• HOME
  • 公演プレビュー
  • プレビュー:10月4日(火)パシフィックフィルハーモニア東京 第152回定期演奏会 飯森範親×角野隼斗×トーマス・アデス

プレビュー:10月4日(火)パシフィックフィルハーモニア東京 第152回定期演奏会 飯森範親×角野隼斗×トーマス・アデス

10月4日(火)サントリーホール パシフィックフィルハーモニア東京第152回定期演奏会
角野隼斗を迎えてトーマス・アデス作品を日本初演

ひそかに攻めてるオーケストラ

飯森範親©山岸伸

創立30周年を迎えた東京ニューシティ管弦楽団は、今年度より楽団名を「パシフィックフィルハーモニア東京」に変更し、音楽監督に指揮者の飯森範親が就任しました。発表された定期公演のラインナップは一見通常のオーケストラの定期演奏会の体なのですが、時折ユニークな作品があり「ん、これは?」と気になる作品がプログラムにそっと入っています。

例えば、第154回の定演(2023年1月)、園田隆一郎指揮でジュゼッペ・マルトゥッチ(1856~1909、イタリアの作曲家、レスピーギの師としても知られている)の『夜想曲第1番』作品70を演奏します。
園田隆一郎は優れたオペラ指揮者として知られています。マルトゥッチはイタリアの作曲家でありながらオペラは全く書いておらず器楽作品のみという作曲家。この組み合わせは誰が考えたのでしょう?

また、第155回の定演(2023年3月)では飯森範親指揮、ソリストにヴァイオリンの神尾真由子を迎え、イェルク・ヴィトマン(1973~ 、ドイツの作曲家、クラリネット奏者、指揮者)の『ヴァイオリン協奏曲第1番』を日本初演します。
ヴィトマンは人気の高い現代作曲家で、彼の作品が上演される機会は多いのですが、意外にも『ヴァイオリン協奏曲』は日本初演です。

オーケストラの本当の楽しみ方は定期演奏会に通うこと、とはよく言われますが、パシフィックフィルハーモニア東京の定演ラインナップは、スパイスのように攻めの姿勢がところどころ感じられとても気になる、という状況なのです。

今回ご紹介したいのは10月に行われる第152回の定期演奏会。ソリストにピアニストの角野隼斗を迎え、トーマス・アデスの『ピアノと管弦楽のための協奏曲』とホルストの組曲『惑星』を演奏します。『惑星』ではプロジェクション・マッピングを使用し視覚的にも楽しめる工夫が施されるとのことです。こういった趣向もお客さんを楽しませたいという、新しい試みです。

トーマス・アデスのピアノ・コンチェルト

トーマス・アデスは1971年生まれ、イギリスの作曲家、ピアニスト、指揮者です。アデスは非常に人気が高く、作品の演奏機会が多い作曲家です。

ルイス・ブニュエルの映画『皆殺しの天使』をオペラ化したり(METオペラビューイングで上映されました)、旧約聖書創世記の7日間をモチーフにした、プロジェクターによる映像とピアノとオーケストラのための7部からなる『イン・セブン・デイズ』などいずれも高い評価を得ています。

錚々たるオーケストラやソリストに作品が演奏されるだけでなく、自身も演奏家として大活躍しており、まさにスーパースターと言ってもいいでしょう。

キリル・ゲルシュタイン演奏による『イン・セブン・デイズ』トレイラー

東京オペラシティの同時代音楽企画シリーズ「コンポージアム」では、トーマス・アデスを取り上げ、彼の作品が演奏されました(2020年予定が延期になり2021年に上演)。コロナの影響で本人の来日が叶わなかったので残念でした。

今回演奏される『ピアノと管弦楽のための協奏曲』は日本初演となります。すでにアデス自身の指揮、キリル・ゲルシュタインのピアノ、ボストン交響楽団の演奏によるCDがリリースされています。

角野隼斗(かてぃん)とトーマス・アデスとの邂逅

角野隼斗『胎動 New Birth』

角野隼斗は八面六臂の活躍をしているピアニストです。自らの演奏を定期的に投稿しているYouTuberとしてまず大変な人気を得ます。
そして昨年のショパンコンクール出場、今年になってからは全国ツアーを展開、6月に「日比谷音楽祭」に出演、7月は「FUJI ROCK FESTIVAL ’22」に出演、ショパンにインスパイアされたオリジナル曲『胎動 New Birth』、『追憶 Recollection』を配信リリース。
11月には「BBC Proms JAPAN 2022」のProm4「Game & Cinema Prom」に出演予定、さらに「STAND UP! CLASSIC FESTIVAL’22 in TOSHIMA」でピアニスト、フランチェスコ・トリスターノと共演予定、などなど大変な活躍ぶり。

軽やかに多彩なピアノを聴かせてくれていますが、いずれもハイ・センスなのが印象的です。彼は、ポピュラー・ミュージックやゲーム・ミュージックに傾倒しつつも常にクラシックのバックグラウンドを活かしています。

トーマス・アデスはイギリスが誇る作曲家、ベンジャミン・ブリテンの再来とよく言われます。それはクラシック作品の演奏を続け、それがまた素晴らしい演奏であり評価されているからです。アデスと角野、どちらもクラシックに対して敬意を払い、ルーツとして意識していることが共通しているのかもしれません。

アデスのピアノ・コンチェルトを角野隼斗の演奏で聴いてみたい……そう思いつき、実現に導いたパシフィックフィルハーモニア東京と音楽監督、飯森範親のセンスの良さに感謝しつつ、待望の日本初演を楽しみましょう。


152回定期演奏会
10月4日(火)
会場:サントリーホール

開演:19時
★ チケット料金
4000円〜9500円
詳しくは:パシフィックフィルハーモニア東京

公演一覧
Pick Up公演

エディター・ライター 出版社勤務を経てフリーランスのエディター、ライターとして活動中。 クラシック音楽、バレエ、ダンスを得意ジャンルとする。

関連記事

  1. この記事へのコメントはありません。