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小説『椿姫』アレクサンドル・デュマ・フィス:〜オペラ『椿姫』の原作紹介〜オペラの原作#03

目次

小説『椿姫』あらすじ
アルマンの回想。
マルグリットとの恋愛

その後もパリの街角や演劇場でマルグリットを見かけては恋心を募らせていたアルマンは、友人のプリュダンス・デュヴェルノワがマルグリットの隣の家に住んでいるということを知り、マルグリットとお近づきになれるように頼みます。

プリュダンスはマルグリットが「公爵のお爺さんに囲われている」ということや、N伯爵という青年伯爵に求愛されていることを語って聞かせ、アルマンと住む世界が違うということを匂わせます。

深夜、友人とプリュダンスの家にいるとき、隣に住むマルグリットがプリュダンスに「今すぐ来てちょうだい」と呼びかけます。

三人でマルグリットの家に入るとそこにはN伯爵がいました。頭の鈍い青年伯爵に辟易していたマルグリットは、辛辣な言葉を次々と浴びせ、伯爵を追い返してしまいます。その毒舌にはアルマンもあきれ返るほど。プリュダンスは「金持ちの坊ちゃんなんだからうまいことやりなさいよ」と言いますが、マルグリットは気にせずケロっとしています。

やがて乱痴気騒ぎの夜食パーティーが始まり、アルマンは悲しい気持ちになっていきます。


結核のマルグリットは杯を重ねていくと咳き込むようになり、やがて口を押えて喀血してしまいます。プリュダンスも友人も、いつものことだから放っておこうと彼女の病には関心を向けません。関心があるのは目の前のご馳走とシャンパンです。

アルマンは席を立ったマルグリットを追って部屋へ行き、自分の想いを告白します。初めは軽い調子で受け流すマルグリットでしたが、涙を流しながら身体を案じるアルマンのひたむきさに打たれて、恋人になることを承諾します。

その日からアルマンの一喜一憂の日々が始まります。多額の借金があるマルグリットは、公爵をはじめとするパトロンの援助がなければ生活をしていくことができません。
朝は公爵が来るから会えない、今日は体調が悪いから帰ってほしい、今晩はヴォードヴィル座に来てほしい。様々な要望に応えるアルマンですが、つねに嫉妬と疎外感、飢えを感じていました。
とくに嫉妬を感じていたのは古くからのなじみであるG伯爵で、どうやらマルグリットのために年間十万フラン(約1億円相当)もの大金を使っているとのことでした。

マルグリットと恋人になった二日目にして、アルマンは交際に疲れ果てパリを去ろうとします。

翌日、マルグリットはプリュダンスを伴ってアルマンの家にやってきて、アルマンに自分の因果な稼業についての心境を吐露します。

あたしみたいな女のまわりにいる男たちときたら、だれも彼もみんなあたしたちのほんのちょっとした言葉の端々にまで探りを入れたり、ごくなんでもない動作からもなんかの結果を引きだしたりすることに一生懸命なのよ。だからあたしたちには、自然、男の友だちなんてものはないわ。あたしたちにあるのはただ、身勝手な旦那ばかりだわ。そんな連中ときたら、あたしたちのために散財しているような口をきくけれど、実はじぶんたちの虚栄心のためになのよ。

女の友だちはあるにはあるわ。でも友だちといっても、ちょうどプリュダンスみたいな玄人あがりで、もう年をとってじぶんじゃなんにもできないくせに、まだむだ使いの味だけは忘れられないでいるような連中ばかりよ

続けて、マルグリットはこう言います。

(自分にとっての楽しみは)あたしのからだよりもあたしの気持ちのほうをもっと深く愛してくれるような、立派な人を見つけることだったの

マルグリットは、男は虚栄心のため、女は自分を利用するために近寄ってきていると感じていました。彼女が求めていたのはシンプルな無償の愛情でした。

この翌日にアルマンはマルグリットに『マノン・レスコー』を贈ることになります。

小説『椿姫』あらすじ
アルマンの回想。
マルグリットとの新生活

アルマンの助言に従って身体を治そうとしていたマルグリットは、アルマンに田舎に住もうと提案します。
そこで二人はプリュダンスに相談し、ブージヴァルがおあつらえ向きであることを教えてもらいます。


ブージヴァルは素晴らしい場所でした。パリの喧騒と対極にあるこの牧歌的な場所が気に入ったマルグリットは、公爵の援助によって、三階建ての瀟洒な家を借りることになりました。

結局パトロンの力を借りなければならないことにアルマンは歯がゆさを覚えますが、二人での生活のことを考えると、何も言い出せませんでした。

新生活は喜びに満ちていました。ようやく二人は真の幸せを手に入れたかに見えましたが、公然と同棲をしていることが公爵にバレてしまい、マルグリットに対して「アルマンと別れるか、援助を失うかどちらかを選べ」と迫ります。

マルグリットはアルマンを選びました。

「どんなことがあってもアルマンとは別れない」

そう決心したマルグリットは、アルマンと抱き合い、二人の歓喜の生活がはじまります。

小説『椿姫』あらすじ
アルマンの回想。
アルマンの父

田舎での生活は幸せに満ちたものでしたが、その生活は長くは続きませんでした。

家の中から度々マルグリットの物が消えていくことを不審に思っていたアルマンはパリに出かけていき、事情を知っていそうなプリュダンスに「マルグリットの馬やカシミヤのショールやダイヤはどこに消えたんだ?」と問いただします。

それらは借金の返済のために売られるか質に取られていました。

マルグリットに3万フラン(3000万円相当)の借金があることがわかったアルマンは、ぼくが必ず返すと決心します。

ちょうどその頃、パリに住むアルマンと連絡が取れないことを不審に思っていたアルマンの父親が、息子に会うためパリへやってきます。

どこかでマルグリットと同棲をしていることを聞いていた父親は、「家の名が汚れるからあの商売女とは手を切れ」とアルマンに迫ります。絶対に別れないと言うアルマンと、絶対に手を切らせると言う父親との会話は平行線を辿り、その日は結論が出ないままアルマンはブージヴァルへ帰っていきます。

後日アルマンは説得のために何度か父親が滞在しているホテルへ顔を出すのですが、父親は不在で会うことができません。

何度目かのパリ行きでようやく父親と会うことができると、父親の態度は急変していました。

「おまえには、あまりやかましいことは言わないことに決めた」

父のマルグリットとの交際を認めるような態度にアルマンは感激します。アルマンは一刻も早くこの嬉しい変化をマルグリットに伝えようとブージヴァルへ帰ります。

家に帰ると窓に灯りは一つもありませんでした。召使いのナニーヌにマルグリットはどこだい? と訊ねると、ナニーヌは「(マルグリットは)パリへいらっしゃいました」と答えました。

「ぼくを心配してのことかもしれない」「重大な用事でプリュダンスから手紙が来たのかもしれない」「家具や家財の買い手が見つかったからパリに行ったのかもしれない」いろいろな可能性を考えますが、不安が胸を締めつけます。居ても立っても居られなくなったアルマンは深夜二時なのにもかかわらず、雨の中、徒歩でパリへ行く決心をします。

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1982年、福島県生まれ。音楽、文学ライター。 十代から音楽活動を始め、クラシック、ジャズ、ロックを愛聴する。 杉並区在住。東京ヤクルトスワローズが好き。

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