オペラあらすじ「オルフェオとエウリディーチェ」クリストフ・ヴィリバルト・グルック
オルフェオとエウリディーチェ|Orfeo ed Euridice
作曲:クリストフ・ヴィリバルト・グルック
原作:ギリシア神話(オウィディウスの「転身物語」)
台本:ラニエーリ・カルツァビージ
初演:1770年4月7日 キングズ劇場 (ロンドン)
構成:3幕
上演時間:約1時間45分
登場人物
オルフェオ|吟遊詩人で竪琴の名手
エウリディーチェ|オルフェオの妻
アモーレ|愛の神
その他神々、精霊たち、羊飼い、冥界の住人たちが登場する。
ストーリー
〜恋人のために冥界へ救出行へ〜
エウリディーチェの葬儀と旅立ちの決意
エウリディーチェが死んでしまい、その墓前で嘆くオルフェオは冥界へ彼女を救いに行こうと言い出します。愛の神アモーレや主神ゼウスが彼を憐れみ、冥界への旅を許可しました。
その際、アモーレは「冥界の住人をお前の歌でなだめること。冥界を出るまでエウリディーチェに事情を話したり、彼女の方を振り向いて見ないこと。破ったら永遠の別れとなる」と告げます。
冥界へ下る道
第1場、洞窟の入り口
冥界へ続く洞窟の入り口では、復讐の女神や死霊たちが踊り、邪魔をします。オルフェオは竪琴と歌声で復讐の女神たちをなだめて進みます。
第2場、死後の楽園エリュシオン
オルフェオは死後の楽園で妖精と過ごすエウリディーチェを見つけました。エウリディーチェの姿を見ないように彼女の手をとり、冥界から地上へ戻ろうとします。
葛藤と試練
第1場、冥界と地上を繋ぐ洞窟
エウリディーチェは手を引かれながら、こちらを見ず、何も語らないオルフェオに不安を感じ、座り込んで苦しむふりをしました。オルフェオは耐えきれずエウリディーチェのほうを振り向きます。
途端にエウリディーチェは死んでしまいます。絶望したオルフェオもすぐに自刃して後を追おうとしますが、アモーレが止めに入ります。
アモーレが「オルフェオが真実の愛を示した」と告げると、エウリディーチェは息を吹き返します。
第2場、地上の愛の神の神殿
蘇ったエウリディーチェ、帰還したオルフェオを羊飼いや精霊が祝福し、愛を讃えて幕が下ります。
解説
このオペラは、ギリシア神話のオルフェウスとエウリュディケの伝説をなぞっています。『オルフェオとエウリディーチェ』はイタリア語の読みで、フランス語で演じる際にはフランス語読みの『オルフェとユリディス』とされることがあります。
元々の神話では、妻エウリュディケの死因は毒蛇に嚙まれたこととされています。オルフェウスが歌で鎮める相手は三つ首の番犬ケルベロスや冥界の河の渡し守カローンなどです。
そして、冥界にたどり着いた後に冥界の神ハデスが「振り向いてはいけない」という条件を伝えるのですが、オルフェウスは地上まであと少しのところで禁を破り、永遠の別れとなるバッドエンドを迎えます。
オルフェウスはその後、ヘラクレスたちの冒険を助けるなどで活躍し、死後こと座となって天に昇ったとも、死後の楽園で妻と再会したともいわれています。
余談ですが、日本神話でもよく似た話があります。
火の神ヒノカグツチを産んだ際に腹が焼けて死んでしまった女神イザナミを、夫のイザナギが黄泉の国へ助けに行きますが、やはり帰り道に妻を見てはならないという禁を破ったことによって妻の腐乱した姿を目にし、永久の別れを迎えることになります。
死の神となったイザナミはイザナギを恨み、毎日1000人の人間を殺すといい、イザナギは代わりに1500人を産ませようと言い返したことが、人々が死んでは新たに生まれることの所以になったそうです。
単に見てはならないというタブーになると、もっと類例が増えます。
旧約聖書では、悪人だらけになり神が滅ぼすことを決めた街ソドムとゴモラで、唯一の善人だったロトへ、「振り向かずに街を去るように」と天使が告げましたが、ロトの妻だけは街を振り返ったため塩の柱になってしまったといいます。
そのほかギリシャ神話「パンドラの箱」、日本の民話「鶴の恩返し」など振り向いてはいけない、見てはいけないという禁を破って悲劇的な結末に陥る伝説や神話は、世界中各地に伝わっています。
また、『オルフェオとエウリディーチェ』初演から100年ほど後、リバイバル流行していたこのオペラをパロディし、オルフェとユリディスを破局寸前の倦怠期カップルとして描いたパロディ・オペレッタ『地獄のオルフェ』がオッフェンバックにより作られています。日本では運動会BGMやカステラ一番~のCMで有名な『天国と地獄』としても知られています。
近日中の無料配信
新国デジタルシアターより、2022年5月に行われた公演の映像配信が行われます。
オペラ
グルック『オルフェオとエウリディーチェ』
【配信期間】
2022年10月8日(土)2:00~2023年4月7日(金)19:00
🍀詳細は公式サイトで🍀
新国デジタルシアター https://www.nntt.jac.go.jp/stream/
また、解説で触れたオペレッタ『地獄のオルフェ』が、11月23日(水・祝)~11月27日(日)に、東京二期会により上演予定です。
本家を観てからパロディを観れば、その落差で面白さが倍増するかもしれません。併せてお楽しみに!
この記事へのコメントはありません。