『巨匠とマルガリータ』ウクライナの小説家ブルガーコフの長編に鳴るオペラ~あらすじと略歴、芸術への影響~小説を彩るクラシック#21
『巨匠とマルガリータ』
『巨匠とマルガリータ』は作者の生前には発表されず、ブルガーコフの死後20年以上が経ってから出版されました。
ストーリー
この小説の舞台は春のモスクワ。物語は文芸誌の編集長ベルリオーズと〈宿なし〉というペンネームで執筆している詩人イワン・ポヌイリョフの会話から始まります。
「反宗教的な叙事詩」の原稿に満足がいかなかったベルリオーズは、失敗の元は彼が生き生きとキリストを描写したことに違いないと考え、イワンに全面的な書き直しの要求をし、「イエス・キリストは後世の人々が創作した神話、でっちあげに違いない」と語ります。
そんな神の議論を展開している2人の間に謎の外国人が割って入りました。
「イエスは存在していたのですよ」
外国人はそう言うと、自分の目で見てきたかのように、灼熱のゴルゴタの風景や、イエス・キリストの裁判、ユダヤ総督ポンティウス・ピラゥスの話を語りだします。
この謎の男の名前はヴォランド。
彼の正体は「悪魔」でした。
突如モスクワに現れた悪魔ヴォランドは、街を大混乱に陥れます。
劇場の天井からはルーブル紙幣を降らせ、関係者たちは行方不明になり、黒猫は人の言葉を喋り、編集長のベルリオーズに対しては死の未来を予言し、詩人は精神に異常をきたす……。
荒唐無稽ともいえる物語に思えますが、イエスが存在していた時代のエルサレムと、1930年のモスクワの時代が対比され、後に登場する主人公「巨匠」の書いた「ポンティウス・ピラトゥスとヨシュア(イエス)の小説」が物語と絡み合い、現実とも幻想ともつかない様相を帯びていきます。
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