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E.T.A.ホフマン『砂男』: バレエ『コッペリア』/オペラ『ホフマン物語』の原作紹介〜オペラの原作#04

『砂男』あらすじ
4.オリンピアの正体

巷では、スパランツァーニ教授は美しい娘、オリンピアを監禁していると噂になっていました。

ある日、同学の友人ジークムントと教授の家の前を通ると、家の中がなにやら騒がしいことに気づきます。

ジークムントが教えてくれるには、教授は明日、自宅で盛大なパーティーを開くということでした。
パーティーでは、コンサートや舞踏会の催しも行い、今までいっさい人目に触れさせていなかったオリンピアを披露するといいます。

翌日、オリンピアに恋心を抱き始めていたナターナエルは、胸をときめかせてパーティーに出かけていきます。

コンサートが終わり、舞踏会が始まると、ナターナエルは勇気を出してオリンピアにダンスの相手を申し込みます。

冷たいオリンピアの手を取り、二人は踊るのですが、オリンピアの動きは硬く調子が出ません。それでも、美しいオリンピアを独り占めできた喜びにナターナエルは愛のセリフをささやきます。それに対してオリンピアは彼の目をしっかりと見つめるものの「ああ――ああ――ああ――」とため息をもらすばかり。

やがてパーティーは終わり、ナターナエルは名残惜しみつつ教授宅を去ります。

教授はナターナエルに「こんなはにかみ屋の娘でも話し相手になるのなら、また訊ねてきてくれたまえ、歓迎するよ」とにこやかに言いました。父親に認められた嬉しさでナターナエルの心は天にのぼるようでした。

ある日、ジークムントがナターナエルに訊ねます。

「なんだってきみは、あんな蝋人形のようなでくの坊に惚れ込んだりしたのかねえ」

その言葉にナターナエルはかっとなりますが、自制して「オリンピアのこの世ならざる美しさにどうして気づかないんだ」と返します。

ナターナエルは、恋人であるクララのことを忘れてオリンピアにのめり込んでいきます。

ナターナエルが教授に結婚の意思をほのめかすと、教授は満面の笑みをたたえて、「娘には完全に自由な選択を認めるつもりだ」と答えました。これに勇気づけられたナターナエルは、翌日、指輪を持ってオリンピアに会いに行きます。

家に入ると異様な音が鳴り響いていました。罵り合う声が聞こえて教授の研究室へ行くと、そこには教授とコッポラがオリンピアの体を掴んで引っ張り合っていました。

茫然としたナターナエルは立ちすくんだ──いやおうもなく、はっきりと見てしまったのだ。オリンピアの死人のように蒼ざめた顔には目がなく、あるのはくろぐろとした穴だけだった。彼女はいのちのない人形だったのだ。

『砂男/クレスペル顧問官』ホフマン
大島かおり訳 光文社古典新訳文庫


オリンピアを担いだコッポラは去っていき、教授はナターナエルに「あいつを追え!」と怒鳴って、眼玉を投げつけます。

投げつけた眼玉が胸に当たったとたん、ナターナルは発狂し、教授に飛びかかります。騒ぎを聞きつけた人たちがナターナエルを引き離し騒ぎは収まるのですが、ナターナエルは癲狂院(精神病院のこと)へ運ばれて行きます。

『砂男』あらすじ
5. ナターナエル発狂と転落死

生家で目を覚ましたナターナエルは、まるで悪夢が消え去ったように晴れやかな気持ちでした。近くには母親、クララ、ロータル、ジークムントが立っていて、目覚めたナターナエルを祝福します。

大切な人たちの看護を得て、ナターナエルはすっかり健康を取り戻していきます。

ナターナエルの看病をする間、伯父が亡くなったことで母はかなりの財産と領地を手に入れていました。ナターナエルは母とクララ、ロータルとともに別荘がある領地に移り住み、静かに暮らそうと決意します。

いよいよ、田舎の領地へ移ろうという日でした。クララは市役所の高い塔にのぼろうと提案します。

二人は塔のてっぺんに立ち、美しい風景を楽しみます。

ナターナエルは、反射的にポケットに入れていた望遠鏡を取り出して覗き込みます。横にいたクララの顔が目に入り、その眼が動いた瞬間、ナターナエルは叫び出しクララを搭から投げ落とそうとつかみかかりました。

間一髪、ロータルがクララを助け出しますが、発狂したナターナエルは「火の環よ、まわれ──火の環よ、まわれ」と叫びながら、欄干を越えて地面に落下していきました。

搭の下の人混みの中には老弁護士コッペリウスの姿がありました。


数年後、遠く離れた土地で、クララが夫と子どもたちと仲睦まじく暮らしている姿が描かれて物語は幕を閉じます。


参考文献


E.T.A.ホフマン(2014年)『砂男/クレスペル顧問官』大島かおり訳 光文社古典新訳文庫


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1982年、福島県生まれ。音楽、文学ライター。 十代から音楽活動を始め、クラシック、ジャズ、ロックを愛聴する。 杉並区在住。東京ヤクルトスワローズが好き。

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