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プレビュー:11月12日(土)パシフィックフィルハーモニア東京 第153回定期演奏会 東京芸術劇場コンサートホール

11月12日(土) パシフィックフィルハーモニア東京
第153回定期演奏会 東京芸術劇場コンサートホール

秋山和慶による第一次世界大戦にゆかりのある3作品
チェリスト新倉瞳を迎えて

東京ニューシティ管弦楽団がパシフィックフィルハーモニア東京と名称を改めてから、このオーケストラの奮闘・活躍ぶりは注目を集めています。オーケストラの公演のあり方の可能性を次々と示してくれ、そのチャレンジ精神はとても刺激的。
そんな勢いのあるオーケストラに、大御所の秋山和慶、チェリストの新倉瞳が登場します。

今回の定期演奏会では、1914年から1918年という20世紀初頭、ちょうど第一次世界大戦中にあたるこの時期に作曲された3作品を取り上げます。

巨匠、秋山和慶とチェリスト新倉瞳

秋山和慶

秋山は2024年には指揮者としてのキャリアが60年になるという偉大なベテラン。今さらプロフィールを紹介するまでもない大御所です。日本のみならず世界中のオーケストラから招かれ、音楽監督を務めたオーケストラは膨大な数になります。日本初演を果たした現代作品も多く、ヤナーチェクのオペラ上演なども成功させています。演奏が「難しい」とか「大変」とされる作品をスタイリッシュにまとめあげる力量はさすがです。

新倉瞳 ⒸYoshinobu Fukaya

 ソリストとして登場するのはチェロの新倉瞳。スイスを拠点に活動し、カメラータ・チューリッヒという室内管弦楽団の首席チェリストを務めています。ソリストとしてももちろん活動していますが、彼女は演奏家のためのドレスブランドをプロデュースしたり番組のナレーションも担当したりと、演奏だけにとどまらない幅広くユニークな活動を行っています。

演奏される第一次世界大戦にちなんだ3曲とは

演奏される3曲は、ラヴェルの『クープランの墓』、エルガーの『チェロ協奏曲 ホ短調 作品85』、ニールセンの『交響曲第4番 作品29「不滅」』です。いずれもそれぞれ、人気のある作品、あるいは作曲家の代表曲と言える作品ですが、この3曲が一度に聴ける機会は極めて少ないのではないでしょうか。興味深いラインナップです。

ラヴェル『クープランの墓』

 この作品が3曲の中では最も第一次世界大戦の影響を受けていると言えるでしょう。

フランス人のモーリス・ラヴェル(1875-1937)は大変な愛国者で、第一次世界大戦が始まると志願して野戦病院の運転手として従軍しますが、体調を崩し1917年に除隊します。除隊後にこの曲は作られました。
『クープランの墓』の原題 “Le Tombeau de Couperin”のTombeauは、「墓石・墓碑」という意味ですが、音楽用語では「故人を追悼する器楽曲」という意味があります。6つの部分からなり、それぞれ幼なじみや初演ピアニストの夫、画家など戦争で亡くなった人に捧げられています。
18世紀バロック時代の作曲家フランソワ・クープランをラヴェルは敬愛しており、クープランの時代形式に則った構成になっています。

もともとはピアノ曲として作られましたが、1919年に自身がオーケストラ版を完成させました。

エルガー『チェロ協奏曲 ホ短調 作品85』

 1918年の作曲です。エドガー・エルガー(1857-1934)はイギリスを代表する作曲家で、このチェロ協奏曲はチェロのコンチェルトとしてとても人気が高い作品です。

1918年の作曲時、エルガーは体調を崩しサセックスの山荘にいました。戦争の影響もあり精神的にダメージを受けていた時期です。初演は成功とは言えなかったようです。ジャクリーヌ・デュ・プレという稀代のチェリストがこの作品をよく演奏し、知られるようになりました。

ニールセン『交響曲第4番 作品29「不滅」』

 デンマークの作曲家カール・ニールセン(1865-1931)が1914年から1916年にかけて作った曲です。まさに戦争のさなかに作られたことになります。
副題の「不滅」は原題 “Det Uudslukkeligge” で、デンマーク語で「滅ぼし得ざるもの」という意味です。戦争の影響が感じられます。4つの部分からなりますが、楽章として独立はしておらず、単一楽章として続けて演奏されます。

いまだ、チャレンジ精神に富み、しなやかで瑞々しい感性を持ち続けている秋山とこれから一層飛躍する期待が寄せられている新倉、そしてパシフィックフィルハーモニア東京による一期一会の演奏を楽しみましょう。

公演チラシ クリックで拡大


第153回定期演奏会
2022年11月12日(土)
会場:東京芸術劇場コンサートホール

開演:14時
★ チケット料金
3500円〜8500円

詳しくは:パシフィックフィルハーモニア東京


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エディター・ライター 出版社勤務を経てフリーランスのエディター、ライターとして活動中。 クラシック音楽、バレエ、ダンスを得意ジャンルとする。

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