愛をめぐる「聖」と「俗」、ワーグナーのオペラ『タンホイザー』〜あらすじや曲を紹介〜
タンホイザー関連
映画『ブレードランナー』
リドリー・スコット監督、1982年公開のSF映画『ブレードランナー』の中で、「タンホイザー・ゲート」という言葉が出てきます。
環境破壊により人類が宇宙への脱出を進めている近未来の地球。ハリソン・フォード演じる特殊警察「ブレードランナー」のデッカードは、脱走した宇宙開拓用人造人間「レプリカント」のグループを捜索します。
映画終盤、脱走レプリカント達のリーダーであるバッティがデッカードに語った宇宙開拓の記憶に「タンホイザー・ゲートの近くで暗闇に瞬くCビーム」という言葉が登場するのです。
この「タンホイザー・ゲート」などの言葉は造語ですが、理由なくタンホイザーというわけでもなさそうで、オペラとの関連性が指摘されています。
バッティはレプリカントに課せられたある運命からの救いを求めて、レプリカントの開発者に会うために脱走するのですが、罪を犯してまで面会した開発者に救済は不可能だと断られてしまいます。その境遇が、教皇(≒神、造物主)に縋って見放されたタンホイザーに重なるのです。
SF映画ファンには有名な台詞で、しばしば他のSF作品等でも引用やパロディをされています。
参考文献
CD『「歌劇タンホイザー」全曲(パリ版)』ジュゼッペ・シノーポリ指揮、フィルハーモニア管弦楽団、コヴェント・ガーデン王立歌劇場合唱団、プラシド・ドミンゴ(タンホイザー)、ロンドン1988年収録、DG
CD『歌劇「タンホイザー」全曲(パリ版)』ゲオルグ・ショルティ指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン国立歌劇場合唱団、ルネ・コロ(タンホイザー)、ウィーン1970年収録、ポリドール
『タンホイザー(名作オペラブックス)』アッティラ・チャンパイ/ディートマル・ホラント編、渡辺護リブレット対訳、大崎滋生本文訳、音楽之友社(1988)
『タンホイザー』リヒャルト・ワーグナー著、高辻知義訳、東逸子絵、新書館(1986)
『ワーグナー(作曲家・人と作品シリーズ)』吉田真著、音楽之友社(2005)
『ワーグナー:バイロイトの魔術師』バリー・ミリントン著、三宅幸夫監訳、悠書館(2013)
この記事へのコメントはありません。