ルドルフ・ヌレエフ没後30年記念 〈オペラ座ガラ〉―ヌレエフに捧ぐ―
2023年7月26日(水)〜30日(日)
ルドルフ・ヌレエフ没後30年記念 〈オペラ座ガラ〉
ヌレエフのDNAを受け継ぐパリ・オペラ座バレエ団の精鋭が集結 エトワールとして初お目見えするオニール八菜も
パリ・オペラ座バレエ団の黄金期を作ったヌレエフ
ルドルフ・ヌレエフは1961年に旧ソ連から亡命し西ヨーロッパにやってくると、世界中のバレエ団で精力的に踊っていきます。やがて1983年にパリ・オペラ座バレエ団の芸術監督に就任します。彼はパリ・オペラ座バレエ団において、他のバレエ団のために振り付けた作品も含め、古典作品を精力的に改訂振付し上演するようになります。
さらにそれまでのクラスレッスンは12時からだったのを10時に変更し、ダンサーのテクニック向上に努めます。また、バレエ・カンパニーはしっかりと階級があるのですが、才能のあるダンサーを大抜擢してチャンスをどんどん与えたうえ、飛び級で最高位であるエトワールに任命したりもしました。
そうしてカンパニー全体が一層レベルアップし、それまでも世界のトップ・カンパニーだったパリ・オペラ座バレエ団をさらに輝かせ、黄金時代を築きました。この頃在籍していたダンサーのことを「ヌレエフの子どもたち」と呼ぶことがあります。
例えば当時エトワールだったダンサーたち──マニュエル・ルグリはミラノ・スカラ座バレエ団、ローラン・イレールはミュンヘン・バレエ、ニコラ・ル・リッシュはスウェーデン王立バレエ、ジョゼ・マルティネスはパリ・オペラ座バレエ団の、それぞれ芸術監督に就任しており、文字通りバレエ界を牽引しています。どれほど「ヌレエフの子供たち」が精鋭揃いであったかがわかります。
ヌレエフが改訂振付した作品は今でもパリ・オペラ座バレエ団のレパートリーですし、彼の教えは脈々と受け継がれ現在に至っています。
ヌレエフが亡くなって今年で30年になります。それを機に、旬のダンサーたちが集結してヌレエフの改訂振付作品をメインに素敵なガラ公演を日本で行います。
ルドルフ・ヌレエフの劇的な生涯
1938年生まれのルドルフ・ヌレエフがレニングラード・バレエ学校(現在のワガノワ・バレエ学校)に編入したのは17歳と、バレエを始めるには遅い年齢でした。しかし、アレクサンドル・プーシキンという名教師と出会い、1958年にはキーロフ・バレエ(現在のマリインスキー・バレエ)にソリストとして入団しました。けれども違反行為や反抗的な態度を取り続け、常にKGBに監視される日々を送っていました。1961年にはヨーロッパツアーに参加することができ、パリ・オペラ座バレエ団のダンサーたちとも知り合うことになります。
ところがキーロフ・バレエがツアーを続けるためにロンドンへと向かう日、ヌレエフだけがソ連に戻るよう言われます。おそらくもう2度と外国に行く機会はないこと、さらに厳しい監視下に置かれることが予想されました。
そこでヌレエフは見送りに来ていた、当時パリ・オペラ座のダンサーであったピエール・ラコットらの助けを借り、パリのブルジェ空港でフランス警察に保護を求めたのでした。この劇的な政治亡命は、映画『ホワイト・クロウ 伝説のダンサー』(2019年、レイフ・ファインズ監督)で大変スリリングに描かれています。
その後、デンマーク・ロイヤル・バレエ団やミラノ・スカラ座バレエ団など西側の名だたるバレエ団にゲストとして出演し、またツアーにも参加したりしました。特に、当時引退を考えていた英ロイヤル・バレエ団のマーゴ・フォンテーンとパートナーを組み、フォンテーンに引退をとどまらせただけでなく、以後15年間もパートナーシップを築き、二人のために新たな作品──『マルグリットとアルマン』(フレデリック・アシュトン振付)、『失楽園』(ローラン・プティ振付)も生まれたのでした。
新たなバレエを切り拓いた古典バレエの改訂振付
ヌレエフの改訂振付作品では、男性ダンサーの魅力、可能性を引き立たせているのが特徴です。たくさんの複雑なステップとジャンプ、それらがテンポよく連続して、目を見張るパフォーマンスが繰り広げられるのです。もちろん踊りこなすには信じられないほど難易度が高いテクニックが必要なのはいうまでもありません。さらに、女性をサポートするノーブルなエレガンスさとダイナミックな男性性も兼ね備えてなければいけないわけで、ヌレエフは今までにない男性ダンサーの新たな時代を導きだしたのでした。
当然、女性も男性並みのステップやジャンプを求められるわけで、パリ・オペラ座バレエ団のダンサーたちはヌレエフの期待に応えるべくメキメキと上達していったのです。
ヌレエフの教えを受け継ぐ現代のダンサーたち
こうしてパリ・オペラ座バレエ団はどこのカンパニーとも異なるヌレエフの教えを受け継いでいくこととなりました。ヌレエフから直接教えを受けた現役ダンサーはいませんが、芸術監督のマルティネスはじめ、教授陣には教え子がおり、彼らから厳しい指導を受けています。
今回は特別にそんな指導者の一人、フロランス・クレールが参加してこのヌレエフゆかりの作品を集めたガラ公演を行うのです。2種類あるプログラム両方を見れば、ヌレエフ版『白鳥の湖』『眠れる森の美女』『ライモンダ』『くるみ割り人形』に触れることができます。大変貴重な機会です。
出演するダンサーにはエトワール6名、マチアス・エイマン、ジェルマン・ルーヴェ、ポール・マルク、マルク・モロー、オニール八菜、パク・セウンが含まれています。
左:オニール八菜、右:マチアス・エイマン
photo: Kiyonori Hasegawa
そして2023年3月に日本人として初めてエトワールに任命されたオニール八菜は、エトワールに就任して初めての日本での公演となります。さらに、パク・セウン、マルク・モロー、ポール・マルクもエトワールとなって初めて日本にお目見えします。晴れがましい姿を見届けたいですね。ずっと会いたいと思い続けていたダンサーたちがやってきます。ヌレエフを偲び、彼の遺した作品、ダンサーのパフォーマンスを存分に楽しみましょう。
タイトル画像 photo: Mary Brown
2023年7月26日(水)〜29日(土)
〈オペラ座ガラ〉━ヌレエフに捧ぐ━
会場:東京文化会館
開演
Aプロ 26日(水) ,27日(木) 19:00
Bプロ 29日(土) 13:30/18:00、30日(日)14:00
チケット料金
18,000円〜5,000円
詳しくは:NBS
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