ウィーン・オペレッタの最高峰、シュトラウスII世の『こうもり』〜あらすじや曲を紹介〜
4.オペレッタ『こうもり』の見どころ~ワルツ王の香り高い旋律~
オペレッタ『こうもり』は、幕が上がった瞬間から目が離せません!
魅力的な音楽がちりばめられていて、特に「ワルツ王」と呼ばれたシュトラウスII世によるウィンナ・ワルツの旋律は、まさに極上のシャンパンのように芳醇でなめらか。歌手の見せ場の美しいアリアが充実し、「シャンパンの歌」のような誰にでも親しみやすい合唱曲や重唱曲も数多く含みます。
4.1.序曲|Ouverture
オペレッタ『こうもり』の有名な序曲。テレビなどで聴いて、この序曲は知っているという方も多いと思います。交響楽団や吹奏楽団のコンサートなどで、単独で演奏されることも多い人気曲です!
耽美的で官能的、ウィーンのエッセンスを詰め込んだような序曲です。流麗なワルツやポルカなどの舞踏音楽が、物語の各シーンを予告しながら全体を紡いでいます。高揚感と陶酔感に浸り、一気に『こうもり』の世界観に引き込まれることでしょう。
オペレッタ『こうもり』の序曲は、ウィーン楽友協会のニューイヤー・コンサートのプログラムに上ることもあります。「黄金のホール」に響く、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の輝かしい音色で聴く序曲は格別の響きです!
4.2.ロザリンデのアリア「故郷の調べは(チャルダーシュ)」|Klänge der Heimat(Czardas)
オペレッタ『こうもり』第2幕。本当にハンガリー人なのか疑われたロザリンデは、ハンガリーの民俗舞曲チャルダーシュに乗せて、故郷への思いを歌います。この曲は、オペレッタ『こうもり』独唱曲の最大の見どころです。
前半はゆったりとしたエキゾチックなメロディをたっぷりと聴かせ、後半は一転して速いテンポに変わります。チャルダーシュはハンガリーから伝わった舞踏音楽で、ウィーン宮廷は一時チャルダーシュ禁止令を出したほど、19世紀のウィーンで大流行しました。それほど聴く人の心を熱狂させる音楽なのです!
オペレッタ『こうもり』は、ロザリンデとアデーレの2人のソプラノが活躍しますが、どちらも歌うのが非常に難しい役どころです。ロザリンデ役は、充実した中高音で豊かに情感を歌い上げる、ソプラノ・リリコという声質の歌手が歌うことが多くなっています。ですがチャルダーシュは、装飾的な歌いまわしを多用する上、ソプラノ・リリコのレパートリーであまり見られない高音を最後に決めなければなりません。チャルダーシュは高い声楽技術を要求する難曲です。
4.3.舞台上でコンサート!第2幕のガラ・パフォーマンス
8分ごろ:ロッシーニ、オペラ『セミラーミデ』の二重唱、24分40秒ごろ:ヴェルディ、オペラ『椿姫』の二重唱、30分ごろ:『埴生の宿』サザーランド独唱
オペレッタ『こうもり』第2幕。夜会の催しという設定で、シュトラウスII世の舞踏音楽を演奏してワルツやバレエを踊ったり、ゲスト歌手によるコンサートといった形式の演出を挟むことがあります。演奏する楽曲は、『こうもり』の筋書きとは関係ないものです。
大物歌手が登場するなどして、このガラ・パフォーマンスが話題になることがよくあります。参考動画は、オーストラリア出身のソプラノ、ジョーン・サザーランドのオペラ引退公演のもの。テノール歌手ルチアーノ・パヴァロッティとの二重唱やサザーランドの独唱が収録されています。
4.4.大合唱「シャンパンの歌(乾杯の歌)」|Im Feuerstrom der Reben
1時間29分ごろ:第2幕、ブリギッテ・ファスベンダー(オルロフスキー)、ジャネット・ペリー(アデーレ)、エーベルハルト・ヴェヒター(アイゼンシュタイン)
2時間31分ごろ:第3幕、パメラ・コバーン(ロザリンデ)
オペレッタ『こうもり』の有名な合唱曲「シャンパンの歌(乾杯の歌)」。華やかで楽しい雰囲気なので、コンサートのアンコール曲として使われることも多い曲です。
第2幕、夜会の最高潮でオルロフスキーの掛け声で始まり、アデーレ、アイゼンシュタインと歌いつなぎます。お酒の王様シャンパンを讃え、飲んで、今夜は楽しもうという享楽的な内容!
しかしその後、ファルケはこう歌います。「皆で姉妹と兄弟の大きな絆を結びましょう。誰もが兄弟、誰もが姉妹、親しい仲になりましょう、いつまでも変わらずに。」復讐のために罠を仕掛ける張本人のファルケ。彼がこんなこと歌うのは矛盾しているように見えますが、本当はとうの昔にアイゼンシュタインの悪ふざけを許していたということでしょう。
そして第3幕のフィナーレでは、ロザリンデが同じ旋律を「全てシャンパンの泡のせい」と歌って、このオペレッタを締めくくります。
この記事へのコメントはありません。