愛をめぐる「聖」と「俗」、ワーグナーのオペラ『タンホイザー』〜あらすじや曲を紹介〜
オペラ『タンホイザー』の見どころ
オペラ『タンホイザー』は有名な序曲から始まり、バレエシーンなど視覚的にも楽しめて、見どころがいっぱい!男声、女声の独唱曲がバランスよく配置されていて合唱も美しく、特に2幕は歌の聴かせどころが続きます。
1.序曲
オペラ『タンホイザー』で、なんといっても有名なのがこの序曲!
バイロイト祝祭管弦楽団 アクセル・コーバー指揮 バイロイト音楽祭2014 バイロイト祝祭劇場 ライヴ収録
この序曲、実はオペラ『タンホイザー』の世界を全て表現している、いわば要約版!
冒頭は、このオペラの代名詞的な旋律である「巡礼のモチーフ」。そして、タンホイザーの罪の意識を表す「悔恨のモチーフ」が続き、曲調が変化してからはヴェーヌスベルクの音楽である「バッカナール」、さらに愛の女神ヴェーヌスの「ヴェーヌス賛歌」と続きます。そして再び「巡礼のモチーフ」が力強く響きます。
この序曲は、唐沢寿明さん主演のドラマ『白い巨塔』で覚えている人も多いかもしれません。主人公の医師、財前五郎が手術前のイメージトレーニングをする場面などのテーマとして流れていました。
ドラマ『白い巨塔』 執刀前のテーマ
序曲の後にはバレエ「バッカナール(Bacchanale)」が続きます。「バッカナール」は、ローマ神話に登場する酒の神「バッカス」の祝祭での踊りが起源です。オペラ『タンホイザー』のバッカナールは、ヴェーヌスベルクの音楽でもあります。ヴェーヌスやバッカスなど、ローマ神話との関連性も興味深いですね。
バレエ「バッカナール」 メトロポリタン歌劇場
2.ヴォルフラム「夕星の歌」|O, du mein holder Abendstern
プラシド・ドミンゴ 2013年ローレライ野外劇場
第3幕第2場でヴォルフラムが歌う「夕星の歌」は、オペラ『タンホイザー』の中で最も有名なアリアです。その情感豊かで優美な旋律を聴けば納得!
ヴォルフラムは準主役ですが、「肉欲の愛」を求めるタンホイザーの対極にあって「精神的な愛」を体現する重要な存在です。「夕星の歌」は、エリーザベトへのかなわぬ恋心を抱きながら忠実な愛を貫こうとする、まさに精神的な愛の結晶といえる美しいアリア。
ここで歌われる「夕星」とは金星のことで、実はビーナス(ヴェーヌス)のことでもあります。精神的な愛を表す絶頂といえる場面で、肉欲の愛の象徴であるヴェーヌスに祈る歌を歌わせるという二重性!このように聴き手に議論を投げかけるような問いを含ませるところが、ワーグナーの台本の巧みなところです!
3.エリーザベト「殿堂のアリア」|Dich, teure Halle
デボラ・ヴォイト、ジェームズ・レヴァイン指揮、メトロポリタン歌劇場オーケストラ
第2幕冒頭、歌の殿堂でエリーザベトが歌う、喜びにあふれた「殿堂のアリア」。オペラ『タンホイザー』の女声アリアの聴かせどころであり、ワーグナー作品を得意とするドラマティックなソプラノ歌手の定番レパートリーです。
タンホイザーは、純愛のエリーザベトと官能のヴェーヌスという、「聖」と「俗」の象徴のような女性の間で揺れ動きます。この世界に居場所がないと悟るとヴェーヌスの元に戻ろうとし、自己犠牲的なエリーザベトの愛に憧れを抱く。
ヴェーヌスはタンホイザーにとって、どんな自分であっても受け入れられる場所だったのかもしれません。一方でエリーザベトは、教皇でさえ為しえなかった「救済」をタンホイザーに与える唯一の存在でした。
このアリアの後に続く、大行進曲「歌の殿堂をたたえよう」も聴きどころ! 歌合戦の参加者が続々と入場し、揃ったところで全員が合唱する壮大な合唱曲です。吹奏楽で演奏されることも多い楽曲です。
吹奏楽による「歌の殿堂をたたえよう」
オペラ『タンホイザー』公演予定
新国立劇場でオペラ『タンホイザー』が公演されます!
期間は、2023年1月28日(土)~2月11日(土・祝)の5日間。
日本語字幕付きでじっくりオペラ『タンホイザー』を鑑賞できます!
新国立劇場オペラ『タンホイザー』
2023年1月28日(土)〜2月11日(土)
会場:新国立劇場 オペラパレス
開演:
2023年1月28日(土) 14:00
2023年1月31日(火) 14:00
2023年2月4日(土) 14:00
2023年2月8日(水) 17:00
2023年2月11日(土・祝) 14:00
★ チケット料金
一般 5,500円〜27,500円
詳しくは:新国立劇場
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