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バレエ界の巨匠 ジョン・ノイマイヤーの軌跡|ノイマイヤー作品の最新上演情報も

ハンブルク・バレエ団の芸術監督兼首席振付家を務めるジョン・ノイマイヤー。2023年は、就任50周年です。

記念の年となる2023年3月、ノイマイヤーがハンブルク・バレエ団の芸術監督として最後の来日公演を行い、『ジョン・ノイマイヤーの世界 Edition 2023』『シルヴィア』の2作品を上演しました。

また、4月28日(金)〜30日(日)の間、ノイマイヤーと関係が深い東京バレエ団がノイマイヤー作品『スプリング・アンド・フォール』を上演しています。

本記事では、ノイマイヤーの経歴や作品の特徴を解説し、彼の軌跡をたどります。ノイマイヤーがバレエ界に与えた功績や素晴らしい作品群をともに振り返りましょう。

タイトル画像:Alexey Yakovlev, CC BY-SA 4.0
出典:Wikimedia Commons

1. ジョン・ノイマイヤーの経歴

John Neumeier The Seagull

『かもめ』終演後のノイマイヤー(中央)。A・コジョカル、A・オフチャレンコと共に(2018年)
Alexey Yakovlev, CC BY-SA 4.0
出典:Wikimedia Commons


ジョン・ノイマイヤーは、アメリカで生まれ育ち、イギリスのロイヤル・バレエ学校で学び、ドイツでプロになりました。

ノイマイヤーの幼少期から、バレエ界を牽引する振付家になるまでの道筋をたどります。

ジョン・ノイマイヤーはアメリカ合衆国出身

ジョン・ノイマイヤーの出身は、アメリカ合衆国 ウィスコンシン州ミルウォーキーです。

物心がついた頃から、ノイマイヤーはいつも「踊りたい」という気持ちを抱いていたといいます。ミュージカル映画を観に行っても、登場人物の「踊り」には夢中になったものの、セリフが始まると途端に嫌気が差したのだとか。

自宅の居間は常にステージ。あらゆる音楽に合わせて即興のダンスを踊っていました。

バレエ・リュス・ド・モンテカルロ『コッペリア』
Fred Fehl – Coppelia,1949, InC 1.0
出典:Harry Ransom Center

子どもの頃を振り返ると、今も忘れられない思い出が一つあります。それは、ある日曜日の午後、母親が、私をバレエの公演に初めて連れて行ってくれたことです。それは、毎年、ツアーでミルウォーキーを訪れるバレエ・リュス・ド・モンテカルロのマチネ(昼興行)でした。(中略)その息をのむような踊りを天井桟敷から見つめていた時の、信じられないほど素晴らしく忘れがたいその光景を目にして覚えた興奮と高揚感──幸福感を、私は今でも昨日のことのように覚えています。

「ダンスー感情に生きたかたちを与える」
ジョン・ノイマイヤー
稲盛財団2015一 第31回京都賞と助成金(2016年),p172


バレエとの出会いは、バレエ・リュス・ド・モンテカルロのツアー公演です。バレエの世界に関わりたいという気持ちが強くなる一方、地元ミルウォーキーには、当時、バレエ団も大きなバレエスクールもなく、「どうすればあの素晴らしい世界の一員になれるのかわからない」と、はるか遠い世界に感じたそう。

そんなノイマイヤーが初めてダンスを習ったのは「タップダンス」です。その後、近隣のバレエスクールに通うようになります。

ダンスへの憧れやバレエを習うことを許された喜びは、来日公演でも上演された『ジョン・ノイマイヤーの世界』中の「キャンディード序曲」「くるみ割り人形」でもよく表されています。

バレエへの憧れは持ちつつも、ノイマイヤーはマーケット大学に入学し、英文学と演劇学を専攻することにしました。
マーケット大学で出会ったジョン・J・ウォルシュがノイマイヤーのダンスの才能を見抜き、「君の天職はダンサーだ」と、シカゴのバレエ学校で学ぶ導きをしてくれました。

マーケット大学やシカゴのバレエ学校で学んだこの時期に、ノイマイヤーは初めて振付を行います。はじめは、演劇やミュージカルの劇中の踊りでした。その後、『天の猟犬』というバレエ作品を振り付けています。

大学在学中、ノイマイヤーは、モダン・ダンサーのシビル・シアラーにも師事しています。彼女の叙情的でときに攻撃的な振付は、ノイマイヤーに大きな衝撃と影響を与えたのでした。

ロイヤル・バレエ学校に入学〜シュツットガルトバレエ団入団

Royal Ballet School sign showing school badge

ホワイト・ロッジに掲げられている看板
Hsq7278, CC BY-SA 4.0
出典:Wikimedia Commons


マーケット大学卒業後、ノイマイヤーはクラシック・バレエのレッスンに専念することを決意し、1962年、イギリスのロイヤル・バレエ学校に入学します。
学校の休暇中には、デンマーク・ロイヤルバレエ学校の指導者 ヴェラ・ヴォルコワの個人指導も受けました。

シュツットガルト・バレエ団のバレリーナ マリシア・ハイデと彼女のパートナー レイ・バッラがノイマイヤーの才能を見出し、1963年、ジョン・クランコが再設立したシュツットガルト・バレエ団に入団することに。

