美しく悲しいバレエ『ロミオとジュリエット』のあらすじや見どころ、振り付け師ごとの違いを解説

2.バレエ『ロミオとジュリエット』を観て泣きたい!バレエ『ロミオとジュリエット』の楽しみ方・見どころとは?
「つまらないバレエ」いえいえそんなことありません
バレエを観たことがない方の中には「バレエってつまらなさそう」「見方がよくわからない」と思う方もいらっしゃるでしょう。
バレエを楽しむには、事前にストーリーを知っておくことが大切です。また、その演目の有名なシーンや見どころを知っておくとより楽しめます。『ロミオとジュリエット』の楽しみ方・見どころをご紹介します。
『ロミオとジュリエット』の見どころ
『ロミオとジュリエット』は多くのバレエダンサーが憧れる演目の一つです。高い身体能力やテクニック、パ・ド・ドゥ(男女が2人で組んで踊ること)の技術、表現力が必要とされており、そのすべてが見どころといっても過言ではありません。
正直「すべてのシーンが見どころです!」と言いたいところですが・・・あえて選ぶのであれば、やはり見どころはダンサーたちの表現力でしょう。
特にダンサーの表現力に注目してほしいシーンは以下のとおりです。
- ロミオとジュリエットが出会うシーン
- バルコニーでロミオとジュリエットが愛を伝え合うシーン(バルコニーのパ・ド・ドゥ)
- 親友を殺されたロミオが怒りに狂ってティボルトを殺してしまうシーン
- ロミオとジュリエットが別れを嘆くシーン(寝室のパ・ド・ドゥ)
- ジュリエットがロミオの死に気づき自害するシーン(ラストシーン)
中でも最も有名なシーンは、キャピュレット家の舞踏会のあと、バルコニーの下でロミオとジュリエットが愛を伝え合う「バルコニーのパ・ド・ドゥ」です。
ジュリエットを高く持ち上げるリフトや、疾走感のある踊りで2人の気持ちの盛り上がりが表現されています。恋の始まりのワクワク感や情熱的な気持ちを感じられるはずです。
セリフがないからこそダンサーの表現力で泣ける
バレエにはセリフがなく、身体の動きですべてを表現します。そのため、バレエをあまり知らない人にとっては分かりにくい部分もあるでしょう。
しかし『ロミオとジュリエット』は、事前にあらすじを知っていればセリフがなくても十分に楽しめます。むしろ、セリフがないからこそ観客の価値観・そのときの感情などでどんな風に解釈してもよいのです。
こちらの動画は『ロミオとジュリエット』で最も泣けるシーン、ジュリエットが仮死状態から覚めたあとにロミオの死に気がつき自害する場面です。(動画6:43〜)
セリフがなくても、ロミオの死に気づき絶望して自害するというストーリーが読み取れますよね。
「ロミオ、ロミオ、ロミオ様」ってセリフ、ちょっと暑苦しい…
『ロミオとジュリエット』は海外の物語なので、ミュージカルなどでセリフが日本語に訳されていると違和感があることもあります。違和感が先行して物語に集中できないという人も中にはいらっしゃるのではないでしょうか。
そんな方にもバレエはおすすめです。「どんなセリフを言っているのだろう」という想像は、観客に委ねられます。
また、ダンサーの手の動き、足の出し方、目線の付け方など、身体の動きひとつで観客が受ける印象は異なります。そのため、違うキャストごとに公演に足を運び、ダンサーによる表現の違いを感じるといった楽しみ方もおすすめです。
3.【バレエ】ロミオとジュリエット|振付師ごとの違い
『ロミオとジュリエット』はさまざまな振付師によって振り付けがおこなわれています。中でも有名な3つの版について、振り付けごとの違いを解説します。
レオニード・ラブロフスキーによって振り付けられたラブロフスキー版は、バレエ『ロミオとジュリエット』の元祖といわれています。
古典的・形式的な振り付けで、マイム(動きでセリフを表すこと)が多用されているのが特徴です。
ラブロフスキー版は、マリインスキーバレエ団で上演されています。
ジョン・クランコによるクランコ版『ロミオとジュリエット』は、シュツットガルトバレエ団のために作られたものです。1958年に初演されました。
クランコ版は、数ある版の中でも特にロマンティックに描かれています。ロミオが追放される前夜の「寝室のパ・ド・ドゥ」では、リフトを多用し、別れを悲しむ心情を表しています。
2022年4月、東京バレエ団でクランコ版のロミオとジュリエットが上演されます。
参考:東京バレエ団「ロミオとジュリエット」
マクミラン版の『ロミオとジュリエット』は1965年に英国ロイヤルバレエ団で初演され、現在もロイヤルバレエ団の主要レパートリーの一つとなっています。
マクミラン版は難しいテクニックが随所に盛り込まれており、最も有名なシーン「バルコニーのパ・ド・ドゥ」では、ジュリエットを高く持ち上げるリフトが多用されているのが特徴です。
最も人気な「マクミラン版」は自然な心理描写が魅力
世界中で最も人気なのは、イギリスの振付家ケネス・マクミランの「マクミラン版」でしょう。1965年に当時の英国ロイヤルバレエ団の大スター、ルドルフ・ヌレエフとマーゴ・フォンテインがロミオとジュリエットを演じました。
マクミラン版の特徴は、自然な心理描写です。その秘密は、マクミラン版ができるまでの過程にあります。マクミランは、当初ロミオとジュリエットを踊る予定であったリン・シーモアとクリストファー・ゲイブルとともに「このシーンではどんな風に動いたらいいだろう?」「どのような表現が自然なのだろう?」とロミオやジュリエットの人物像について構想を練り、従来の様式にとらわれないリアリティのある動き・表現を作り出しました。
高らかに音楽が鳴る中、ベッドにじっと座り動かないジュリエットや、墓場のシーンで(仮死状態で)動かないジュリエットをロミオが引きずり回すなど、身体の動きで魅せるバレエにおいて「静」を取り入れているのも特徴です。
こちらの動画はマクミラン版のラストシーン。仮死状態になり動かないジュリエットをロミオが抱えたり引きずったりしています(動画3:07〜頃)。
バルコニーのパ・ド・ドゥと同じメロディーが登場し、悲しみのコントラストを強調していますね。
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