世界中で愛される、泣けるオペラ『椿姫』〜あらすじや曲を紹介〜

3.オペラ『椿姫』のあらすじ〜裏社交界の華、真実の愛〜

 オペラ『椿姫』の始まりは、悲しみに満ちたヴァイオリン・アンサンブル。そして楽器編成を拡大して続く、ヴィオレッタの純愛のモティーフ。このオペラが悲劇であること、ヒロインの純愛がテーマであることを冒頭の前奏曲で示します。
幕が開くと目に飛び込んでくるのは、パリ裏社交界の豪華絢爛な世界。間もなく有名な「乾杯の歌」が始まり、舞台上の全員の合唱にまで音楽が広がっていくと、観客は夢のようなオペラの世界に完全に引き込まれてしまいます。

あらすじを知って実際の劇を鑑賞してみましょう。

オペラ『椿姫』 あらすじ
✳︎ 第1幕 ✳︎

【19世紀半ばパリ、ヴィオレッタのサロン】


 夜ごと華やかなパーティが開かれる、高級娼婦ヴィオレッタのサロン。彼女は持病の肺病を抱えながらも売れっ子で、複数の大パトロンがいました。出席者のガストーネ子爵が、プロヴァンス出身の貴族青年アルフレードをヴィオレッタに紹介します。アルフレードはヴィオレッタを街で一目見て以来、恋心を抱いていました。アルフレードは即興で歌を披露。ヴィオレッタとの二重唱から、さらに一同の大合唱となります(「乾杯の歌」)。
疲れて一人で休んでいたヴィオレッタに、アルフレードは「崇高な愛」を告白をします。その情熱に心を動かされたヴィオレッタは、胸につけていた白椿の花をアルフレードに手渡し再会を約束します。アルフレードの告白を思いながら、娼婦という身を振り返り悩むヴィオレッタ(アリア「ああ、そはかの人か~花から花へ」)。外からはアルフレードの声が。しかし、彼への思いを打ち消すかのように、ヴィオレッタの歌は激しさを増していきます。

オペラ『椿姫』 あらすじ
✳︎ 第2幕 ✳︎

【第1場 パリ郊外の家の客間】

サラ・ベルナール主演映画『椿姫』1911年 出典:Wikimedia Commons

 娼婦の生活をやめたヴィオレッタとアルフレードは、パリ郊外の家でひっそりと暮らしていました(アリア「燃える心を」)。ある日パリから帰ってきた女中から、ヴィオレッタが財産を売り払って生活費を工面していることを聞くと、アルフレードは買い戻すために飛び出していきます(アリア「ああ、知らなかった」)。
入れ違いにアルフレードの父ジェルモンが訪れ、娘の結婚に差し支えるので息子と別れてほしいとヴィオレッタに迫ります。身を引く決意をするヴィオレッタ(二重唱「神様は私に天使のような娘を」)。ジェルモンが出ていき、アルフレードが帰宅。ヴィオレッタは「私を愛してアルフレード、私があなたを愛するほどに!」と言って泣きながら去っていきました。残されたアルフレードのもとにヴィオレッタから別れの手紙、そして現れたジェルモン。ジェルモンは、故郷に帰るようにアルフレードを諭します(アリア「プロヴァンスの陸と海」)。しかしアルフレードは心ここにあらず。夜会の招待状を見つけると、ヴィオレッタが裏切ったと勘違いして飛び出して行きます。

【第2場 パリ、フローラの館の仮面舞踏会】

 フローラの館の仮装舞踏会。エキゾチックな歌とダンスが花を添えます。部屋の隅には沈痛な面持ちのアルフレード、そしてヴィオレッタが元のパトロンのドゥフォール男爵と現れます。アルフレードは男爵にカード賭博を挑み、2人は一触即発の雰囲気に。ヴィオレッタはアルフレードと話をしようと試みますが、ジェルモンとの約束のため真実を言うことができません。自制心を失ったアルフレードは会衆の面前で、賭けの金を乱暴に彼女に投げつけました。ジェルモンが割って入って息子を叱り、男爵はアルフレードに決闘を申し込みます。

オペラ『椿姫』 あらすじ
✳︎ 第3幕 ✳︎

【パリの屋根裏部屋、ヴィオレッタの寝室】

 1カ月後、粗末なベッドの上で、女中アンニーナの看護を受けるヴィオレッタの姿が。彼女の肺の病は深刻な状態で、すでに死の影がさしていました。起き上がることもできず、ヴィオレッタはジェルモンからの手紙を読み始めます。手紙には、真実を知ったアルフレードと2人で許しを請いに訪れると書いていました。ヴィオレッタは死が近いことを悟り「遅すぎる」と嘆きます(アリア「さようなら、過ぎ去りし日々よ」)。直後に外からカーニバルを祝う楽し気な音楽が聞こえ(合唱「バッカナーレ」)、戸口にアルフレードの姿が。
幸せの瞬間。アルフレードはヴィオレッタに謝罪し、再び一緒に暮らそうと語ります(二重唱「パリを離れて」)。医者を連れたジェルモンもやって来ました。しかし、ヴィオレッタはもう気を失いそうなほど衰弱しています。ヴィオレッタは自分の肖像画をアルフレードに渡しました。別れを告げるヴィオレッタ、彼女の命を願うアルフレード、祈るジェルモン、医師、アンニーナ(フィナーレ「ああ、ヴィオレッタ」)。
そして、一筋の光のようにヴァイオリンが奏でる愛のモティーフが。ヴィオレッタはその光に誘われるように、突然生き生きと起き上がったと思うと、倒れ息絶えます。

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神保 智 じんぼ ちえ 桐朋学園大学音楽学部カレッジ・ディプロマ・コース声楽科在学中。子どものころから合唱団で歌っていた歌好き。現在は音楽大学で大好きなオペラやドイツリートを勉強中。

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