• HOME
  • インタビュー
  • インタビュー:ソプラニスタ 木村優一#1ソプラニスタに至る半生を語る

インタビュー:ソプラニスタ 木村優一#1ソプラニスタに至る半生を語る

 待望のニューアルバム『あなたと明日をつなぐ花』を9月13日にリリースする木村優一さん。新譜発売記念コンサートも9月3日に開かれます。
今回は、勢いに乗る木村優一さんのインタビューをお送りします。
ソプラニスタ(男性ソプラノ歌手)になるまでの半生を改めて語っていただきました。

「ソプラニスタ(男性ソプラノ歌手)は特別な存在ではあるかもしれないけれども、自分は歌い手として自分の声で歌うだけです。ソプラニスタという言葉自体に特別こだわりがあるわけではありません」

 木村さんは前回のインタビューでそんなソプラニスタ感を語ってくれました。それは木村さんが幼少期から歌うことが好きで、自分固有の声を大切にしながら歌い続けた結果として、現在のソプラニスタという形に行きついたということなのかもしれません。

中学生で体験した人生初の大舞台

 木村さんが最初に自身の声に向き合ったのは、中学での恩師との出会いがきっかけだったそうです。

「中学3年生時、人生の大きな転機がありました。新しい音楽の先生、工藤宏子先生と出会うことができました。工藤先生にとっては音楽の先生になられた初年だったそうで、私たちは先生からご指導いただいた第一期生でした。

工藤先生はピアノがご専門、東京の音楽大学を卒業され、かなりの伴奏経験もお持ちで、素晴らしいピアノ伴奏で歌えるのが 楽しかった!  熱意をもって授業に取り組む姿勢も私たち生徒によく伝わり、音楽がますます好きになる時間でした」

 工藤先生のすすめもあり、木村さんは人生初めての大舞台、文化祭でのステージに立つことになりました。

「当日は工藤先生のピアノ伴奏に合わせて、映画『サウンド・オブ・ミュージック』で歌われる『すべての山に登れ』を歌いました。歌い始めた瞬間にざわめきが起こり、会場全体が驚いた様子でしたが、その後はみな真剣に聴いてくれて、歌い終わりにはたくさんの拍手をもらいました。ステージを降りると、先生方、同級生、みんなが温かい声をかけてくれて、誰一人として、私のことを馬鹿にしたり、否定したりする人はいませんでした。これは私にとって大きな自信にもつながり、音楽への情熱が増すことにもなりました。私は、本当に先生との出会い、そして学校の環境に恵まれたと感謝しています」

さようなら、ボーイソプラノ 変声期を迎える

 中学生といえば、変声期という成長過程における一大イベントを迎える時期です。通常は10代前半から中盤にかけて変声期を迎えます。この期間中、特に男性の変化は著しく、声帯は成長し太く長くなり、その結果声の音域が広がって、低い音が出るようになります。声の変化は個人によって異なりますが、変声期の終わり頃には成人男性のような深い声が出るようになります。

変声期の期間には個人差があり、通常数カ月から2年ほど続くとされています。この間、声が安定せず、音程や音色が一定しないことがあります。

木村さんにももちろん変声期は訪れたはずですが、この時期をどう過ごしていたのでしょうか。

「その頃の私は、ボーイソプラノの声で歌っていましたが、周りの同級生は声変わりが始まり、自分もそのうちこの歌声とお別れするのかなと思っていました。 おそらく話し声は変わっていたと思います」

 木村さんの話声を聞いていると、たしかに成人男性のそれである。ではなぜ、どのようにしてボーイソプラノのようなソプラノの声をキープできたのだろうか。なにか特別な訓練方法などがあるのだろうか?

「高校で出会った浦田玲子先生のレッスンのお陰です。先生に自分の歌声について相談、休み時間に声を聴いていただき、徐々にボーイソプラノから大人のソプラノになるためレッスンしてくださいました。ソプラニスタの特別な訓練ではなく、どの声種(パート)にも有効なイタリアの発声法のレッスンです。私の声の特性に合わせて、とても丁寧に熱心にレッスンしてくださいました。この時期の浦田先生のレッスンがなければ、ソプラニスタ木村優一は存在していません。『繊細な声だから、大切に育てていってね』という先生の教えは、今でもつねに私の頭に残っています」

変声期を過ぎると、一般的にはボーイソプラノとしての高音域を保つことが難しくなります。

ただ、変声期を過ぎても音楽や歌唱への情熱がある場合、新しい声の範囲や特性に合わせて他の声域や声種に取り組むことは可能なのだそう。木村さんにとっては、よき指導者に出会ったこと、自身の声の発達に合わせて独自の歌唱スタイルを確立できたことは幸運だったといえるのかもしれません。

ソプラニスタ(男性ソプラノ歌手)として

 現在の木村さんの歌声を聞くと、たしかにボーイソプラノとは異なる力強さを感じます。「大人のソプラノ」といわれればそうかもしれませんが常人では歌うことができない高音域の声には、あたかも女性の歌声を聴いているかのような錯覚を覚えることもあります。そのために木村さんは数々のユニークな体験をされてきました。

「大学卒業と同時に大学の寮を出て、音出し可の一軒家に引っ越しました。東京の人気下町エリアにある木造の2階建てです。入居当時で築50年位は経っていたでしょうか。

引っ越しをしてすぐ、歌の練習について承諾を得るためにも、近所にごあいさつ回りをしました。斜向かいのAさんのお宅では、お嬢さんが音楽をされていて、『うちにもピアノがあるから、たまには弾きに来てくださいね』と好意的に迎えてくださいました。

