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極上のロマンティック・オペラ、プッチーニ『ラ・ボエーム』〜あらすじや曲を紹介〜

4.オペラ『ラ・ボエーム』の見どころ

名曲揃いのオペラ『ラ・ボエーム』。見どころ聴きどころが多すぎて、紹介しきれないほどです!

ここでは特に有名なアリアをご紹介します。どれもプッチーニの美しい旋律に溢れ、コンサートなどで聴く機会が非常に多い楽曲です。

ロドルフォのアリア「冷たき手を」|”Che gelida manina”

ラモン・バルガス(ロドルフォ),アンジェラ・ゲオルギュー(ミミ)
ニコラ・ルイゾッティ指揮,メトロポリタン歌劇場
2008年ライブビューイング


第1幕、ロドルフォとミミが出会う場面で、自己紹介としてロドルフォが歌うアリアです。暗闇の中で鍵を探すふりをしてミミの手を取り、彼女への恋心を打ち明けます。

甘く美しいこのアリア。最高音ハイC(ツェー、高いドの音)が出てくるテノールの難曲です!

音を下げたり、移調したりして歌ったこともありましたが、現在はオリジナルのままで歌い、華々しい高音を聴かせるテノール歌手最大の見せ場となっています。テノール歌手の高音の技量を披露するため、コンサートなどで単独で歌われることも多い楽曲です。

アリアの最後にはミミにも自分のことを話すよう促し、次項目の「私の名前はミミ」につながります。プッチーニの代表作と言える名アリアが2人の主役によって切れ目なく続く、オペラファン至福のひと時です!

ミミのアリア「私の名前はミミ」|”Mi chiamano Mimì”

砂川涼子(ミミ),藤原歌劇団2007年


第1幕、ロドルフォのアリア「冷たき手を」に続いて、今度はミミが自己紹介。一人暮らしのお針子で、毎日慎ましく生活していると歌います。

プッチーニの旋律美に溢れた名曲!ロドルフォでなくても心を奪われてしまいます。控え目に始まって次第に高揚感を高め、こみ上げる情熱の高まりが抑えきれずあふれ出す中間部。そしてまた我に返るように、落ち着きを取り戻して締めくくります。

ミミの素朴なかわいらしさと秘めた情熱を表した、彼女のキャラクターがよく分かるアリアです。抒情的なソプラノの声を美しく響かせるこのアリアは、ソプラノ歌手のレパートリーとして大変人気があります。

また、冒頭のメロディはオペラ中にたびたび現われ、ミミのモティーフとして機能しています。

ムゼッタのワルツ「私が街を歩けば」|”Quando m’en vo”

ラウラ・ジョルダーノ(ムゼッタ)
ヘスス・ロペス=コボス指揮,マドリード王立劇場2006年


第2幕、ムゼッタが華やかに登場して歌う名高いアリア。通称「ムゼッタのワルツ」です。かつての恋人マルチェッロを振り向かせるため、屈託なく自分の魅力をアピールします。

ムゼッタ最大の見せ場!この第2幕は、人でごった返すクリスマス・イヴのカフェ・モミュス前の様子を描いた、活気に満ちたスペクタクル性のある場面です。

トランペットのファンファーレを皮切りに、物売りの掛け声、登場人物たちの重唱、子どもたちの合唱など、一見バラバラに見える音楽が見事に調和しています。
これらの雑多な音楽が一瞬の切れ間を見せる時、一気に注目を引き付けてムゼッタが登場します。

「ムゼッタのワルツ」はたった2分半ほどの短い楽曲ですが、一度聴いたら忘れられない流麗で豊かな旋律。ムゼッタの明るく裏表のない性格と、セクシーな魅力を存分に表しています。

高音を得意とする軽めの声のソプラノのレパートリーとして、定着している人気曲です。伸びやかで抒情的なミミと、軽やかで装飾的なムゼッタ、2人のソプラノ歌手の声を楽しめるのもオペラ『ラ・ボエーム』の聴きどころと言えます。

四重唱「さようなら、甘い目覚めよ」|”Addio dolce svegliare”

(1時間10分48秒あたりから)

ミレッラ・フレーニ(ミミ),ジャンニ・ライモンディ(ロドルフォ),アドリアーナ・マルティーノ(ムゼッタ),ローランド・パネライ(マルチェッロ)
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮,ミラノ・スカラ座管弦楽団 1965年


非常に完成度の高い、詩情豊かな四重唱をご紹介します。

第3幕の幕切れ、2組の恋人同士の感動的な四重唱です。一方はミミとロドルフォ、互いを想い合うがゆえに別れを選んだ2人のアンサンブル。そこに飛び込んでくる、ムゼッタとマルチェッロのののしり合い。

四重唱の主役はミミとロドルフォで、2人のアンサンブル部分には非常に甘美な旋律が付けられています。そこに、脇役のムゼッタとマルチェッロを登場させることで、2組の対照的な音楽が絶妙に溶け合い、立体感を構成しています。

ムゼッタとマルチェッロの騒々しさが、ミミとロドルフォの悲哀を一層かき立てることとなり、物語のドラマ性にも深みを与えています。

ちなみに、この四重唱の旋律は、プッチーニの歌曲「太陽と愛|Sole e amore」(1888年)からの転用です。

プラシド・ドミンゴ


この四重唱のすぐ後に続く第4幕では、第1幕の始まりと同じ音楽、舞台設定で進行することに気付きます。しかし、ロドルフォとマルチェッロの心は、もはや昔と同じではありません。

彼らの寂しさや虚しさを観客も痛いほど感じます。そして強く物語の中に引き込まれた上で、終幕の訪れを待ち受けるのです。第3幕から第4幕への転換は、プッチーニの天才的な作曲技法と演出技法が光る場面です。

また、第3幕の雪の情景も見どころであり、オペラ『ラ・ボエーム』は各幕の舞台の美しさも見どころとなっています。

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神保 智 じんぼ ちえ 桐朋学園大学音楽学部カレッジ・ディプロマ・コース声楽科在学中。子どものころから合唱団で歌っていた歌好き。現在は音楽大学で大好きなオペラやドイツリートを勉強中。

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