プレビュー:砂田愛梨ソプラノリサイタル2025年2月19日 紀尾井ホール
スターへの道を爆進する期待のソプラノ
絶妙のタイミングでイタリア研修の成果をお披露目
五島記念文化賞オペラ新人賞研修記念のリサイタル
ソプラノの砂田愛梨は、現在イタリアと日本を拠点として活動しています。令和2年度には、第31回の五島記念文化賞を受賞しイタリアのミラノで海外研修を行いました。それ以前に、新国立劇場オペラ研修所を修了し、文化庁新進芸術家海外研修制度研修員も経験しており、さらに研鑽を積むためミラノでの研修をスタートさせたのです。しかし、世界中がコロナ禍になってしまい、なかなか研修もままならない時期が続きました。ようやく2025年2月に、研修を終えた成果をお披露目するリサイタルを開催できることとなったのです。
もちろん、その間、たくさんのコンクールに出場し、かつタイトルロールを歌っていくつかのイタリアの劇場デビューも果たし、着実にキャリアを積んでいます。出演した舞台は『蝶々夫人』のタイトルロール、『椿姫』のヴィオレッタ、『リゴレット』のジルダが含まれ、なかでもドニゼッティ作曲のオペラ・ブッファ『ドン・パスクワーレ』のノリーナ役は評価が高く、何度も歌っています。
鮮烈だった日本での主役デビュー
2024年11月に、日生劇場でのNISSAY OPERA 2024『連隊の娘』公演にて、マリー役で砂田は日本の劇場に主役デビューを果たしました。得意とするドニゼッティの作品ですが、全編フランス語で歌われ、かつフランス語のセリフもたくさん入る難易度の高い内容でした。けれどもポップでカラフルな舞台美術・衣裳、そして演出の力もあり、元気いっぱい、弾けるような明るさで現代的にマリーを演じました。想像を超えた歌唱力、フランス語を流暢に操るキュートなコメディエンヌぶりに観客は圧倒されたのでした。もともとマリー役は彼女のレパートリーではありますが、あまりにもかわいらしく溌剌とした姿で、強烈な印象を残したのです。
新国立劇場に主役デビュー決定
大成功を収めた日生劇場での公演の興奮も冷めやらぬまま、2025年2月に行われる新国立劇場オペラのダブルビル『フィレンツェの悲劇』『ジャンニ・スキッキ』公演で、『ジャンニ・スキッキ』の主役であるラウレッタ役で出演するニュースが入ってきました。彼女は新国立劇場オペラ研修所生だったので今回の新国立劇場デビュー、しかも主役で、という抜擢は本当に嬉しいことでしょう。錚々たる歌手の中で堂々たるコメディエンヌぶりを発揮するに違いありません。
ベルカント・オペラの歌い手として
得意のドニゼッティ作品もたっぷり
砂田は、イタリアではベルカント・オペラの大家、ルチアーナ・セッラに師事し、正統なベルカント・オペラをしっかりと勉強してきました。
「ベルカント」とはイタリア語で「美しい歌」という意味であり、歌唱法も意味します。無理のない発声で、細かくて早い音の連なりを声を転がすように歌います(アジリタといいます)。激情に駆られ、感情をもろに出してドラマティックに歌うのではなく、フレージングや歌いまわしなどで聴く人の心の奥底に向けて語りかけます。歌唱の美しい様式美を堪能できるのがベルカント・オペラです。
今回のリサイタルはそのベルカント唱法をたっぷり楽しむことができるのです。
日本ではあまり上演されない作品もプログラムにあります。ドニゼッティ作品がメインですが、メルカダンテやベッリーニの作品も含まれています。
時間をかけ丁寧に学んできた成果をたっぷり披露してくれる貴重な機会であると同時に、これから大きく飛躍していくであろう砂田の節目としても貴重な今回のリサイタル、期待せずにはいられません。
何年かのちに、今回のリサイタルが伝説となるかもしれません。
イタリア・オペラ、特にベルカントがお好きな方、また研鑽を積んだ人間の声、歌唱の美しさを生で体験したい方はぜひ会場へお出かけください。
演奏曲目(予定)
メルカダンテ : 星 / 春
ドニゼッティ : 永遠の愛と誠を / 不幸な愛 / ジプシーの女 / 舟人 /愛と死 / 私は家を作りたい / 一つの涙 / ベッリーニの死を嘆く
ベッリーニ :歌劇「夢遊病の女」より“ああ、信じられない”
ドニゼッティ:
歌劇『ランメルモールのルチア』より“あたりは静けさに包まれ”
歌劇『連隊の娘』より”誰もが知っている” / ”望みはない ~ フランスに敬礼!”
歌劇『サン・ドミンゴ島の狂人』より“ああ、離してください” / “忘却を悔やまれるなら”
歌劇『ドン・パスクワーレ』より“あの騎士の眼差しは”
砂田愛梨 ソプラノリサイタル
2025年2月19日(水)19:00開演
会場: 紀尾井ホール
チケット料金:一般4,500円、学生3,500円
詳しくは:キャピタルヴィレッジ
この記事へのコメントはありません。