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プレビュー:2023年5月 東京交響楽団『エレクトラ』 12日(金)ミューザ川崎シンフォニーホール、14日(日)サントリーホール

2023年5月
12日(金)ミューザ川崎シンフォニーホール
14日(日)サントリーホール
東京交響楽団

『エレクトラ』

大成功を収めたノットと東京交響楽団による
R.シュトラウスコンサートオペラの第2弾

第2弾は『エレクトラ』

指揮:ジョナサン・ノット ©︎K.Nakamura|演出監修:サー・トーマス・アレン ©︎Sussie Ahlburg


東京交響楽団の音楽監督であるジョナサン・ノットと東京交響楽団によるコンサート形式のオペラ上演のシリーズは、モーツァルトに続き第2シーズンに入り、昨年からR.シュトラウスの作品上演になりました。昨年第1弾の『サロメ』は大変な反響を呼び、大成功を収めました。

そして今年上演するのは『エレクトラ』です。サー・トーマス・アレンというバリトンの重鎮を今回も演出監修に迎え、存分に鳴り響くオーケストラと歌手とのやりとりは説得力と迫力に満ちており深い感動を巻き起こすことでしょう。

ギリシャ神話に材をとった『エレクトラ』


『サロメ』は聖書のエピソードを元に作られ、猟奇的で倒錯的、世紀末の雰囲気漂う作品です。今回の『エレクトラ』はギリシャ神話が元になっており、救いのない陰惨な復讐劇です。

ミケーネ王アガメムノンは、妻のクリテムネストラとその愛人エギストにより殺害されます。娘のエレクトラは、母の死を願うものの何もできず妹クリソテミスと共に奴隷のような生活をしています。

妹は復讐よりも、結婚し子供を産むことでこの生活から脱却し女性としての幸せを手にいれることを望みます。しかしエレクトラは復讐の炎を燃やし続け、やがて弟のオレストが母クリテムネストラとエギストを殺害し、復讐は成し遂げられます。エレクトラは、最後は自殺してしまいます。

エレクトラとオレスト
「Stories from the Greek Tragedians」1897年
画:ジョン・フラクスマン

この途方もない悲劇をオーケストラは大音量で重厚に彩ります。協和しない複雑な音のぶつかりが聴く者に迫り、終始重い雰囲気です。

そんな辛い作品ですが、どこが見どころかというと、このど迫力のオーケストラの音の塊とエレクトラのソプラノとのせめぎ合いでしょう。また、全く家族として機能していない母クリテムネストラと妹クリソテミス、そしてエレクトラという3人の女性の考え方の違いについて考えざるを得なくなります。

エレクトラの父親への行き過ぎと思えるほどの思慕や執着はなぜなのか(父親への独占欲が強く、母をライバル視し反発することに「エレクトラ・コンプレックス」という名称がつけられるほど)、なぜ母親をそこまで憎むのか、妹クリソテミスの女性の幸せを求める考えは古いのか、いくじなしなのか、そしてエレクトラはなぜ目的を果たせたのに自殺してしまうのか、など現代にも変わらずに通ずる問題提起があります。

今回も充実のキャスト

エレクトラ:クリスティーン・ガーキー ©︎Arielle Doneson

左|クリソテミス:シネイド・キャンベル=ウォレス ©︎Marshall Light Studio 4751
右|クリテムネストラ:ハンナ・シュヴァルツ ©︎Monika Rittershaus


素晴らしいキャストが組まれています。

エレクトラ役はクリスティーン・ガーキー、レパートリーは広く、エレクトラ役を得意としているソプラノです。

クリソテミス役はシネイド・キャンベル=ウォレス、心理学の学位も持つ彼女の解釈はどのようなものなのでしょう。母クリテムネストラはメゾソプラノ、ハンナ・シュヴァルツが歌います。1975年にバイロイト音楽祭にデビュー以来、第一線で活躍を続けるシュヴァルツの歌唱が聴けるのはまさに奇跡です。

コンサート形式で1幕もの(演奏時間は100分超)ですので、集中力が途切れることなくパフォーマンスに入り込めます。

『サロメ』ほどには演奏する機会のない『エレクトラ』、ぜひお聴き逃しのないよう。


東京交響楽団
『エレクトラ』

2023年5月12日(金)
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール

開演|19:00

★ チケット料金
15,000円〜6,000円

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2023年5月14日(日) ※チケット完売
会場:サントリーホール

開演|14:00

★ チケット料金
15,000円〜4,000円

詳しくは:『エレクトラ』特設サイト


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エディター・ライター 出版社勤務を経てフリーランスのエディター、ライターとして活動中。 クラシック音楽、バレエ、ダンスを得意ジャンルとする。

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