小説『ラ・ボエーム(ボヘミアン生活の情景)』アンリ・ミュルジェール:~オペラ『ラ・ボエーム』の原作紹介~オペラの原作#07-1
『ラ・ボエーム』あらすじ
5.シャルルマーニュの硬貨
年の瀬も迫るころ、ロドルフとマルセルは大掛かりなソワレ(夜宴)を企画します。
招待状を100通刷って配達するのですが、パリに住む人々は、あの2人が大掛かりなソワレなんて開けるのか?と半信半疑でした。
2人は何度もこのような企画を立てては予算の都合で延期を繰り返していました。繰り延べた回数は実に52回!今回も、とうとう目標である100フランを拵えることができないまま、当日になってしまいます。
焦ったマルセルは、部屋の隅をごそごそ漁り始め、錆で汚れた硬貨を発見します。かろうじて判読できる文字から、シャルルマーニュ時代(751~987)のものらしいということがわかります。
贔屓の店へ行き硬貨を取り出すと、そこに居合わせた骨董屋が仰天しました。「世界中探しても見つからなかった最後の一枚なんです!」
マルセルは硬貨の値を釣り上げ、30フランで骨董屋に売りました。
山分けした15フランを元手にして、無事にソワレを開催。豪華絢爛とはいきませんでしたが、創意に富んだ会はパリに住む人々に印象をもたらすものになりました。
『ラ・ボエーム』あらすじ
6.マドモワゼル・ミュゼット
恋多き美女ミュゼットは、国務院の役人の愛人でした。
男に財産を委ねられていた彼女は、度々豪華なソワレを開催していました。
ロドルフはミュゼットに「友人の画家マルセルを連れてきてもいいか?」と訊ね、快く承諾を得ました。
ソワレ当日、ロドルフとマルセルはミュゼットの家に行きますが、そこには驚きの光景が広がっていました。
ミュゼットは役員の男に捨てられ、部屋を追い出されていました。中庭には家具が放り出されており、ソワレどころではありません。
さぞや落ち込んでいるかと思われたミュゼットは、あっけらかんとした様子で星空の下でソワレを開催しよう、と集まったみんなに宣言します。この野外ソワレは大いに盛り上がりました。
客が帰った後もミュゼットと朝まで楽しい時間を過ごし、疲れ知らずの3人は、翌日のランチ、さらに夜まで一緒に遊び続けます。
7時を過ぎ、ロドルフが先に帰り、マルセルとミュゼットは2人きりとなります。
マルセルはミュゼットを家に送りますが、大家がすでに鍵を持っていってしまった後でした。
行く宛のないミュゼットはマルセルの家に来て、「この花が枯れるまでここにいるわ」と告げます。
ミュゼットに惹かれていたマルセルは、こんなことならドライフラワーにすればよかったと悔やみましたが、半月が経っても花は枯れませんでした。
マルセルが寝ている間に、ミュゼットが毎晩花瓶の水を換えていたのでした。
惹かれていたのはミュゼットも同様だったのです。
『ラ・ボエーム』あらすじ
7.黄金の河
大金500フランを手にしたロドルフは倹約を決意します。
ロドルフには借金があるのですが、返済に使うのは以ての外で、必要なものを購入したら残りは倹約すると誓いを立て、25フランのパイプを購入します。
その話をマルセルにすると「パイプひとつに25フラン?それで倹約なんてよく言えたな!」と呆れられます。
ロドルフは、今までは安物のパイプを使い毎日駄目にしていたから長い目で見たら倹約になる、と反論します。
時間を無駄にしないために外食にしよう。
料理屋に行くかわりに使用人を雇おう。
洒落た眼鏡や、ステッキは必要経費。
倹約、倹約と騒ぐ2人ですが、あっという間に大金は底をつき、雇った使用人も解雇してしまいます。
ロドルフはマルセルに「今夜の晩飯はどうするんだ?」と訊ねます。
マルセルは「そんなこと明日考えようぜ」と答えました。
『ラ・ボエーム』あらすじ
8.五フラン銀貨の値打ち
ロドルフがミミと暮らす前の話です。
ロドルフはロールという洋服屋の女の子に恋をします。デートをすることになったロドルフはかっこいいところを見せてやろうと、金策に走ります。
夜までに5フランを作らなければ。
近くに住んでいる著述家の記事作成を手伝い、詩集と、恋歌の本と、石膏像を手に入れ、それを担保に洗濯屋のおかみから2フラン借り、続いて向かったモレッティおじさん宅で請求書の写しを手伝い29スー(1フラン=20スー)借りて、パリの中心街で出会った気のいい青年からは、あなたの散歩につき合ったから待ち合わせに遅れそうだ!と言いがかりをつけてお金を借りることに成功します。
ロドルフはその晩のデートで、その日工面した金を惜しみなく使うという、まさしくボエーム的夜を過ごしました。
次のページ:9.北極の菫|10.嵐の岬|11.ボエームのカフェ|12.ボエーム入会試験
この記事へのコメントはありません。