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戯曲『サロメ』オスカー・ワイルド:平野啓一郎新訳版〜オペラ『サロメ』の原作紹介〜オペラの原作#01

まとめ ── 視線のドラマ

『サロメ』の登場人物たちは、月に自分を映し、彼らの視線は一方通行となっています。

若いシリア人は月に「恋」の感情を映し、ヘロディアの近習は月に不吉な予感を見ました。

サロメは月を穢れのない「処女のよう」だと思い、ヘロデ・アンティパスは月に「色情狂」である自分を見ています。

若いシリア人とヘロデ王の視線はサロメを向き、サロメはヨカナーンに視線を向けます。ヨカナーンは誰を見ることもなく、神だけを見ています(どうしてわたしを見てくれなかったの?)。

ヨカナーンの閉じられた瞳はもう何も映し出しません。

サロメは、フランス象徴主義の画家ギュスターヴ・モローや、ビアズリーが描いた狂気と官能のイメージから、毒婦、妖女といった印象が強いと思いますが、原作でのサロメは、どこか無垢な印象があります。

(上)ギュスターヴ・モロー『出現』 (下)オーブリー・ビアズリー『サロメ』挿絵

恋愛を経験したことがない、純真無垢ゆえの狂気。恋に純潔なサロメと、神に純潔を誓ったヨカナーンは決して結ばれることはありません。

『サロメ』は世界中で何度も上演され続けている作品です(日本では、10年ほど前に宮本亜門が演出を手掛けた⦅翻訳は平野啓一郎⦆戯曲の公演が話題となりました)。これからもきっと上演され続けていくでしょう。

現代では「サロメ」という名前は単に「悪女」というだけではなく、そのイメージから派生して、ロックバンドU2の楽曲『Salomé』などの現代の音楽や、ゲーム(Fate/GrandOrderの同名キャラなど)、VTuber(壱百満点原サロメ)など、多くのサブカルチャーにも影響を与えています。

邦楽でもBUCK-TICK『サロメ』、聖飢魔Ⅱ『サロメは還って殺意をしるし』、ALI PROJECT『サロメティック・ルナティック』などインスパイアされた楽曲は多い。


オペラ『サロメ』の公演予定

リヒャルト・シュトラウス『サロメ』

2023年5月27日(土)〜6月4日(日)
会場:新国立劇場
オペラパレス

開演
5/27(土) 14:00
5/30(火) 14:00
6/1(木) 19:00
6/4(日) 14:00

★ チケット料金
3,300円〜22,000円

詳しくは:新国立劇場


次ページ:著者オスカー・ワイルド、挿絵オーブリー・ビアズリーについて

1982年、福島県生まれ。音楽、文学ライター。 十代から音楽活動を始め、クラシック、ジャズ、ロックを愛聴する。 杉並区在住。東京ヤクルトスワローズが好き。

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