小説『椿姫』アレクサンドル・デュマ・フィス:〜オペラ『椿姫』の原作紹介〜オペラの原作#03
小説『椿姫』あらすじ
アルマンの回想。
マルグリットの新たなパトロン
パリに着いたときにはすっかり夜が明けていました。真っ直ぐにアンタン街を目指し、マルグリットの家へ行くと、そこはもぬけの殻でした。プリュダンスの部屋の窓も閉められており、途方に暮れたアルマンは、門番にマルグリットのことを訊ねます。すると、門番は一通の手紙を取り出しました。それはアルマンへの手紙でした。
アルマンさま。あなたがこの手紙をお読みになる時分には、あたしはもうほかの男のものになっているのでございましょう。ふたりの仲ももうこれっきりでございます。
手紙にはそう書かれていました。
失意と絶望に倒れそうになったアルマンは、父が滞在しているホテルへ行き、父の腕の中に身を投げかけて熱い涙に泣き濡れました。その後アルマンは父に連れられて故郷に帰ることになります。
田舎で抜け殻のようになっていたアルマンですが、愛するマルグリットのことを忘れることができず、パリへ出かけていきます。
マルグリットはN伯爵のものとなっていました。もし現在のマルグリットが不幸そうならば助けようと思っていたアルマンでしたが、少なくともうわべは幸福そうな彼女を見て、復讐してやろうという気持ちが沸き起こっていきます。
当てつけのようにマルグリットの知り合いである娼婦と交際を始め、散々彼女の悪口を言いふらします。その攻撃にすっかり参ってしまったマルグリットは社交の場に顏を出すことをやめてしまいます。
ある日、マルグリットはアルマンの家にやってきて「もう、私をいじめるのはやめて」と懇願します。彼女のことを愛しているアルマンは、これで復縁ができるものと考えますが、朝になるとマルグリットはN伯爵の元へ帰っていってしまいます。
その後、ことづけによってマルグリットがイギリスへ発ったことを知ったアルマンは、失意の中遠い国へ旅に出ることになります。
小説『椿姫』あらすじ
アルマンの回想。
肺結核の悪化と孤独な死
アレクサンドリアでマルグリットの病気がひどくなっていることを知ったアルマンは手紙を書き、急いでパリに戻ります。
しかし、マルグリットはすでに亡くなり、競売も終わったところでした。
マルグリットの手紙には、ジュリー・デュプラから手記を受け取ってほしいと書かれていました。
その手記には別れの真相が書かれていました。それは痛ましい真実でした。
アルマンが父に会おうとパリ中を探し回っていたとき、父は、マルグリットに会いにいっていました。そこで父はマルグリットにこのようなことを言っていました。
あなたはアルマンを愛していてくださる。それならばそれで、その証拠を伜にみせてやっていただきたい。その証拠を見せる方法は、まだ一つだけあなたに残されている。それは伜の将来のために、あなたの恋を犠牲にすることです。
わたしには娘がひとりある。若くて美しい、まるで天使のように清らかな娘だ。
ところで、娘は近く結婚することになっている。
わたしの婿となるべき男の家では、もうアルマンがパリでどんな生活をしているかを知っていて、もしアルマンが相変わらずこんな生活をつづけるようなら、婚約を取り消すと申しこんできた。
娘の将来は、いわばあなたの掌中にあるわけだ。あなたにはこの娘の将来をだめにする権利がおありだろうか?
このように父親から言われたマルグリットは、アルマンの家族のため、アルマンの将来のために、身を引くことを決心します。
やがて結核は進行し、あれだけ仲の良かったプリュダンスも、伯爵たちも見舞いにくるものはなく、部屋は差し押さえの札が貼られ、マルグリットは孤独のうちに息を引き取りました。
小説『椿姫』あらすじ
「私」がアルマンを故郷に届ける。
語り部の「私」は、話をすっかり聞き終えた後、アルマンの帰郷に同行します。
「私」はそこで会った、アルマンの父と妹の印象を次のように語っています。
わたしは、息子の話から想像していた通りの、背丈の高い、威厳のある、しかも親切なデュヴァル氏に会った。氏はうれし涙にくれてアルマンを迎え、愛情をこめてわたしの手を握った。わたしたちを迎えてくれた、この老人の胸のなかでは、父性愛が他のすべての感情を支配していることに、わたしはまもなく気がついた。
ブランシュと呼ぶお嬢さんは、そのすみきったひとみや目つき、清らかな口もとなどが、心はただもう神聖なことしか考えず、口はただもう敬虔なことしか言わないような少女であることを証明していた。
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