プレビュー：6月2日(金)公開～映画『トゥーランドット』英国ロイヤル・オペラ・ハウスシネマシーズン2022/23　TOHOシネマズ日本橋、ほか

2023.05.27公演プレビュー

2023年6月2日(金)〜8日(木)
英国ロイヤル・オペラ・ハウス
シネマシーズン2022/23

『トゥーランドット』

「誰も寝てはならぬ」はこの作品のアリア
豪華絢爛、色鮮やかな舞台が人気のプロダクション

美しい舞台美術

英国ロイヤル・オペラ・ハウスシネマシーズンに『トゥーランドット』が登場します。英ロイヤルのこのプロダクションは1984年初演で、以来人気の演目として繰り返し上演されています。

伝説の古代中国、北京の宮廷が舞台の『トゥーランドット』はとても豪華、どのプロダクションも舞台セットのスケールの壮大さ、華やかさが魅力です。ときにはミニマルなスタイリッシュさを打ち出したり、近未来のディストピア風だったりしますがとにかくお金がかかっていると一目でわかるのが特徴。

そんなさまざまなプロダクションの中でも群を抜いて美しいのが、この英国ロイヤルのプロダクションです。刺激的な原色が散りばめられ、宮廷の人間はマスクを付けています。中国であるのだけれど、中国を想定した架空の国であるようなファンタジックな北京の宮廷が舞台上に作り上げられ、物語にあっという間に引き込まれます。

ピン、パン、ポンなどそれぞれのキャラクターが際立つファンタジー

この物語は、絶世の美女であるトゥーランドット姫が求婚者に対して３つの謎をかけ、答えられなかった者は斬首の刑に処せられる、という恐ろしい「姫の謎解き物語」です。

氷のように冷たい心を持つクールビューティに一目惚れしてしまい、果敢に求婚するのは国を追われ放浪している王子カラフ。トゥーランドット姫の冷たさとカラフ王子の熱血漢との対比、さらに姫と、カラフの父王ティムールに仕えるリューの自己犠牲も厭わぬ楚々としたひたむきさという真逆の性格の対比も見どころです。

そして3人の大臣、ピン、パン、ポンは次々と王子たちの首をはねるトゥーランドット姫を憂いています。それぞれ宰相、料理担当大臣、配膳担当大臣と役職にあるのですが、3人の衣裳はカラフルでコミカル。3人でいつも行動していて、全幕通して登場し狂言回し的な役割を担っており、冷たい宮廷の中で唯一人間味のあるほっとする存在です。

残忍なトゥーランドット姫も最後はカラフ王子の愛を受け入れハッピーエンドとなります。このツンデレぶり（デレの部分はほとんど出てきませんが）も見どころ。

パッパーノはなんと『トゥーランドット』初挑戦

来年、退任が決まっている音楽監督のアントニオ・パッパーノ、彼が劇場で『トゥーランドット』を指揮するのは意外なことに今回が初めてとのこと。ワクワク感満載の演奏で魅了されます。そして彼の初挑戦にふさわしいキャストが組まれています。

ソプラノの難役として知られているトゥーランドット姫にはアンナ・ピロッツィ、高音の連続も難なくこなし堂々とした佇まいに圧倒されます。カラフ王子はヨンフン・リーが演じています。メトロポリタン歌劇場でも昨年カラフを演じており、カラフは彼の当たり役と言えるでしょう。

情熱的に「誰も寝てはならぬ」を歌い上げます。そしてリュー役はマサバネ・セシリア・ラングワナシャがキャスティングされています。彼女は英国ロイヤルの若手歌手研修コースの出身だそう。若々しく清らかな歌唱で胸を打たれます。

名だたるオペラハウスが全力で作り上げる大人が楽しむ贅沢なおとぎ話を、映画館で堪能しましょう。