ニュース:シュツットガルト・バレエ団日本公演記者会見 7月29日(月)

11月、フルカンパニーとしてシュツットガルト・バレエ団が6年ぶりに来日する。

左からフリーデマン・フォーゲル、エリサ・バデネス、タマシュ・デートリッヒ芸術監督、マッケンジー・ブラウン、ガブリエル・フィゲレド
©Shoko Matsuhashi

上演するのは世界中で大人気のドラマティック・バレエ作品である『椿姫』『オネーギン』。

記者会見には、芸術監督のタマシュ・デートリッヒと11月公演に出演するプリンシパルのフリーデマン・フォーゲル、エリサ・バデネス、若手のホープのマッケンジー・ブラウンとプリンシパルに昇進したばかりのガブリエル・フォゲレドが登壇した。

6年ぶりとなるフルカンパニーの来日公演

フリーデマン・フォーゲル ©Shoko Matsuhashi

 デートリッヒは、冒頭「6年ぶりにフルカンパニーで来日できることをとても嬉しく思っています」と晴れやかに挨拶した。実は、2022年にシュツットガルト・バレエ団の来日公演が行われる予定だったのだがコロナ禍のため、急遽プリンシパルたちを中心としたガラ公演「シュツットガルト・バレエ団の輝けるスターたち」に変更して行われたのだった。この公演に関して「当時(公演を行うのは)難しい時期でしたがバレエは変わらずに続いていることを世界に発信するべきと考えました」とデートリッヒは説明した。そして日本でも人気の高いフォーゲルとバデネスと並び登壇している若いスターたちについて「ガブリエルは(2022年ガラ公演の)メンバーに選ばれていましたが直前にコロナの検査で陽性となり来日できなくなったのです。彼は来シーズンからプリンシパルです。マッキンジーも今シーズンからプリンシパルとして活躍しています」と紹介した。

ドラマティック・バレエの代表作『椿姫』『オネーギン』を初演したのは実はシュツットガルト・バレエ団

エリサ・バデネス ©Shoko Matsuhashi

今回の来日で上演する2作品は世界中で熱狂的に愛されているドラマティック・バレエ作品。『オネーギン』はシュツットガルト・バレエ団を世界のトップカンパニーに育て上げたジョン・クランコの代表的な振付作品で、日本では1973年に初演された。プーシキンの小説をもとにしており、19世紀初頭のロシアを舞台とし、田舎の地主の貴族の娘タチヤーナとサンクトペテルブルクで遊蕩生活を送っている貴族オネーギンのすれ違いの恋を描く悲劇。原作が同じチャイコフスキー作曲のオペラ『エフゲニー・オネーギン』の曲を使用せず、チャイコフスキーの他の作品から構成されている。
ジョン・ノイマイヤー振付の『椿姫』はアレクサンドル・デュマ・フィスの小説をもとにしており、高級娼婦マルグリットと青年アルマンとの悲恋が描かれる。ヴェルディによる同名のオペラ作品があるが、こちらもオペラの音楽は全く使用せず、全編ショパンのさまざまな作品が使用されている。

マッケンジー・ブラウン ©Shoko Matsuhashi

今回の上演に際して、ノイマイヤーが来日し演出をサポートするとのこと。

ドラマティック・バレエを生み出し、上演した伝説のカンパニー、伝説の振付家が日本に集結する、まさに歴史的な出来事が実現する。

ベテランのフォーゲルとバデネスが語る『オネーギン』

ガブリエル・フィゲレド ©Shoko Matsuhashi

バデネスとフォーゲルは2人とも2作品の初日に主役を踊る。ともにカンパニーを代表するプリンシパルで、これまでに2作品を何度も踊ってきている。今夏開催されている「世界バレエフェスティバル」でもこの2人は『椿姫』の第1幕のパ・ド・ドゥを踊った。フォーゲルは「(秋の公演の」予告編のように踊ります。『椿姫』『オネーギン』、どちらも大切にしています。シュツットガルト・バレエ団ならではの上演を楽しみにしていてください」と語った。クランコとノイマイヤーとの違いについて問われた際には、「全く違いますがある意味、似ていると思います。どちらも言葉ではなく動きを通して感情やストーリーを伝える天才です。複雑なストーリーであっても動きで表現できるのです」と答え、さらに『オネーギン』で主役を何度も踊っていることについて「オネーギンの人生を舞台上で生きると考えています。100パーセント満足することはなく、何度踊ってももう一度踊りたいという気持ちになります」と話す。若い頃にはレンスキーを踊り、“レンスキー=フォーゲル” という絶大な人気を誇った彼がある時期から主人公のオネーギンを踊るようになり、苦悩や後悔といった踊りで表現するのが難しい感情を追求し、自分のものとしていった。その過程を見てきているファンには、今回の上演は特に感慨深いのでは。そしてフォーゲル&バデネスペアによる初日に、ブラウンがオリガ役、フィゲレドがレンスキー役で登場する。

バデネスも「タチヤーナはすごく若く、2時間の間に夢を追う女の子から成熟した女性へと変化するのを表現しなければならないのは大変です。女性が長い旅をするというストーリーを表現しなければなりません」と、ドラマティック・バレエに求められる心情の変化を表現することの難しさを語った。

デートリッヒが期待するブラウンとフォゲレド

タマシュ・デートリッヒ芸術監督 ©Shoko Matsuhashi

ブラウンとフォゲレドをプリンシパルに昇格させたことについてデートリッヒは「ハートの問題」と言った。「芸術監督の仕事は若い才能を見出し育てること。カンパニーの一員として地に足をつけ踊っていく準備ができているかもみます」との言葉を受け、ブラウンは「クランコのレガシーを継承していく責任を感じます」、フィゲレドは「タマシュに信頼されていることが私にとってモチベーションを高める十分な材料になります」と初々しさを感じさせるコメントをした。

デートリッヒはコロナ禍でダンサーたちに希望を忘れさせないようにするために、行政に働きかけ、少しずつ人数を増やしてレッスンを再開していったこと、ライブ・ストリーミングで公演を公開したこと、さらに若い振付家を育てており彼らの発表の場も設けていることなどを語り、伝説のカンパニーは進化を続けていることを明らかにしてくれた。

その最新の姿を今秋、11月に目撃することができる。


シュツットガルト・バレエ団 2024年日本公演
「オネーギン」全3幕

開演
2024年11月2日(土) 14時
11月3日(日) 14時
11月4日(月・祝) 14時

「椿姫」プロローグ付全3幕
開演
2024年11月8日(金) 18時30分
11月9日(土) 14時
11月10日(日) 14時
会場:東京文化会館
チケット料金:26,000円~9,000円

詳しくは:NBS

エディター・ライター 出版社勤務を経てフリーランスのエディター、ライターとして活動中。 クラシック音楽、バレエ、ダンスを得意ジャンルとする。

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