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プレビュー:英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2024/25 映画『不思議の国のアリス』1月17日(金)~

ミュージカルファンにも見てもらいたい
英国ロイヤル・バレエのヒット作


鳴り物入りで誕生した全幕バレエ
世界中で大ヒット

英国ロイヤル・バレエが誇る人気作品『不思議の国のアリス』がスクリーンに登場します。

初演は2011年、実に16年ぶりに全幕バレエの新作発表ということで大変注目を集めました。公演は大成功で、その後、カナダ国立バレエ、オーストラリア・バレエ団、ミュンヘン・バレエ、新国立劇場バレエ団がレパートリーに取り入れています。英ロイヤル・バレエ団がこの作品を引っ提げ来日した際にはあまりの人気で追加公演が決定したほど、大人気の作品なのです。

原作はルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』、振付は『パリのアメリカ人』等、バレエに限らずミュージカル作品の振付も手がける売れっ子の英国人振付家クリストファー・ウィールドン。台本は英国ナショナルシアターで活躍するニコラス・ライト、美術は『回転木馬』『アイーダ』『ゴースト・オブ・ユートピア』『メリー・ポピンズ』『ワンス』と数々のミュージカル作品でトニー賞の最優秀装置デザイン賞を受賞しているボブ・クロウリー、音楽は映画『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』『SINGシング ネクストステージ』などを手がけているジョビー・タルボットが担当。オールブリティッシュ・スタッフで満を持して世に出した作品なのです。実はこのウィールドン、クロウリー、タルボットのトリオは『不思議の国のアリス』ののち、英ロイヤル・バレエの他の作品『冬物語』『赤い薔薇ソースの物語』でもタッグを組んだ黄金のトリオです。

ミュージカル、映画、バレエと舞台芸術を席巻するスタッフたちが作った『不思議の国のアリス』は、物語を橋渡しにしてバレエとミュージカルを結びつけている、とウィールドンは語っています。『不思議の国のアリス』は言葉遊びが特徴的で舞台化は難しいと言われてきました。彼らは最新の技術を駆使し、プロジェクション・マッピングによる奇想天外なビジュアルを生み出しました。「フレッシュで革新的」とウィールドンが言うように、見たことのないファンタスティックな世界が広がっています。またアリスは原作の少女から少し年齢を上げて15歳に設定。ショートヘアで薄い紫のドレスを着てほとんど舞台に出ずっぱりで次々現れる奇抜なキャラクターたちと共にキュートな魅力を振りまきます。また単にファンタジックなだけでなく、原作の持つちょっと残酷なブラックな側面もちゃんと残しているところが、大人も魅了しています。

世代交代したキャストも素晴らしい

初演から早くも10年以上経ち、キャストにも変化が見られます。初演と変わらずに超絶テクニックを披露しているのは、手品師/マッドハッター役のスティーヴン・マックレーです。彼のタップダンスは超一流! お客さんもよくわかっていて会場が沸いている様子が伝わります。

初演時のアリスは、当時唯一の女性プリンシパルだったローレン・カスバートソンが演じました。そのアイドルのような品がありかわいらしいビジュアルにみな目が釘付けになったのでした。そのカスバートソンが今回、アリスの母/ハートの女王を演じておりこれも話題の一つです。第3幕での彼女のパフォーマンスは大喝采を浴びていました。今回、初演時にアリスの母/ハートの女王を演じたゼナイダ・ヤノウスキーがカスバートソンに指導し、第3幕の前に二人の対談があります。とても心温まる雰囲気で、役を踊り継いでいく伝統を知ることができます。

そして今回主役のアリスを務めるのはフランチェスカ・ヘイワード。彼女は『赤い薔薇ソースの伝説』の初演ダンサーであり、映画『キャッツ』で白猫ヴィクトリアを演じたことで広く知られています。ヘイワードのアリスもとてもキュート、まるで彼女ために振り付けられたかのような素晴らしいパフォーマンスを披露してくれています。庭師ジャック/ハートのジャックにはウィリアム・ブレイスフルが初めて挑戦しています。

登場人物が多くそれぞれのキャラクターは奇抜な出立ちで個性が強い、舞台はバレエ作品では考えられないほどカラフルな色の洪水、など情報過多で受け身になりがちなこの作品。でもすごい勢いで舞台が進行している中、やはり個々の踊りは端正で正確、とても美しいのです。勢いに流されることはありません。それぞれのソロ、アリスとジャックのパ・ド・ドゥ、ハートの女王のコミカルな演技、マッドハッターのタップダンス等々、それぞれが素晴らしく、ダンスに注目してみると、やはり超一流のカンパニーでないと成立しない作品であることを感じます。

ベストなキャストで繰り広げる不思議な世界、発見もたくさんあります。ぜひ劇場でお楽しみください。


1月17日(金)~1月23日(木) TOHOシネマズ日本橋他 一週間限定公開
英国ロイヤル・オペラ・ハウスシネマシーズン2024/25『不思議の国のアリス』

開演
各劇場による

チケット料金
一般・シニア 3,700円
学生・小人 2,500円
詳しくは:東宝東和

エディター・ライター 出版社勤務を経てフリーランスのエディター、ライターとして活動中。 クラシック音楽、バレエ、ダンスを得意ジャンルとする。

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