ウルトラシリーズとクラシック音楽② 音楽家 冬木透×ウルトラマンA51話「命を吸う音」×J.S.バッハ『無伴奏ヴァイオリン・パルティータ』 シン・ウルトラマン便乗短期連載
脅威となる音楽
この回の音楽の主な役どころは、お母さんが押し付けてくるものであり、怪獣が人々から生命力を吸うための道具という、攻撃としての音楽でした。少年の母を魅了し、人々の「命を吸う音」だったわけです。
音楽が時に人を脅かすというのはフィクションでも古くからあります。ギリシャ神話では鳥人間セイレーンが船を歌で難破に誘い、ハーメルンの笛吹き男は子供たちを惹きつけ攫っていきます。近現代でも、『ドラえもん』のジャイアンの歌が友人たちを苦しめたり、『ポケットモンスター』には相手を一撃で倒してしまう「ほろびのうた」が登場したり、音楽に恐ろしい力を見出す例がたくさんあります。
メタル音楽を題材とした漫画『デトロイト・メタル・シティ』の一場面より
しかし、今回のお話ではギーゴンが倒され人々に生命力が戻っていくときにも音楽が使われ、結末でも行き過ぎた押し付けが悪く、自然体なら楽しんでくれるだろうと、音楽を恐ろしいものとして描いた一方でケアもなされています。一方的に悪者にはしたくなかった意図がうかがえます。
劇中のお母さんも、結果的に少年を追い詰めてしまいましたが、彼女自身は音楽に亡夫への想いや、彼の栄光を見ていたのかもしれません。
エピソード自体は行き過ぎた子供への押し付けへの警句がメインテーマと思われます。しかし、音楽が秘める力は大きなもので、それは使い方ひとつで、人を幸せにも不幸にもしうる。そんな警鐘が秘められているようにも感じられました。
さて、短期連載の次回、最終回には、ウルトラマンシリーズでも歴代最強の怪獣が登場するエピソードを紹介します。そこで音楽が持つ重大な役割とは!?お楽しみに!
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