あいさつ回りもすみ、みなさんの承諾も得て、心おきなく歌の練習ができる! というわけで当時はとにかくよく練習をしていました。

ところが、数日後Aさんから声をかけられ、『あなた、裏の家に挨拶しなかったでしょう? 歌声が聴こえてきてびっくりして、うちに聞きにいらっしゃいましたよ! 女の人の歌声が聴こえるって(笑)」

ソプラニスタならではのエピソードとして、女性にまちがわれるというのはよくあることなのだそうですが、こんなこともあったそうです。

「カラオケボックスを練習室がわりに使うことがあるのですが、カラオケの部屋は、中が見えるような扉がほとんどなので、他の利用者に二度見される、店員さんに女性がもうひとりいるんじゃないかなどと隠れて様子をのぞかれるなんてことも多々あります。

会計の時には店員さんから『おひとりですよね?』と念を押されることもあり、『やっぱり女性と二人だと思われていたか、そうすると料金2倍か⁉︎』と苦笑いをすることもよくありました」

 木村さんの歌う曲には、クラシックではソプラノのレパートリー、ポップスなどでも女性ボーカリストの曲が多い印象はある。「キーが合わせやすい女性の歌を選んでしまいがちです」という木村さんだが、新型コロナの流行で外出もままならない時期に、一音楽家としてさまざまな取り組みを行うなかで、あるチャレンジをしていたそうです。それは、自らハードルが高いと語るポップス男性アーティストの曲をカバーするということ。

「まずは暗譜(楽譜を見ずに演奏できるように楽曲を覚える)です。この段階でいつも思うのが、『僕はなんでこんなにポップスの曲の暗譜が苦手なんだろう』ということ。クラシックを歌うとき以上に、この暗譜の壁がはるかに高いのです。歌詞の数が多く、複雑なリズム、短いフレーズの中にたくさんの歌詞が入っているので当然といえば当然かもしれません」

 音楽家(声楽家)は楽譜からさまざまな情報を読み解き、それを自分の体を通して再現していく。木村さんは「ポップスの楽譜を見るとその複雑さにまず面食らう」と言います。

「音域の広さはもちろん、高音域での歌詞のさばき方です。一番の聞かせどころで、これでもかというくらいに高音域でたくさんの歌詞を伝えなければならない、近年の男性アーティストのヒット曲にはこのような曲が多く、男性アーティストの歌をカバーする難しさのひとつはここにあるのかもしれません。ファルセットを使って繊細に高音域で言葉を明瞭に伝えることは大変難しく、オペラ風になってしまうと曲の雰囲気を損なってしまう」

このときの試みは以下の動画で詳しく観ることができるので、ぜひご覧ください。

ニューアルバムをリリースし発売記念コンサートも

 新型コロナの猛威もだいぶん落ち着き、ようやくさまざまな活動に制限がなくなってきた2022年10月10日、木村さんは約3年ぶりとなる、大ホール(大手町三井ホール)でのリサイタルを開催しました。

「ステージから、ほぼ満席の客席を観たときには、ありがたい! と思うと同時に、久しぶりの大舞台に緊張感も走りました」

このリサイタルでも、木村さんは幅広いジャンルの曲にチャレンジしています。

そして、満を持してニューアルバムのリリースが決まりました。実に7年ぶりとなるフルアルバムです。アルバムタイトルは『あなたと明日をつなぐ花』。

次回のインタビューでは、このニューアルバムについてたっぷり語っていただきます。

2022年10月10日,、大手町三井ホールで約3年ぶりに開催されたソプラニスタ木村優一のリサイタル「歌う喜び ソプラニスタ木村優一 2022年オータムコンサート」より

2023年9月3日(日)
ソプラニスタ木村優一 2023年CD発売記念コンサート

『あなたと明日をつなぐ花』
会場:
渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール

開演|15:30

★ チケット料金
一般:6,000円 高校生以下:3,000円

詳しくは:キャピタルビレッジ



プロフィール

木村優一|Yuichi Kimura

ソプラニスタ、クラシカル クロスオーバー歌手。
東京藝術大学音楽学部声楽科卒業、聖徳大学大学院博士前期課程を修了、2008~2009年イタリアにて研鑽を積む。
2016年 クラウンレコードより「MY WORLD~奇跡の声~」でCDデビュー。            
2018年の初演より現在まで再演されている、千住明氏が音楽監督を務める舞台「蜜蜂と遠雷」でABC-Zの橋本良亮、三浦大知、家入レオ、中山優馬らと共演。
2018年徳間ジャパンコミュニケーションズよりCD「Is This Love?」を発売。
2022年「歌う喜び ソプラニスタ 木村優一 オータムコンサート」で榊原大氏らと共演。
テレビ東京「THEカラオケ★バトル」などに出演。
1000万人にひとりの奇跡の男性ソプラノ(ソプラニスタ)木村優一の限りなく透明な声は“サファイアボイス”と称され、今後も天から授かりし声を生かし心に残る歌を歌い続ける。
また、アーティスト活動と並行してNPO法人音楽で日本の笑顔をに従事し、スマイル合唱団青春ポップス合唱団や被災地での音楽を通じたボランティア活動を続けている。
FM熊本 被災地支援番組「木村優一みんなスマイルLet’s Sing! (唄わんかい!)」毎週金曜日放送中

URL : https://www.purehearts.co.jp/kimura/



関連記事

  1. この記事へのコメントはありません。