極上のロマンティック・オペラ、プッチーニ『ラ・ボエーム』〜あらすじや曲を紹介〜

9. 関連作品
レオンカヴァッロのオペラ『ラ・ボエーム』
▼ 第一幕ミミのアリア「ミュゼットはみずみずしい唇に|Musette svaria sulla bocca viva」
ミミ(ルネ・フレミング)
プッチーニが『ラ・ボエーム』を作曲する前、親友のオペラ作曲家ルッジェーロ・レオンカヴァッロ(1857-1919)が、彼にこの作品のオペラ化を勧めたことがありました。しかし、プッチーニは当時、前作のオペラ『マノン・レスコー』を作曲していたこともあり、忙しくて断ってしまいます。そのため、レオンカヴァッロは自身の手で台本を書いてオペラ作曲を始めました。
その後プッチーニは、ミュルジェールの原作小説『ボヘミアン生活の情景』を読んでオペラ化を決意。レオンカヴァッロはこれを知って激怒します。大親友だった2人は喧嘩別れし、タイトルも同じ2つのオペラ『ラ・ボエーム』が誕生することとなりました。
レオンカヴァッロのオペラの方が先に完成しましたが、初演は遅れて1897年5月6日ヴェネツィア・フェニーチェ劇場。この時はすでに、プッチーニのオペラが高い評価を得て各国で上演されていました。ただ、当時の新聞が2人の大作曲家のスキャンダルを書き立てたので、2つの『ラ・ボエーム』は広く話題になりました。
レオンカヴァッロと言えば、オペラ『道化師』で有名なヴェリズモ・オペラ(庶民の生活や暴力的シーンなど生々しい現実をリアルに表現したオペラ)の代表的作曲家。
彼のオペラ『ラ・ボエーム』はより原作小説に近いもので、若者たちの嫉妬や怒り、絶望を全面に表し、音楽も荒々しい激情に満ちていました。プッチーニのような詩情や抒情性には乏しく、現在ではほとんど上演されることのないオペラです。
ミュージカル『レント』
『レント』(1996年米国初演)は、プッチーニのオペラ『ラ・ボエーム』を原作にしたミュージカルです。
舞台は、1989年12月24日から1年間のニューヨーク・イーストヴィレッジ。「レント(RENT)」とは家賃のこと。家賃も払えないほど窮乏している若者たちの生活を描き、貧困、ドラッグ、HIVといった現代社会の問題を浮き彫りにしています。
ミュージカル音楽とロック音楽を融合させ、ミュージカルの新たな時代を切り開きました。
初演以来ブロードウェイで12年4カ月のロングラン公演を記録し、世界中で熱狂的ファンが存在する伝説的ミュージカルと言われています。
参考文献
CD『歌劇「ラ・ボエーム」全曲』ルチアーノ・パヴァロッティ(ロドルフォ)、ミレッラ・フレーニ(ミミ)、ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、1972年録音、デッカ
『名作オペラブックス6 ボエーム』アッティラ・チャンパイ、ディートマル・ホラント編、増井敬二リブレット対訳、田中安男本文訳、音楽之友社(1987年)
『スタンダード・オペラ鑑賞ブック イタリア・オペラ下』音楽之友社編、音楽之友社(1998年)
『みやざわじゆういちオペラシリーズ1 プッチーニのすべて』 宮澤縦一著、芸術現代社、1990年7月出版
『ラ・ボエーム』アンリ・ミュルジェール著、辻村永樹訳、光文社、2019年12月出版
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