伝説のダンサー「ルドルフ・ヌレエフ」の軌跡をたどる|2023年7月没後30年記念公演が開催予定
2. パリ・オペラ座バレエ団芸術監督としてのヌレエフの功績
前述のとおり、ヌレエフは1983年から1989年までパリ・オペラ座バレエ団の芸術監督を務めました。
古典作品の改訂のほか、ウィリアム・フォーサイスやジェローム・ロビンズなどの現代作品を取り入れたことも特徴です。
また、シルヴィ・ギエムやマニュエル・ルグリなどの名ダンサーを発掘し育成しました。この世代のダンサーは「ヌレエフ世代」と呼ばれ、後世に大きく名を残しています。
ヌレエフ版の特徴
ヌレエフ版の特徴は、男性ダンサーの活躍が多いことです。
例えば『ドン・キホーテ』では、超絶技巧を盛り込み、男性ダンサーの見せ場を多く作っています。また、ヌレエフが得意としたロシアの民族舞踊の要素が入っていることもヌレエフ版の特徴です。
『眠れる森の美女』でも、デジレとオーロラの第3幕のグランパ・ド・ドゥで難易度の高いリフトやテクニックを盛り込んでいます。
自身が伝説的なダンサーというだけあって、ヌレエフ版は難しいテクニックを盛り込み、ダンサーの才能を見せる振付になっている印象を受けます。
▼ パリ・オペラ座バレエ団 ヌレエフ版『眠れる森の美女』『ドン・キホーテ』
3. ヌレエフを題材にした作品
ヌレエフの激動の人生は、映画や書籍でも振り返ることができます。
映画『ホワイト・クロウ 伝説のダンサー』
キーロフ・バレエのパリ公演から亡命までのストーリーを描いた映画です。ときに、幼少期やバレエ学校時代の様子を織り交ぜながら物語が進みます。
ヌレエフの性格や当時のソ連の様子、亡命のすさまじさがよく分かる映画です。
ヌレエフ役をタタール劇場のプリンシパル オレグ・イヴェンコが務めています。ヌレエフの同僚 ユーリ役でバレエ界の異端児と呼ばれるセルゲイ・ポルーニンが出演しているのも注目ポイントです。
YouTubeで全編を見ることができます。(有料)
映画「不屈のダンサー ヌレエフ」
出典: Amazon.co.jp
亡命後のヌレエフの生涯をパリ・オペラ座のエトワールたちの証言と共に追ったドキュメンタリー映画です。
闘病しながらもダンサー、振付家であり続けようとするヌレエフの姿を知ることができます。
映画『ヌレエフ:伝説と遺産』
2022年9月にロンドンで開催された公演「ヌレエフ伝説と遺産」を収録した映画です。
ヌレエフのバレエパートナーを務めたモニカ・メイソンと、先ほど紹介した映画『ホワイト・クロウ 伝説のダンサー』の監督 レイフ・ファインズが司会を担当しました。
アリーナ・コジョカル、ナタリア・オシポワ、ヤーナ・サレンコ、ヴァディム・ムンタギロフ、ヤスミン・ナグディなど名だたるダンサーが出演しています。
『ホワイト・クロウ 伝説のダンサー』で主演を務めたオレグ・イヴェンコ、日本人ダンサーの崔由姫、五十嵐大地も出演しています。
作品は『眠れる森の美女』や『ラ・バヤデール』『ローレンシア』など豪華なラインナップで上演されました。
2024年2月23日まで配信を見ることができます。
▼配信先
DICE+ (UPLINK)
https://diceplus.online/movie/262
単行本『ヌレエフ―20世紀バレエの神髄 光と影』
出典:Amazon.co.jp
ヌレエフの誕生から死までを描いた書籍です。
著者はフランスのジャーナリスト ベルトラン・メヤ-スタブレです。日本語訳が販売されています。
全317ページの本で、シベリア鉄道の車内で誕生した際の様子やキーロフ・バレエでデビューする際の苦労、亡命の様子、ヌレエフ最後の様子などが事細かに描かれています。
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