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プレビュー:2022年7月2(土)・3日(日) オペラ「美しきまほろば~ヤマトタケル」新国立劇場中劇場

日本文化創成協会「美しきまほろば〜ヤマトタケル」


英雄伝説から人間の心情、平和で美しい世界を願う思いを汲み取る

京都上賀茂神社細殿公演DVDより

昨年、世界文化遺産である上賀茂神社細殿で行われたオペラ「美しきまほろば〜ヤマトタケル」が劇場上演版となり、新国立劇場中劇場で2公演行われます。タイトルにあるようにテーマはヤマトタケル、古事記と日本書紀に登場する古代の伝説的英雄です。

ストーリーは古事記からヤマトタケルの英雄伝説を辿っていきます。このオペラでは登場人物を絞り、ストーリーの理解がしやすいようになっています。
主人公のヤマトタケル、ヤマトタケルの父である景行の帝、ヤマトタケルの叔母(景行天皇の妹)である斎宮=倭姫売命(ヤマトヒメノミコト)、ヤマトタケルの妃のひとりである弟橘比売命(オトタチバナヒメ)、そして二人の間に生まれたひとり息子、若建王(ワカタケノミコ)、が主な登場人物です。
鑑賞の前にヤマトタケルの物語を予習されることをおすすめします。「熊曽(熊襲)」、「草薙の剣」、相模の国での「迎え火」、「走りの海」、「白鳥伝説」といったキーワードをおさえておきましょう。

このオペラでは、古事記に記録されているストーリーが、感情があり血の通った人間の物語であることを教えてくれます。
景行天皇とヤマトタケルの場合は、父と息子の気持ちのすれ違いや誤解を、叔母である斎宮=倭姫売命(ヤマトヒメノミコト)はヤマトタケルにとってメンターであることを、妃の弟橘比売命(オトタチバナヒメ)はヤマトタケルに対して、オペラ「トゥーランドット」の登場人物リュウのような愛による自己犠牲を、という風に現代にも通ずる生きた人間ドラマを示してくれるのです。

さらに世を平定し国がひとつになり平和になること望む──「まほろば」の実現を夢見る古代の人々の心情にも思いを馳せる結末となります。

ヤマトタケルには西村悟(2日)、山本耕平(3日)、弟橘比売命(オトタチバナヒメ)には腰越満美(2日)、大貫裕子(3日)、景行には泉良平(2日)、大塚雄太(3日)、斎宮=倭姫売命(ヤマトヒメノミコト)には両日とも林美智子が演じます。
他に日輪という太陽を称する存在として岡幸次郎(両日)、歌のないセリフのみの進行役である道化を山崎バニラ(両日)が演じます。役者は揃ったという感じの豪華ラインナップです。
歌手だけでなく、菊若亮太郎をはじめとする日舞と鷲田実土里らのダンサーも参加、物語をともにつくりあげていきます。

主催の一般社団法人日本文化創成協会は、「日本の優れた文化を広く発信し、末永く創生していく」ことを理念としています。このオペラは、日本人が忘れてしまっている日本の美しさ、文化、歴史に改めて気づく良い機会となることでしょう。

文:結城美穂子


2022年7月2日(土)、3日(日)
会場:新国立劇場中劇場

開演:7月2日(土)17時、7月3日(日)14時
チケット料金:10000円

詳しくは:日本文化創成協会


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エディター・ライター 出版社勤務を経てフリーランスのエディター、ライターとして活動中。 クラシック音楽、バレエ、ダンスを得意ジャンルとする。

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