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プレビュー:英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2023/24『カルメン』9月6日(金)~公開

 映画 英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2023/24『カルメン』

話題のミキエレット演出でプレミエ
現代に生きるカルメン

©2024 Camilla Greenwell _3664

ニュープロダクションのプレミエを
日本で見られる幸せ

Carmen, ©2024 Camilla Greenwell_3441

演出家ダミアーノ・ミキエレットは2015年に『カヴァレリア・ルスティカーナ』『道化師』でオリヴィエ賞を受賞したいま売れっ子の演出家です。キャンプ場での一夜に置き換えたモーツァルトの『コジ・ファン・トゥッテ』、通称「キャンプ・コジ」もミキエレット演出によるものです。新国立劇場のレパートリーになっていて今年も上演されたのでご記憶の方もいらっしゃることでしょう。

大胆な読みかえで、登場人物たちの人間模様、感情の動きなどをあぶり出すミキエレットの演出は斬新で現代的、さりげなく挑発的でもあります。

今回、イギリスで話題になっていたプレミエを日本で経験できるのはとてもラッキーですね。

じわじわとハマるミキエレットが生み出したファムファタール

©2024 Camilla Greenwell_3585

この『カルメン』の舞台は20世紀のスペインの田舎町に設定されています。

登場人物たちは庶民的で生々しさを感じるほどリアルです。それぞれの登場人物のキャラクターがややデフォルメされており、例えばエスカミーリョはグリーンのスーツに身を包み、いかにもなやさ男、カルメンの自由奔放さも強調されており、ホセはいつにも増して冴えない男、広場には荒っぽい労働者がたむろしている……。なんというかこれまでのプロダクションにはない「チンピラ感」が強調されています。決して美しくはなく、実際こんな感じなんだろうなと思ってしまいます。

そんな中で歌われる「花の歌」からは、逆になんの取り柄もないホセの精一杯の純情を感じ、じわじわと心に迫ってきます。

達者な歌手たちだから成功しているプロダクション

©2024 Camilla Greenwell2381

なんといってもカルメン役のアイグル・アクメチーナが素晴らしいです。ロシア出身、弱冠20歳でカルメン役でデビューしたという逸材。まだ20代後半の若さなのですが、若いからこそグラマラスな身体を惜しげもなく晒し挑発的で、男性に依存しない強いカルメンが実現しています。カルメン本人は別にホセのファムファタールのつもりなどなくて、それほど媚びもしない女性なのだと力強い歌唱で迫ってきます。かっこいいのです。

ポーランド出身のピョートル・ベチャワのホセはカルメンに比べやや弱い感じもしますが、それも演出のうちなのかもしれません。

また、英ロイヤル・オペラでは常にそうなのですが、合唱が繊細で効果的に舞台を盛り上げています。

これまでにない新しいカルメンに出会ってください。

9月6日(金)~12日(木)TOHOシネマズ 日本橋ほか1週間限定公開
英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2023/24『カルメン』

開演
各劇場による

チケット料金
一般・シニア 3,700円
学生・小人  2,500円

詳しくは:東宝東和
画像:メイン©2024 Camilla Greenwell_3792

エディター・ライター 出版社勤務を経てフリーランスのエディター、ライターとして活動中。 クラシック音楽、バレエ、ダンスを得意ジャンルとする。

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