シュツットガルト・バレエ団では、ソリストとして活躍するとともに振付活動を行いました。この時期に、俳句をモチーフにした作品『俳句』を振り付けています。

フランクフルト・バレエ団の芸術監督に

『俳句』の成功により、ノイマイヤーにはアメリカやイギリスのバレエ団から次々と振付依頼が来るようになります。

1969年には、フランクフルト・バレエ団の芸術監督に就任。

フランクフルト・バレエ団では、『ロミオとジュリエット』や『くるみ割り人形』『ダフニスとクロエ』『祭典』など古典作品に新たな振付・解釈を行い、センセーションを巻き起こしました。

ハンブルク・バレエ団の芸術監督および首席振付家に

The Third Symphony of Gustav Mahler, Hamburg Ballet, 2012.3

ノイマイヤー振付『マーラー交響曲第三番』のカーテンコール(2012年)
Gerarus, CC BY-SA 4.0
出典:Wikimedia Commons


フランクフルト・バレエ団で成功を収めたノイマイヤーは、1973年、ハンブルク・バレエ団の芸術監督兼首席振付家に就任。2023年で就任50周年となります。

ノイマイヤーのもとでハンブルク・バレエ団は世界的なバレエ団へと成長していきました。

ノイマイヤーの就任以降、ハンブルク・バレエ団は、120の都市で海外公演を行っています。日本でも、1986年〜2023年にかけて、9回来日公演を行いました。

ノイマイヤーは、2024年夏に退任予定です。次期芸術監督には、現バレエ・アム・ライムの芸術監督であるデミス・ヴォルピが就任することが決まっています。

ハンブルク・バレエ団におけるノイマイヤーの活躍については、後述します。

2. ジョン・ノイマイヤーの特徴と有名作品

ノイマイヤー作品は「古典バレエの読み直し」「文学のバレエ化」「名作音楽を用いた抽象作品」の3つに大別されます。

それぞれの特徴や有名作品を見ていきましょう。

ノイマイヤー作品
ー古典バレエの読み直しー

ジョン・ノイマイヤー『くるみ割り人形』
バイエルン州立バレエ(2018年)


ジョン・ノイマイヤーは、古典バレエを現代的に解釈しなおした作品を多数振り付けています。

例えば、クリスマスの話として有名なバレエ作品『くるみ割り人形』。ノイマイヤー版では、主人公マリーはバレエの世界に憧れる少女です。

ジョン・ノイマイヤー『幻想―「白鳥の湖」のように』
ハンブルク・バレエ団


ほかにも、古典バレエの傑作『白鳥の湖』のノイマイヤー版『幻想―「白鳥の湖」のように』は、実在したドイツの王「ルートヴィヒ2世」をモデルにした新解釈となっています。

また、2023年の来日公演で上演された『シルヴィア』も古典バレエの読み直しに分類される作品でしょう。

ラストで結ばれることの多いシルヴィアとアミンタが、ノイマイヤー版では長い年月によって(ノイマイヤー自身の解釈では「寿命」によって)引き裂かれる結末となっています

【有名作品】

 

  • 『くるみ割り人形』(1971年)
  • 『幻想―「白鳥の湖」のように』(1976年)
  • 『シルヴィア』(1987年、1997年改訂版がパリ・オペラ座で初演)

ノイマイヤー作品
ー文学のバレエ化ー

ジョン・ノイマイヤー『真夏の夜の夢』
ハンブルク・バレエ団


ノイマイヤーは、文学作品のバレエ化も行っています。

例えば、ノイマイヤーの代表作『椿姫』(1978年)は、この分類に該当します。『椿姫』は、アレクサンドル・デュマ・フィスの小説『椿姫』をもとにした作品です。

そのほかには、シェイクスピアの喜劇『真夏の夜の夢』や『オテロ』、トーマス・マンの小説『ヴェニスに死す』などがあります。

【有名作品】

 

  • 『真夏の夜の夢』(1976年)
  • 『欲望という名の電車』(1983年)
  • 『オテロ』(1985年)
  • 『かもめ』(2002年)
  • 『ヴェニスに死す』(2003年)
  • 『リリオム』(2011年)
  • 『タチヤーナ』(2014年)
  • 『アンナ・カレーニナ』(2017年)

ノイマイヤー作品
ー名作音楽を用いた抽象作品ー

ジョン・ノイマイヤー『マタイ受難曲』
ハンブルク・バレエ団


筋書きのない抽象的な「シンフォニック・バレエ」(交響的バレエ)もノイマイヤー作品に多く見られます。

最も有名なのは、グスタフ・マーラー作曲の『マーラー交響曲』に振り付けた『マーラー交響曲第3番』などです。

2023年の来日公演でも『マーラー交響曲第3番』が上演されました。

そのほか、バッハ作曲の『マタイ受難曲』に振り付けた同名作品もノイマイヤーの代表作のひとつです。『マタイ受難曲』は、ハンブルク・バレエ団の初来日公演(1986年)でも上演されています。

【有名作品】

 

  • 『マーラー交響曲第3番』(1975年)
  • 『マタイ受難曲』(1981年)

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バレエ歴21年・とあるバレエ教室の現役生徒のまいです! 大好きなバレエの魅力や作品についてご紹介していきます♩

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