ウルトラシリーズとクラシック音楽② 音楽家 冬木透×ウルトラマンA51話「命を吸う音」×J.S.バッハ『無伴奏ヴァイオリン・パルティータ』 シン・ウルトラマン便乗短期連載
音楽でも一流スタッフ揃いのウルトラの音楽
映画『シン・ウルトラマン』では、『ウルトラQ』や初代『ウルトラマン』を手掛けた宮内國郎(みやうちくにお)と、『エヴァンゲリオンシリーズ』や『シン・ゴジラ』など庵野秀明作品の音楽を長らく手掛ける鷺巣詩郎(さぎすしろう)がタッグで音楽を担当しています。
物語序盤、怪獣もとい禍威獣との戦いでは宮内の(従来のファンには)聞き馴染みある吹奏楽曲が、後半は鷺巣の得意な荘厳なコーラスを伴う曲が映画を盛り上げます。この作品が初代『ウルトラマン』を継承する作品であると同時に、現代の新たなウルトラマンでもあることを音楽からも見せつけてきます。
主題歌の『M八七』も、連日街角で流れ、映画と共に大変な人気になっています。ウルトラマンという言葉を用いず、しかしウルトラマンへの深い理解と愛を感じる歌詞には、卓越したセンスを感じられます。一般にウルトラマンの出身地はM”78“星雲とされていますが、実は本当はブラックホールのあるM”87“星雲だったところ、誤植で78が定着してしまったなんて裏事情も把握したタイトルです。
歌っている米津玄師はハチ名義で活動していた頃から10年以上高い人気を誇るアーティストです。彼のみならず、ウルトラシリーズは音楽にも優れたスタッフやアーティストを起用しています。
平成以降のシリーズでは、各種アニメやスーパー戦隊・仮面ライダーなどの他社特撮での経験が豊富なアーティストのほか、『ダイナ』『ギンガS』『オーブ』各主題歌はTHE ALFEEの高見沢俊彦が、2004年の映画『ULTRAMAN』メインテーマ・音楽監修はB’zの松本孝弘が担当するなど、大物アーティストを起用したこともあります。(『ウルトラマン〇〇』という番組名は、”ウルトラマン”を略記)
ウルトラマンティガの変身者を演じた長野博(V6)や、ウルトラマンゼロの変身者を演じたDAIGO(BREAKERZ)など、メインキャストが元から歌手活動をしており、主題歌を併せて担当するパターンもありました。
さて、そんな人材豊富なウルトラ音楽スタッフの中でも、シリーズの幕開けを担った宮内國郎と、昭和ウルトラシリーズの過半数の作品を手掛けた冬木透(ふゆきとおる)の二人の重要性について、異を唱えるファンはいないことでしょう。
宮内國郎はジャズの経験を下地にしているのですが、冬木透はクラシック音楽の経験をもとにしています。制作した楽曲にもクラシック音楽の影響が大きく、前回紹介した通り『ウルトラセブン』最終話のここ一番にクラシック音楽を効果的に用いたりもしました。
今回の連載第2弾では、そんな冬木透の活躍に焦点を当ててみましょう。
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