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プレビュー:新国立劇場オペラ『フィレンツェの悲劇』『ジャンニ・スキッキ』2025年2月2日(日)、4日(火)、6日(木)、8日(土) 新国立劇場オペラパレス

フィレンツェを舞台にした
悲劇と喜劇のダブルビル

撮影:堀田力丸

同時期に作曲されたフィレンツェで起こる物語

2018/2019シーズンに新制作で上演された“フィレンツェ・ダブルビル”。20世紀に作曲された作品、1幕オペラの組み合わせとしては珍しいカップリングということもあり、高い評価を得ました。そしてキャストを一新し、今回再演となります。

悲劇と喜劇ではありますが、どちらもフィレンツェが舞台で、演出の粟國淳はフィレンツェの闇、裏社会に光を当てる演出を行っています。指揮も初演と同じく沼尻竜典が出演します。

ツェムリンスキー作曲『フィレンツェの悲劇』は
意外な結末の三角関係を描く

撮影:堀田力丸

ツェムリンスキーはオーストリアの作曲家で、世紀転換期に活躍しました。指揮者として大活躍していましたがナチスを逃れウィーンからアメリカへ亡命します。同じく亡命したシェーンベルクは教職に就き、コルンゴルトはハリウッドで映画音楽という活路を見出しましたが、ツェムリンスキーは病気もありほとんど仕事がなく、1942年にアメリカで亡くなります。ナチスに「退廃芸術」の烙印を押されたこともあり、彼の作品が上演され始めたのは戦後だいぶ経ってからのことです。『フィレンツェの悲劇』は、同時期に作曲した『こびと(王女の誕生日)』と共に原作がオスカー・ワイルドの作品でどちらもツェムリンスキーの代表作です。

登場人物は3人だけ。織物商人シモーネとその妻ビアンカ、フィレンツェ太公の息子である貴族のグイード・バルディの緊張をはらんだ三角関係が、後期ロマン派らしい耽美かつ官能的な音楽で綴られます。「え?」という結末が、シンプルな悲劇で終わらないおもしろさです。

欲望丸出しのえぐい喜劇
名アリア「わたしのお父さん」を聞き逃すな

撮影:堀田力丸

『ツェムリンスキーの悲劇』とほぼ同時期にプッチーニが作曲した『ジャンニ・スキッキ』は、13世紀(1299年)のフィレンツェが舞台です。裕福な商人が亡くなり、彼の遺産をめぐって親族は気が気ではありません。遺言書に「遺産は修道院に」と書かれているのを知り、知恵者のジャンニ・スキッキに書きかえを頼みます。何の関係もないジャンニ・スキッキが財産を横取りして物語は終わります。この財産をめぐりワーワー騒ぐ親族の醜いさまを舞台美術が効果的に演出しています。部屋の調度品が全部巨大で(つまり部屋がものすごく大きい)、観客はそこにいる小さな登場人物たちが動き回る様をシニカルに眺めることになります。そんないつの時代も変わらぬお金に目がくらむ人たちの中で、結婚を認めてほしいと父親に懇願する清らかで美しいアリア「わたしのお父さん」がスキッキの娘のラウレッタによって歌われます。この作品を鑑賞したことのない方は、誰もが聞いたことがあるこのアリアが、こんなシーンで歌われるのかと思われることでしょう。

魅力的な出演者
新国立劇場デビュー、しかも主役でという歌手も

撮影:堀田力丸

『ツェムリンスキーの悲劇』は出演者が3人だけの緊張感ある舞台ですが、グイード・バルディ役には新国立劇場の『トゥーランドット』のカラフ役で出演したテノールのデヴィッド・ポメロイが出演します。シモーネ役は大人気のバリトン、トーマス・ヨハネス・マイヤーが、ビアンカ役は新国立劇場初登場となるソプラノのナンシー・ヴァイスバッハが出演します。

『ジャンニ・スキッキ』ではタイトルロールに人気のバリトン、ピエトロ・スパニョーリが出演します。新国立劇場には、2017年『フィガロの結婚』のアルマヴィーヴァ伯爵以来となります。そしてラウレッタ役には代役で砂田愛梨が出演します。11月に粟國淳演出の日生劇場『連隊の娘』公演の主役であるマリー役で大成功を収めた気鋭のソプラノです。新国立劇場オペラ研修所出身で、今回が新国立劇場公演デビューとなります。

1度に2作品が楽しめるこの公演は、初心者の方にもおすすめです。オペラの悲劇と喜劇、ぜひ体験してみてください。

左上より 指揮:沼尻竜典 グイード・バルディ:デヴィッド・ポメロイ シモーネ:トーマス・ヨハネス・マイヤー ビアンカ:ナンシー・ヴァイスバッハ
ジャンニ・スキッキ:ピエトロ・スパニョーリ ラウレッタ:砂田愛梨 ツィータ:与田朝子 リヌッチョ:村上公太


『フィレンツェの悲劇』『ジャンニ・スキッキ』

会場:新国立劇場オペラパレス
開演
2025年2月2日(日) 14:00 ※託児サービスあり
4日(火) 14:00
6日(木) 18:30
8日(土) 14:00  

チケット料金:26,400~1,650円

詳しくは:新国劇場

エディター・ライター 出版社勤務を経てフリーランスのエディター、ライターとして活動中。 クラシック音楽、バレエ、ダンスを得意ジャンルとする。

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