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ニュース:ウクライナ国立バレエ(旧キエフ・バレエ)記者会見 戦禍でもウクライナのバレエ芸術を守り次世代に繋げる(2023年8月4日)



2023年8月4日(金)
ウクライナ国立バレエ(旧キエフ・バレエ)記者会見

ウクライナ国立バレエ(旧キエフ・バレエ)記者会見 戦禍でもウクライナのバレエ芸術を守り次世代に繋げる

 現在来日公演を行っているウクラナ国立バレエ。昨年の夏に来日した際には「奇跡の来日」として大変話題となった。現在もロシアの侵攻は止まず、毎日空襲警報の鳴る状況下でありながらも意欲的なプログラムで来日公演を行っている。この冬12月~1月の来日公演決定の発表がされたばかりで、冬公演に関する記者会見を開いた。冬公演では、日本初披露作品のほか、夏公演で出演したダンサーが冬の全幕公演で日本初主演デビューなどを行う。登壇したのは、寺田宜弘(ウクライナ国立歌劇場バレエ芸術監督)、ニキータ・スハルコフ(プリンシパル)、アナスタシア・シェフチェンコ(プリンシパル)、カテリーナ・ミクルーハ(ソリスト)の4名。

日本の義援金で舞台美術を一新、新作の制作も

芸術監督:寺田宜弘                        プリンシパル:ニキータ・スハルコフ

 日本からの義援金が1700万円あまり集まった。この義援金で、新作に取り組むことができたと芸術監督の寺田は言う。具体的にはジョン・ノイマイヤー振付の『スプリング・アンド・フォール』、ハンス・フォン・マーネン振付の『ファイブ・タンゴ』がレパートリーに入った。『ファイブ・タンゴ』は今夏の「Thanks Gala 2023」にて日本で初お目見えされた。さらに『ジゼル』の舞台セットの一部を新しく製作したとのことでこの『ジゼル』はこの冬の公演で披露される。寺田は「今在籍している若い団員は、みな愛国心が強く、自国の芸術を愛している。戦争はいつか必ず終わる。その時にウクライナの芸術が失われてしまってはいけない。これまで以上にウクライナのみなさんにウクライナのバレエを
愛してもらえるよう彼らと共に創作するのは幸せ」と語る。また、新作に取り組む理由を次のように述べた。「残っている団員たちに夢を与えなければならない。ウクライナの古典バレエとヨーロッパの創作バレエをひとつにして、いつか新しいウクライナのバレエが生まれると思う」。実際、ハンブルク・バレエに団員が招かれた際、共にレッスンして帰国してからは団員たちの踊りに変化が見られたという。

戦禍のキーウで踊り続ける団員たち

プリンシパル:アナスタシア・シェフチェンコ                  ソリスト:カテリーナ・ミクルーハ

 現在、キーウの国立歌劇場ではバレエ公演が週に2回、オペラ公演が週に2回行われている。毎日空襲警報が鳴る中、ダンサーはレッスンを続け、キーウの市民たちは劇場へと足を運ぶ。スハルコフは「どこがとははっきりはわからないけれど、演じる役の中には自分自身が入っているから、戦争の影響はあると思う。ウクライナのバレエを守るのは自分たちの使命と思っている」と語った。シェフチェンコは「進行が始まって国外に出たが戻ってきた。自分の将来はどうなるか不安だったけれど、バレエが心の支えとなり、すべてを乗り越えることができた。今日本にいて安全だけれど、家族はウクライナにいるので心配しない日はない」と複雑な心境を話した。ミクルーハは「アムステルダムに行き、オランダ国立バレエに1年いたが戻ってきた。ウクライナが故郷ということもあるが、ウクライナ国立バレエのレパートリーが好きなことと、良き指導者のもとで、より良いバレリーナに成長したいと思っている」と語った。

ウクライナ国立バレエにとっての日本公演

 寺田によれば、日本公演を行うことができるのが団員たちの喜びになっているという。彼らにとっては夢のようなことなのだそう。今まで以上に大事にしていきたい、と語った。実際、会場に集う日本のお客さんはとてもあたたかく、というかパッションがあり、熱心に応援していて、何度も行われるカーテンコールではスタンディング・オベーションで彼らを称えている。

記者会見とリハーサルの様子

冬の公演は3つの全幕作品を上演『ドン・キホーテ』『雪の女王』『ジゼル』

 12月に再びダンサー50名、指揮者、オーケストラなどが60名の総勢130名で来日する。上演するのは『ドン・キホーテ』『雪の女王』『ジゼル』の3作品。『ドン・キホーテ』は昨冬の来日公演で上演し、大変好評だった演目で再演となる。
『冬の女王』は2016年、芸術監督だったアニコ・レフヴァイアシヴィリがアンデルセン童話を元に振り付けたカンパニーのオリジナル作品だ。日本初演となる。ウクライナでは冬の風物詩として親しまれている。大人から子どもまで楽しめる作品でファンタジックな舞台に期待が高まる。そして日本からの義援金を使用して舞台セットを新しくした『ジゼル』も上演。幻想的なバレエ・ブランになることだろう。劇場へ足を運び、彼らのパフォーマンスを鑑賞することが彼らを勇気づけ励ますことになる。誇り高いウクライナ国立バレエの真髄を堪能し彼らがますますパワーアップしていけるよう応援したい。

画像|光濫社


2023年12月23日(土)〜2024年1月14日(日)
ウクライナ国立バレエ『雪の女王』(日本初演)『ドン・キホーテ』『ジゼル』
会場:日本各地

詳しくは:光濫社



エディター・ライター 出版社勤務を経てフリーランスのエディター、ライターとして活動中。 クラシック音楽、バレエ、ダンスを得意ジャンルとする。

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