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プレビュー:英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2024/25『フィガロの結婚』11月29日(金)公開

新しいシーズンのオープニングは
みんな大好き『フィガロの結婚』

親しみやすい、でも品格のあるプロダクション

© [2024] Clive Barda

いよいよシーズン開幕です。今シーズンのオペラは、『フィガロの結婚』で始まりました。今回の映像は2024年9月10日に上演されたものです。英ロイヤル・オペラの『フィガロ』は2006年にデイヴィッド・マクヴィガーが演出した秀逸なプロダクションで、今回の再演でも自身が演出を手がけており、若いキャストはとても貴重な機会となったことでしょう。

フィガロとスザンナが結婚するおめでたい日に2人の主人であるアルマヴィーヴァ伯爵の屋敷で次々起こるドタバタを描いたこの作品、登場人物も多く、みな自分の考えは正しいと思って言いたいこと言うし行動するし、さらに良かれと思って考えた名案? を実行するものだから、カオス状態に。でもこのこんがらかったドタバタ状態でも下品にならず、品格ある展開を見せてくれるのはさすが英ロイヤル・オペラなのです。

舞台美術を衣裳も落ち着きと品性を醸し出します。シックな色味の衣裳と明るすぎない舞台に注目してください。

いつの時代も結婚はおめでたく人生で重要な出来事

舞台はセビリア近郊。アルマヴィーヴァ伯爵に仕えているフィガロが伯爵夫人の小間使いスザンナと結婚する日を迎えました。実はアルマヴィーヴァ伯爵はスザンナのことをとっくに廃れた初夜権を行使しようと狙っています。かつてフィガロはアルマヴィーヴァ伯爵の恋のキューピッド役を務め、恋を成就させたのにもかかわらず、伯爵はすっかり伯爵夫人のことは相手にしていません。夫の愛情を取り戻したい伯爵夫人が協力してくれて、伯爵を罠にかけようとしますが、伯爵夫人に憧れている小姓のケルビーノと2人でいるところを伯爵に見られてしまい、あらぬ疑いをかけられてしまいます。さらにかつてフィガロに懲らしめられて恨んでいる医者のドン・バルトロ、フィガロの借金を理由に結婚を迫るマルチェッリーナも加わりフィガロは万事休す。最後はめでたしめでたしなのですが、そこにいたるまでの1日の出来事が描かれます。

この歌手のために作られたオペラでは、
と思うようなアルマヴィーヴァ伯爵に注目

© [2024] Clive Barda

今回、絶対に注目していただきたい(いやでも目に留まります)のはアルマヴィーヴァ伯爵のヒュー・モンタギュー・レンドールです。英国出身で、両親ともにオペラ歌手という彼はまだ30歳! お腹の出ていないアルマヴィーヴァ伯爵、背も高くルックスも良くて彼がスザンナに迫る様子、伯爵夫人が愛情を取り戻したい気持ちなど、とてもリアルに伝わります。

フィガロのルカ・ミケレッティは日本でリッカルド・ムーティ指揮『マクベス』でタイトルロールを歌ったことで日本でも知られています。スザンナは、イン・ファンが降板し、昨年英ロイヤルにてスザンナ役でデビューしたシボーン・スタッグが再び登場します。ドキュメント(インタビュー)部分ではイン・ファンが出ています。

登場人物がみな自分に正直で人間臭い『フィガロの結婚』。誰もおかしな人ではないのだけれどどんどんこじれて大変な状況に陥り、それが糸がほどけるように上手く収まる……、重唱が美しく一つに昇華することでも理解できます。何度でもみたいオペラ作品、映画館でお楽しみください。


11月29日(金)~12月5日(木) TOHOシネマズ日本橋他 一週間限定公開
英国ロイヤル・オペラ・ハウスシネマシーズン2024/25『フィガロの結婚』

開演
各劇場による

チケット料金
一般・シニア 3,700円
学生・小人 2,500円
詳しくは:東宝東和

エディター・ライター 出版社勤務を経てフリーランスのエディター、ライターとして活動中。 クラシック音楽、バレエ、ダンスを得意ジャンルとする。

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