E.T.A.ホフマン『砂男』: バレエ『コッペリア』/オペラ『ホフマン物語』の原作紹介〜オペラの原作#04
砂男(サンドマン/ザントマン)伝承
「砂男」というのは、子どもを眠らせるために砂状の魔法の粉をふりかけるという、北ヨーロッパ各地で伝承される一種の妖精です。
日本ではあまり知られていませんが、ドイツではこの伝承をもとにした人形ストップモーションアニメ『Unser Sandmännchen(僕らのザントメンヒェン)』が1959年から現在まで放送され続け、世代を超えて愛されるほど有名です(現在世界一長いテレビシリーズ。日本におけるアンパンマンのような存在でしょうか)。
『Unser Sandmännchen』YouTubeチャンネル
Unser Sandmännchen (rbb media)
クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0 ドイツ
ハンス・クリスチャン・アンデルセンの『オーレ・ルゲイエ(眠りの精)』では、目にミルクをかけて子どもを眠らせ、ベッドに腰かけてお話をしてやり、良い子は素敵な夢を見る……そのようなイメージは、ヨハネス・ブラームスがシューマンの子どもたちに贈った民謡歌曲『眠りの精』にも歌われています。
アンデルセン童話『Ole Lukøje』(『オーレ・ルゲイエ』和訳では『眠りの精』や『眠りの精オーレ』)の挿絵
画|ヴィルヘルム・ペダーセン(ペンデルセン)
出典:Wikimedia Commons
8.近年のカルチャーにおける砂男(サンドマン/ザントマン)の引用
映画『ガーディアンズ 伝説の勇者たち』(2012年)
アメリカの3DCGアニメ映画。こちらのアニメにはサンダーソン・マンスヌージー/Sanderson Mansnoozieというキャラクターが登場します。”夢”を司るこちらのキャラクターは、劇中では英語読みの”サンドマン”と呼ばれています。
DCコミックス『サンドマン』(1989–1996年全75号)
ニール・ゲイマンの原作コミック『サンドマン』は、主人公の名前が「ドリーム」。ダークな世界観が特徴でカルトな人気を誇り、映像化もされています。
DCコミックスでは『サンドマン』が1940年代から登場しており、二代目となるジャック・カービー作の『サンドマン』(1974〜1976年)は主人公が眠りの妖精でした。そこから設定の変更を重ね、「悪夢」というキーワードを軸に現代の『サンドマン』へと発展しています。
神話やシェイクスピア作品をモチーフとした設定も多く登場し、オペラ、バレエとも繋がる要素が見つけられます。
ジョジョの奇妙な冒険『スティール・ボール・ラン』(2004-2011年全24巻)
大人気漫画『ジョジョの奇妙な冒険』の七部『スティール・ボール・ラン』には、サンドマンというキャラクターが登場します。
このキャラクターモチーフは、アメリカのヘヴィメタルバンド、メタリカが砂男伝承に着想を得て歌詞をつけた楽曲「Enter Sandman」と言われています。
人形にまつわる物語
古今東西、人形に命が吹きこまれる話はありますが(ピノキオ、トイストーリー、バレエのペトルーシュカ等)、テーマの親和性が近い作品は同時代のイギリスで書かれた『フランケンシュタイン』ではないでしょうか。
『フランケンシュタイン』(1831年改訂版)の内表紙。
Theodor von Holst 画
出典:Wikimedia Commons
両作品とも、加速度的に近代化が進み、反人間的なものへの不安が現れた作品なように思えます。
オペラ『ホフマン物語』3幕、4幕の原作紹介はこちら↓
オペラの原作
最後のロマンティック・バレエ『コッペリア』について解説
E・T・A・ホフマン『くるみ割り人形とねずみの王さま』 小説を彩るクラシック#9
この記事へのコメントはありません。