戯曲『サロメ』オスカー・ワイルド:平野啓一郎新訳版〜オペラ『サロメ』の原作紹介〜オペラの原作#01

リヒャルト・シュトラウス作曲
オペラ『サロメ』の原作
オスカー・ワイルド『サロメ』
永遠のファム ファタル”サロメ”
オスカー・ワイルドの戯曲をシュトラウスがオペラ化
後期ロマン派を代表する作曲家リヒャルト・シュトラウスの出世作にして、衝撃的なオペラ作品『サロメ』。
1902年と1903年にマックス・ラインハルトが演出した舞台『サロメ』に触発されて、シュトラウスはオペラ『サロメ』を作曲しました。
サロメが、7枚のヴェールを纏って踊るシーン(7つのヴェールの踊り)や、緊張感と官能的高揚をもつ楽曲が印象的な作品です。
今回は、オペラを深く楽しむために、『サロメ』の原作について紹介したいと思います。

サロメにヨハネの首を要求されるヘロデ王。The Life of Christ in Picture and Story(Louise Seymour Houghton,1890)より
『サロメ』オスカー・ワイルド
『サロメ』の物語は新約聖書の「マタイ伝」と「マルコ伝」に基づいて書かれています。これらの福音書の中には「サロメ」という名前は記されておらず、フラウィウス・ヨセフスの『ユダヤ古代詩』『ユダヤ戦記』によって、後世に広がっていきました。
戯曲『サロメ』はアイルランド出身の詩人、作家であるオスカー・ワイルドが書いた作品です。
ワイルドは19世紀末文学の旗手と呼ばれ、世紀末の退廃的で耽美的な空気感を作品に閉じ込めました。
今回は、以前に小説を彩るクラシックでも取り上げた『マチネの終わりに』の作者 平野啓一郎初の翻訳作品『サロメ(光文社古典新訳文庫)』から作品を紹介させていただきます。
この、平野訳『サロメ』は宮本亞門が演出を手がけ、2012年に新国立劇場で上演され話題となりました。
戯曲『サロメ』の登場人物と舞台
『サロメ』の登場人物
- ヘロデ王(ヘロデ・アンティパス)
自分の兄を倒し、ユダヤの四分封領王(ユダヤを統治する4人の最高権力者の一人)の座と、フィリポの妻ヘロディアを略奪する。ガリラヤとペレアの地を治める。 - ヨカナーン
イエス・キリストに洗礼を行った預言者。いわゆるバプテスマのヨハネ。この作品では30歳の美しい青年として描かれている。ヨカナーンはヘブライ名。 - ヘロディア
ヘロデ・アンティパスの妻。 - サロメ
ヘロディアとフィリポの娘。ユダヤの王女。 - 若いシリア人
護衛軍の隊長。 - カッパドキア人
※カッパドキアはトルコ東部地方の古代地名。 - ヌビア人
※ヌビアはエジプト南部からスーダン北部にかけてのナイル川流域の地名。 - ヘロディアの近習(きんじゅ)
※近習とは高貴な身分をもった主の側近。 - ナーマン
首切り役人。 - 第一の兵
- 第二の兵
『サロメ』の舞台
1世紀ごろ、古代イスラエルがローマ帝国支配下のユダヤ属州だった時期。
物語の舞台はヘロデ・アンティパスが所有する要塞の一つで、死海東岸にあるマカエルスの要塞。近くにはヨルダン川が流れている。

同時代、同じヨルダン川流域のガリラヤ湖畔の町。The Life of Christ in Picture and Story(Louise Seymour Houghton,1890)より
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