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プレビュー:2022年10月12日(水)、13日(木)、15日(土)、16日(日)東京バレエ団『ラ・バヤデール』

2022年10月12日(水)、13日(木)、15日(土)、16日(日)
東京バレエ団『ラ・バヤデール』
古典バレエの美しさ、魅力がいっぱいの傑作

インドの寺院を舞台に男女3人が繰り広げる愛憎劇

『ラ・バヤデール』は、クラシック・バレエ生みの親、マリウス・プティパが振り付けた作品です。プティパはほかに『白鳥の湖』、『眠れる森の美女』、『くるみ割り人形』、『ドン・キホーテ』などを振り付けました。

舞台はインドの寺院。この作品のヒロイン、神に仕えるバヤデール(舞姫)であるニキヤと戦士ソロルはひそかに愛し合っています。実はソロルは、ニキヤがいるのに富と権力を持つラジャーの娘ガムザッティとの婚約を受諾してしまいます。
この三角関係を、お互いがお互いの存在を知るところとなり、ソロルとガムザッティの婚約披露の宴でついに悲劇が起きてしまうのです。

photo:Kiyonori Hasegawa

『ジゼル』は青年貴族とその婚約者、そして純朴な村娘、『アイーダ』は軍人と王女、そして王女付きの女奴隷と、身分に差がある女性二人が一人の男性を巡って起こる三角関係の話は多いのですが、『ラ・バヤデール』のヒロイン、ニキヤはとても気丈な女性で、ガムザッティから身をひくよう迫られても拒絶、彼女に刃を向けますし、毒殺される時に渡される解毒剤も毅然と拒否します。
ただ苦悩したりメソメソ泣いたりしているだけではないのです。新しい時代の女性像であることを感じさせます。

物語は、聖職者でありながらニキヤに横恋慕する高僧の陰謀なども絡み、その生々しさは半端ない状況です。とうとう神様の怒りを買ってしまい、最後は神殿崩壊という大スペクタクルなシーンで終わります。

神殿崩壊を復活させたマカロワ版

実はこの作品の結末にはさまざまなバージョンが存在します。『白鳥の湖』のエンディングにさまざまなバージョンがあるのと同様です。

ニキヤが死んでしまい、失意のソロルはアヘンにおぼれ幻覚を見ます。それが「影の王国」と呼ばれるシーンです。天に召されたニキヤや他のバヤデールたちが影となって現れます。この白いチュチュを着たバヤデールたちが緩やかな坂をゆっくりと降りてくる青白く幻想的なシーンは、これぞバレエ、という息を呑む静謐な美しさです。一糸乱れぬバヤデールたちの踊りに注目です。

東京バレエ団『ラ・バヤデール』2009年公演ハイライトpart2 「影の王国」から。Part1はこちら

この後、もともとはガムザッティとソロルの結婚式、天の怒りによる神殿崩壊と続くのですが、いつの間にかなくなってしまいました。
ナタリア・マカロワというキーロフ(現マリインスキー)・バレエにいたダンサーが西側に亡命し、1980年にアメリカン・バレエ・シアターで『ラ・バヤデール』を振り付け、発表しました。
この版で彼女は「寺院崩壊」のシーンを甦らせました。これ以降生まれた新たな演出にも「神殿崩壊」が含まれるようになりました。「神殿崩壊」のシーンは迫力ある大スペクタクルで見応えがあります。
ちなみにパリ・オペラ座がレパートリーとしているヌレエフ版では「影の王国」で終わり、「神殿崩壊」はありません。

東京バレエ団がレパートリーとしているのは、マカロワ版です。

マカロワが絶賛した東京バレエ団の「影の王国」ほか見どころ満載

東京バレエ団は2009年にマカロワ版を初演しました。マカロワ本人が指導に来日し、ダンサーは直接教えを受けることができた、という幸せな経験をしています。この時指導を受け、主役ニキヤを踊った斎藤友佳理は現在東京バレエ団の芸術監督で指導する側になり、同じく初演でニキヤを踊った上野水香は今回もキャストされています。

この作品はコール・ド・バレエ(群舞)がたくさん出てくるのですが、「影の王国」はまさにこのコール・ド・バレエが踊るのです。マカロワは東京バレエ団のコール・ド・バレエを高く評価し、「影の王国」のシーンを絶賛しました。世界でも稀有な美しさの東京バレエ団の「影の王国」をぜひ体験しましょう。

今回は2キャスト組まれています。上野水香(ニキヤ)、柄本弾(ソロル)、伝田陽美(ガムザッティ)と、秋山瑛(ニキヤ)、秋元康臣(ソロル)、二瓶加奈子(ガムザッティ)です。叙情的なパ・ド・ドゥ、優美なソロのヴァリエーション、そしてみんなが大好きなブロンズ像(神の怒りで動き出す仏像の踊り)などが、エキゾチックなインドの寺院を舞台に美しい音楽に乗せて踊られます。

2017年公演でのブロンズ像 メイキング

非常に美しいバレエを堪能できるのですが、頻繁に上演されるわけではありませんのでぜひこの機会をお見逃しなく。


東京バレエ団『ラ・バヤデール』
10月12日(水)、13日(木)、15日(土)、16日(日)
会場:東京文化会館大ホール

開演:12日(水)18時30分、13日(木)13時、15日(土)14時、16日(日)14時
★ チケット料金
3000円〜13000円(13日(木)は平日マチネ料金:2000円〜10000円)
詳しくは:NBS


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エディター・ライター 出版社勤務を経てフリーランスのエディター、ライターとして活動中。 クラシック音楽、バレエ、ダンスを得意ジャンルとする。

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