森絵都『アーモンド入りチョコレートのワルツ エリック・サティ<童話音楽の献立表>より』~小説を彩るクラシック#27
サティのおじさん
あるレッスンの日、ふわりとコロンの香りがして振り向くとそこには見知らぬ外国人の男性が立っていました。
白い肌、緑の瞳、銅色の髪。どことなくサティに似たそのおじさんを絹子先生は「おとといフランスから来たステファンよ」と二人に紹介します。
君絵は「あの人は誰?」と絹子先生に何度もしつこく問いつめますが、絹子先生は答えをはぐらかします。君絵は「きっと先生の恋人なんだろうな……」と考えます。二人はステファンを「サティのおじさん」と呼び、仲良くなっていきます。
サティのおじさんはとても変わった人でした。レッスン中に突然ブラボーと叫ぶ。ピアノで即興の伴奏をつけはじめる……。
やがて、生徒たちの間で、「変な外国人がレッスンを邪魔する」と非難の声が上がり始め、生徒の数が徐々に減っていきました。
エキセントリックな君絵は、サティのおじさんと意気投合。日本語とフランス語でコミュニケーションを取るのですが、なぜか二人は通じ合うことができるようです。
絹子先生ですら、一般の感覚でいったらじゅうぶん「へんな人」なのですが、もっとへんな君絵、もっともっとへんなサティのおじさんと、このピアノ教室ではへんな人だけが残っていくようです。
この記事へのコメントはありません。