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プレビュー:新国立劇場オペラ『ラ・ボエーム』10月1日(水)〜11日(土) 新国立劇場オペラパレス

いつの時代にも通ずる青春の恋物語

舞台に現れる19世紀、クリスマス・イブのパリの町が美しい

「一番好きなオペラ作品は?」という問いかけに答える際、『ラ・ボエーム』は必ず上位に上がってくる作品なのではないでしょうか。

オペラ作品には悲劇が多く、その悲劇を生み出すのは家族の問題、権力争い、陰謀、復讐、裏切りといったことが原因の場合が多いです。それゆえ重厚で説得力のあるドラマが紡がれるわけですが、『ラ・ボエーム』は青春時代の悲しい1ページがテーマです。

共感する部分がだれにでもどこかしらあり、若さゆえ、貧しさゆえに悲劇へ突き進んでしまうというどうにもできないやるせなさに魅了されるのではないでしょうか。

19世紀のパリ、クリスマス・イブの夜をこのプロダクションは見事に舞台上に出現させます。舞台美術、衣裳、照明、カフェの様子、それらすべてが美しく、本当に19世紀パリが立ち現れたかのようなのです。歌唱はもちろんなのですが、舞台全体が魅力的な見どころポイントです。

屋根裏部屋で出会い恋に落ちるお針子のミミ(マリーナ・コスタ=ジャクソン)と詩人ロドルフォ(ルチアーノ・ガンチ)、そして二人を取り巻く画家のマルチェッロ(マッシモ・カヴァレッティ)、音楽家ショナール(駒田敏章)、哲学者コッリーネ(アンドレア・ペレグリーニ)、マルチェッロの恋人ムゼッタ(伊藤晴)らが登場します。彼らはみんな貧乏、いつの時代にも共通の青春ドラマを展開していきます。

ミミは新国立劇場初登場のマリーナ・コスタ=ジャクソン

ミミは病におかされており、二人の恋はうまくいかず互いが好きなままで別れようとしますが、最後はミミが亡くなってしまいます。

仕事がない、世間に認めてもらえない、貧しさから抜け出せない、これは現代でも共通しており、若い人には特に刺さるのではないでしょうか。

そんな救いのないような状況でも若者は恋をするし夢を見ます。彼らに寄り添うようにプッチーニは美しい音楽をつけました。アリアもとても美しく、第1幕での二人の出会いから恋に落ちるまでは、ロドルフォの「冷たい手を」とミミの「私の名はミミ」という名アリアが歌われるのですが、感動的なシーンとなっています。

今回、主役のミミは新国立劇場初登場となるマリーナ・コスタ=ジャクソンが歌います。世界各地のオペラハウスや音楽祭でのキャリアを積んだ勢いのある彼女の演じるミミは楽しみですね。

ロドルフォ役のルチアーノ・カンチは、高く評価された2023年の『シモン・ボッカネグラ』のガブリエーレ・アドルノで登場し、大成功を収めたのも記憶に新しいです。

他にコッリーネ役のアンドレア・ペレグレーニも新国立劇場初登場です。

昨シーズンの新国立劇場の『カルメン』のミカエラや高校生のためのオペラ鑑賞教室『蝶々夫人』のタイトルロールを歌い、着実に実力をつけてきている伊藤晴のムゼッタも期待大です。

精一杯日々を生きるキャラクターが魅力的な美しく悲しい『ラ・ボエーム』、シーズン開幕はせつない気持ちに浸りましょう。

新国立劇場「ラ・ボエーム」より 撮影:三枝近志


新国立劇場オペラ『ラ・ボエーム』
開演:
2025年10月1日(水) 18:00
2025年10月4日(土) 14:00 託児サービスあり
2025年10月9日(木) 14:00
2025年10月11日(土) 13:00

会場:新国立劇場オペラパレス
チケット料金:26,400〜1,650円
詳しくは:新国立劇場

エディター・ライター 出版社勤務を経てフリーランスのエディター、ライターとして活動中。 クラシック音楽、バレエ、ダンスを得意ジャンルとする。

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