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プレビュー:6月16日(金)公開~映画『シンデレラ』英国ロイヤル・オペラ・ハウスシネマシーズン2022/23 TOHOシネマズ日本橋、ほか

2023年6月16日(金)〜22日(木)
英国ロイヤル・オペラ・ハウス
シネマシーズン2022/23

『シンデレラ』

初演75周年を迎え舞台装置と衣裳を一新

ファンタジックな世界観&最高のハッピーエンド

大人が楽しめる極上の童話

英国ロイヤル・バレエが誇るフレデリック・アシュトン版の『シンデレラ』が装いを新たにしてシネマシーズンに登場します。

今年は10年ぶりの『シンデレラ』上演で、初演から75年を迎える節目の年にあたります。舞台装置と衣裳を新たにして現代的に生まれ変わりました。

舞台装置は、『となりのトトロ』舞台版の美術デザイナー、トム・パイが手がけました。舞台版の『となりのトトロ』は今年のローレンス・オリヴィエ賞で最優秀作品賞、最優秀演出賞、最優秀舞台美術賞、最優秀衣裳デザイン賞、最優秀音響デザイン賞と最多の6部門を受賞しています。

トム・パイが作り出したシンデレラの舞台は、この上なくファンタジック! 仙女の登場、春夏秋冬の精が踊る際の花のモチーフ、かぼちゃが馬車に変身するところなどなど、舞台で繰り広げられる童話の世界に引き込まれます。

わかりやすく現代的、かつ効果的な演出

仙女が魔法をかけるところなど随所でプロジェクションマッピングが効果的に使用されており、最近バレエの舞台でもプロジェクションマッピングが使われていますが、特にこの舞台ではファンタジー性の演出に役立っていて、テクノロジーを駆使したアニメの映像にも負けない夢の世界を実現しています。

シンデレラが胸をときめかせ出かける舞踏会は、宮殿内の庭で行われています。大広間での舞踏会ではなくガーデン・パーティという設定で、時代を特定することなくおしゃれです。

パーティに集う人たちはドレスを、妖精たちは白いチュチュをつけており、対比が視覚的にわかりやすくなっています。特にシンデレラと王子のパ・ド・ドゥでは、舞台上は白い衣裳をつけた人(妖精)だけで、宮廷の庭で王子と踊るシンデレラは夢心地でいることがわかります。

最高のキャスティング

シンデレラは継母や姉たちにいじめられる毎日でもめげずに健気に生きている中、姉たちが舞踏会へ行く準備ではしゃいでいるのを見て、「私だって行きたい」と少女らしい切ない思いを抱いて……、といった過程を経てハッピーエンドが導かれるわけですが、この舞台ではシンデレラの悲しい境遇は強調されていません。

全編舞台美術が美しく幻想的であるということに加え、主役のマリアネラ・ヌニェスの天性の明るさによるのかもしれません。

ヌニェスは、どの瞬間を切り取っても最高に美しいバレリーナで、その存在感は圧倒的です。また、王子を踊るワディム・ムンタギロフも圧巻。

王子そのものでこれぞバレエ鑑賞の楽しみ、という眼福さ。二人が立って見つめあっているだけでその美しさに魅了されます。英国ロイヤル・バレエの看板スターのオーラは並外れています。アシュトン版ではシンデレラが踊るシーンが多いのも魅力で、完璧なバレエを見せてくれます。

仙女を踊るのは金子扶生。デコルテから腕にかけてのラインの美しさ、儚げであるけれど凛とした佇まいなど、現実世界に生きるのではない存在の表現が素晴らしいです。

二人の意地悪な姉にはギャリー・エイヴィスとアクリ瑠嘉が配役されています。二人の掛け合い、コミカルな意地悪さ、など軽妙で、特にアクリ瑠嘉は大健闘しています。他に道化に中尾太亮が配役されています。

装いを新たにした『シンデレラ』、美しいプロコフィエフの音楽に乗せてひととき、夢の世界へと誘ってくれます。

極上のハッピーエンドを体験しに映画館へ行きましょう。

画像|©2023 Tristram Kenton


2023年6月16日(金)〜22日(木)
英国ロイヤル・オペラ・ハウスシネマシーズン2022/23 『シンデレラ』
会場:TOHOシネマズ日本橋、ほか

開演:上演劇場による

チケット料金:一般3,700円、学生2,500円

詳しくは:東宝東和



エディター・ライター 出版社勤務を経てフリーランスのエディター、ライターとして活動中。 クラシック音楽、バレエ、ダンスを得意ジャンルとする。

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