケット料金
一般・シニア 3,700円
学生・小人 2,500円

詳しくは:東宝東和



エディター・ライター 出版社勤務を経てフリーランスのエディター、ライターとして活動中。 クラシック音楽、バレエ、ダンスを得意ジャンルとする。

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