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プレビュー:新国立劇場オペラ『ウィリアム・テル』11月20日(水)〜11月30日(日) 新国立劇場オペラパレス

新制作、フランス語版日本初演
上演時間5時間、ロッシーニ最後のオペラ

誰もが知るあの序曲から始まる
物語の全貌が明らかに

2024/2025シーズンの幕開け『夢遊病の女』と同様、2番目に上演する作品も新制作となります。

音楽の教科書に長らく掲載され、運動会の徒競走でもほぼ確実に流れる日本人にお馴染みの『ウィリアム・テル序曲』。この序曲は、実はオペラの序曲のこと、ですから本編が続きます。それがオペラ『ウィリアム・テル』です。上演時間は5時間にも及ぶ大作で、作曲時間が驚異的に短いロッシーニが5週間(それでもかなりの短期間)かけて作曲、最後のオペラ作品となりました。1829年に初演されました。最後に相応しく、音楽史的にはこの作品はロマン主義的グランド・オペラの幕開けと言われています。グランド・オペラとは登場人物が多く、オーケストラも大編成、衣裳や舞台美術は大掛かりでスペクタクルな作品のこと。鑑賞する側も期待が高まり、力が入ります。

ウィリアム・テルの物語とは
見どころ

14世紀スイス・ウーリ州の山村が舞台です。この地域はオーストリアの圧政下にあります。長老の息子アルノルドはハプスブルク家のマティルドとの身分違いの恋に悩んでいます。総督ジェスレルはアルノルドの父メルクタールを自分の部下を殺した者を匿ったことで咎め、殺してしまいます。アルノルドは父の仇討ちをすることを決意、マティルドとも別れます。

総督ジェスレルは村民に、広場のトロフィーに被せた自分の帽子に敬礼するよう強要します。ウィリアム・テルと息子のジェミは従わないため、ジェスレルはテルに息子の頭に載せたりんごを弓で射ることができれば許すと言います。見事に成功しますが、失敗したら第二の矢でジェスレルを射るつもりだったとテルが言ったことで、テルは逮捕されてしまいます。

アルノルドはウーリの他、2州の村民たちと共に立ち上がり、ジェスレルたちに抵抗します。そしてテルがジェスレルを弓で倒します。最後は、アルノルドはマティルドとも再会でき、みなでスイスの自由を喜びます。

テルが息子ジェミの頭の上のリンゴを見事に射るシーンは、アリア「じっと動くな」も歌われ、オペラでも見どころのひとつです。見逃すことはまずありませんが、ドキドキしながら見守りましょう。ウィリアム・テルは権力に立ち向かう勇敢な英雄として描かれます。

現代にも通ずるテーマに着目

指揮:大野和士                  演出:ヤニス・コッコス

この作品は、オーストリアの暴力的な支配で抑圧されているスイスの民衆の反乱を描いています。権力による支配に対して反乱する民衆、という構図は悲しいけれどもいつの時代にも存在します。演出家のヤニス・コッコスは、今回の舞台は、時代を特定しない演出にしています。自由と尊厳を求める人間のナチュラルな希求を丁寧に描き出します。

コッコスは、2021年新国立劇場の『夜鳴きうぐいす/イオランタ』を演出し美術も担当しました。その時はコロナ禍で来日がかなわず、リモートで制作し上演したのでした。芸術監督の大野和士はじめ、新国立劇場のスタッフとも信頼関係を築いており、今回再びコラボレーションすることになりました。

タフで実力のある歌手が揃う

ウィリアム・テル:ゲジム・ミシュケタ            アルノルド:ルネ・バルベラ       マティルド:オルガ・ペレチャッコ

5時間に及ぶ長尺な作品は演じる方も気力・体力が求められます。豪華なキャストが揃いました。

ウィリアム・テルはアルバニア出身のゲジム・ミシュケタが務めます。2022年の『椿姫』のアルマンの父、ジェルモンで新国立劇場に登場しています。アルノルド役は2020年『セビリアの理髪師』のアルマヴィーヴァ伯爵、2021年の『チェネレントラ』のドン・ラミーロで新国立劇場の舞台に立ったルネ・バルベラです。二人とも見るからにタフそうです。

そしてマティルドにはオルガ・ペレチャッコがキャストされています。2017年『ルチア』のタイトルロールで新国立劇場に登場しています。

ジェスレルには妻屋秀和が登場します。

今回は新国立劇場に登場したことのある、そしてロッシーニを得意とする歌手が集まり、新制作に臨みます。

またアルプスの雄大な自然を表現する美しい音楽、村民たちの力強い合唱、フィナーレは聴きどころですのでご注目ください。

日本では1983年に日本語版が藤沢市民オペラによって上演されて以来の上演となります。ロッシーニはイタリアの作曲家ですが、パリ・オペラ座の委嘱で作曲したので台本はフランス語、本来上演もフランス語で歌われます。このフランス語版は日本初演です。

指揮は大野和士、オーケストラは東京フィルハーモニー交響楽団です。

『ウィリアム・テル』の上演はとてもレアで貴重な機会です。ぜひ体験してみてください。


公演情報
11月20日(水) 16:00
  23日(土・祝) 14:00
  26日(火) 14:00
  28日(木) 14:00
  30日(土) 14:00

会場: 新国立劇場オペラパレス

チケット料金:31,900円 ~1,650円

詳しくは:新国立劇場

エディター・ライター 出版社勤務を経てフリーランスのエディター、ライターとして活動中。 クラシック音楽、バレエ、ダンスを得意ジャンルとする。

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