MoN Takanawa The Museum of Narratives

開館記念プログラムバレエ「アレコ」上演

プレス・ブリーフィング(2026年5月11日)レポート

2026年3月28日にTAKANAWA GATE CITYに開館したMoN Takanawa The Museum of Narratives。「伝統からマンガ、音楽、宇宙まで。文化の実験的ミュージアム」「100年先へ文化をつなぐ場として一人ひとりの体験から多様な物語(Narratives)が生まれることを目指す」というユニークなミュージアムだ。

開館記念プログラムとしてバレエ「アレコ」を上演する。上演に先立ち、プレス・ブリーフィングが開催された。

バレエ「アレコ」について

バレエ・リュスのダンサーであり後に振付家として活躍し、バレエ・リュス・ド・モンテカルロの芸術監督を務めていたレオニード・マシーンが、1942年、バレエ・シアター(後のアメリカン・バレエ・シアター)のために振り付けたのが「アレコ」である。チャイコフスキー作曲の「ピアノ三重奏曲イ短調作品50」を上演のためにオーケストラ編曲した音楽を使用。アレクサンドル・プーシキンの詩「ジプシー」を原作とし、背景画をマルク・シャガールが手掛けるという豪華な顔ぶれで、メキシコで初演された。

日本で蘇った「アレコ」


シャガールは「アレコ」のために縦9×横15メートルにも及ぶ大きな背景画を4点制作した。この背景画は、現在、青森市の青森県立美術館に設えられた「アレコホール」に美術作品として常設展示されている(正確には青森県立美術館が所蔵しているのは第1、2、4幕の3点で、第3幕はフィラデルフィア美術館所蔵。現在長期貸与されており4点すべてが揃っている)。

舞台作品としての「アレコ」は長らく上演機会を失い、“幻のバレエ”となっていた。

2024年に、青森県立美術館版として「アレコ」が新演出で上演された。第4幕の背景画の前、劇場ではなく美術館の空間で上演されるという画期的な試みだった。半世紀以上の時を経て、シャガールの絵画は本来の“舞台美術”として命を吹き込まれたのだった。

振付資料が断片的にしか残されていない中、演出・振付を担った宝満直也はシャガールの背景画を最大限に生かしながら現代的な感覚を取り入れた新たな「アレコ」を創り上げた。

Mon Takanawa での上演

今回の公演会場は、MoN Takanawa 内に設けられた劇場空間Box 1000。

上演されるのは、2024年青森公演をベースにした宝満直也版で、2組のキャストが予定されている。

青森公演が「美術館空間での上演」だったのに対し、今回は「劇場作品としての『アレコ』」への挑戦でもある。公演チラシには「伝説の舞台、83年ぶりに復活」というコピーが掲げられている。

注目すべきは、シャガールの背景画を高精細LED映像によって実寸再構成している点だ。全4幕の背景画が舞台上に再現され、1942年初演時の劇場空間を現代テクノロジーによって“蘇演”する試みになっている。

単なる再演ではなく、失われた20世紀の舞台芸術を再生する、実験的かつ意欲的なプログラムと言えるだろう。

キャストごとに変化する振付と演出

公演は、2キャストで各5公演ずつ、全10公演を予定している。

オリジナルキャストであるアレコ役の大川航矢(牧阿佐美バレヱ団プリンシパル)、ゼンフィラ役の勅使河原綾乃(NBAバレエ団プリンシパル)に加え、もう一つのキャスト組としてアレクサンドル・トルーシュ(ハンブルク・バレエ団客員プリンシパル)と山田佳歩(NBAバレエ団プリンシパル)が出演する。

またロマの若者役には、大川&勅使河原組には新井悠汰(NBAバレエ団プリンシパル)、トルーシュ&山田組には北爪弘史(NBAバレエ団ファースト・ソリスト)が参加する。

宝満は「全く同じ振付をなぞるのではなく、それぞれのキャストに合わせて新しい振付や演出を組み立てたい」と語る。

プレス・ブリーフィングでは勅使河原と新井によるリハーサルが披露された。宝満は、視線の向け方や指先のニュアンスに至るまで細かな指示を出し、人物の感情の機微を丁寧に積み上げていく。作品が作り込まれている様子が印象的だった。

「アレコ」あらすじ

文明社会に嫌気がさしたロシア貴族の青年、アレコは自由を求めてロマ(ジプシー)の一団に加わる。そこで首長の娘ゼンフィラと恋に落ちるが、ほどなく、自由奔放なゼンフィラは別のジプシーの若者を好きになり心変わりしてしまう。それを知ったアレコは、怒りのあまりゼンフィラとその愛人を刺し殺してしまう。
                                      画像:西川幸治


公演情報
会期:2026年5月29日(金)~31日(日)、6月4日(木)〜7日(日)
会場:MoN Takanawa: The Museum of Narratives Box1000
料金:9500〜5500円 / プレミアム席(13:00/17:00の回のみ) 22000円 / U29 S席(19:30の回) 7500円
詳しくは:Mon Takanawa

左上:大川航矢 左下:勅使河原綾乃 右上:アレクサンドル・トルーシュ 右下:山田佳歩

演出・振付:宝満直也

エディター・ライター 出版社勤務を経てフリーランスのエディター、ライターとして活動中。 クラシック音楽、バレエ、ダンスを得意ジャンルとする。

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